健やかな組織づくりを目指して。クラシコム人事が注力するマネジメント支援、3年間の取り組み
こんにちは。クラシコム人事の金です。先日、2023年版の社史が公開され、代表の青木の振り返りの中で、人事企画室の取り組みについて次のような言及がありました。
振り返ってみると、人事が2人体制になり、人事企画室が発足したのが2020年12月。ちょうど丸3年が経ちます。今日はこの3年間、マネジメント支援においてどのような取り組みを行ってきたのか人事の目線から振り返ってみたいと思います。
クラシコムの組織開発の考え方
クラシコムの組織開発のベースにある方向性を言葉にしてみるならば、この2つでしょうか。
社員のモチベーションを無理に上げるのではなく、阻害要因を取り除く
マネジメントを支援する
クラシコムでは、カルチャーフィットを重視した採用を行っていて、8割近い社員が「北欧、暮らしの道具店」を通じて応募する元お客さまということもあり、サービスへの共感を含めた組織へのエンゲージメントがとても高いのが特徴です。
▼ 2016年から4年間続けてきたエンゲージメントサーベイは、平均偏差値が77.35でした。
だからこそ、代表の青木からも「社員のモチベーションを無理に上げる必要はない。元来持っているはずのモチベーションの発揮を阻害する要因がどこにあるのかをよく観察してほしい」と言われていました。
まさに人事のすべての仕事は、この「観察」が肝になることを実感し続けている3年間です。
2つ目の「マネジメントを支援する」が、今日のnoteの主なテーマです。制度や風土が組織に根付いていく時、社員が日々の実務で接するマネージャーが担う役割はとても大きいです。一方で、1チームあたりの社員数が増え、事業も拡大し、上場によってステークホルダーが増えていくなど環境が変化する中で、マネジメントを健やかに実行する難易度は日々上がっています。
人事がマネジメント支援に注力することは、1人1人の社員が健やかに成果を出す環境づくりにつながること、そしてお客さまを含めたステークホルダーの方々との良好な関係づくりにつながっていくことを想像しながら、取り組みを進めてきました。
キャリブレーションという人事制度を柱にしたマネジメント支援
クラシコムの人事制度の柱になっているのは、キャリブレーションというシステムです。
キャリブレーションは、社員に対し「半期ごとの評価」を行うのではなく、半年間のパフォーマンスとコストのバランスを振り返って、次の半年の「期待を調整する」というコンセプトで運営しています。
▼期待する役割(ロール/Role)は7種類に分かれていて、Roleに応じた給与レンジが設計されています。
Role定義(期待する具体的な内容)について言語化のアップデートを行い、それをもとに、社員個々のRoleについて議論をし、次の半期のRoleを決定する。そんな「キャリブレーション会議」を、半期ごとに役員・マネージャー・人事が2日間に渡って実施します。
会議で話し合われた内容は、社員へフィードバック1on1で伝えられ、次の半年間の期待をすり合わせていく流れです。
3年前からは、キャリブレーションとは別に、マネージャー同士が交流しながらその時々の組織テーマについて考える「マネジメント合宿」も定着しました。
また昨年からは、普段リモートで働く社員たちが一同に介する「リアル全体会議」が加わって、全社員へ代表の青木から大切にしたいテーマや方針がリアルで共有されるようになり「マネジメント合宿→キャリブレーション→リアル全体会」という一連のプロセスが定着してきました。
人事のマネジメント支援は、この半期に一度行われる「マネジメント合宿→キャリブレーション→リアル全体会」を流れを意識しながら、日常的なコミュニケーションも含めて行っています。
クラシコム人事のマネジメント支援機会
マネジメント合宿、マネージャー陣が1つの「チーム」に
マネジメント合宿のコンセプトは「温泉」で、毎年キャリブレーションの2ヶ月ほど前に実施しています。
丸1日、実務を離れて「チーム」や「マネジメント」について考えシェアし、1日の終わりには、ポカポカと心と体があったまっているような、明日からまた日常を頑張っていくぞ!と元気になれるような場にしたいと思い、毎回企画を考えています。
打ち合わせは、代表の青木も交えて行うのですが、たまに人事側が勢い余って盛り込みすぎの企画案を提案すると「いきなり熱湯風呂すぎない?」と言われハッとすることも(笑)。
実施してきた内容を少しだけご紹介します。
●価値観の言語化
21年7月期は、複数のマネージャーの産育休・執行役員体制への移行・コロナによるフルリモートと様々な変化があり、合宿やキャリブレーションにおいても「私たちが大切にする価値観の言語化(ブラッシュアップ)」を意識していた時期でした。
合宿では、普段何気なく使っている「リーダーシップ」ってどんな要素を含んでいるのだろうか? Role定義の中に、業務上で大事にしたいマインドを盛り込んでみたらどうか? といった議論をしたりもしました。
そんな合宿で浮かび上がってきた共通課題やテーマも意識しながら、キャリブレーションでは各チームのRoleの期待内容をアップデートしていきます。作って終わりではなく、現状にあった言語化に取り組み続けることを大事にしていて、「ぬか床をかき混ぜ続ける」と社内では表現しています。
グループの業務特性によって詳細の期待内容は異なりますが、同じRoleで部署を超えて比較した際に共通点が見出せることも多く、Roleに対する目線のすり合わせも進んできました。そして、あるRoleが担っていた役割が、1つ小さなRoleの役割へと年々変化していることにも気づき、それだけ組織が成熟していること、1つ1つの役割を担う社員の力が育まれていることも実感してきました。
●マネジメントの関係性づくり
翌22年7月期は、組織編成が変わり新チームが生まれ、産育休中のマネージャーも続々と復帰してマネジメントチームも新体制となりました。この時期、大事にしていたことは「より深く議論し合えるマネジメントの関係性づくり」です。
キャリブレーション会議では、1人1人の社員に対してRoleへのフィットや進捗を共有・議論しますが、その際に活きてくるのが関連する他チームのマネジメント視点からみた気づきや質問です。限られた時間内で、より積極的な意見交換が行える関係性づくりをさらに加速していきたいと考えていました。
合宿では、マネージャー自身の「振り返り」に重きをおきながら、お互いの入社からこれまでの変遷をシェアするワークを行ったり、リフレクションが活性化するような「問い」のツールを活用したりもしました。
お互いの人となりや、今、どんなことに心を砕きチームマネジメントを行っているか、葛藤も含めて知り合うことで、キャリブレーションにおいても、深い信頼関係のもと、率直に話しあえる風土が進んでいると感じています。
昨年10月のマネージャー合宿では、外部講師の方をお招きしてワークショップを実施したのですが、良い場をつくる上で、参加者の気持ちが「今日の場」に集中することが大事だと教えていただきました。そのためにも、はじめに「今の気持ち」を共有するチェックインを丁寧に行いましょうと言っていただいたのですが、特別な仕掛けをせずとも、参加者が1時間近くかけてチェックインをしていることに驚かれていました。
今の気持ちだけでなく、最近家庭で起きていること、気になっている社会の出来事など、仕事と直接関係のないような話題でも、そこから感じたことや気づきをシェアすることが、その日の学びやお互いの関係性をさらに深めていると実感しています。チェックインとチェックアウトは、大事なコンテンツの1つになっていて、大好きな時間でもあります。
マネジメントを実行するフェーズの支援
Roleの言語化やキャリブレーションでの個別社員の議論が深まる中で、もう一歩、マネジメント支援において取りかかったことが、冒頭の社史にも言及があった、フィードバック1on1への同席などマネジメントを実行する場面のサポートです。
マネジメントに取り組む上で、何かを思考し整理する場面と、それを実行する場面では異なる難しさが生じます。だからこそ、マネジメント支援において実行フェーズも伴走することは、慎重さは伴いますが、トライしたかったことの1つでした。
新任マネージャーの1on1同席や、産育休のマネージャーのフォローなどをきっかけとしながら、今では幅広くさまざまなチームのフィードバック1on1に同席するようになりました。
同席する際には、次のような観点を意識しながら必要に応じてアシストをしています。
マネージャーとスタッフの相互理解が進んでいるか
マネージャーの期待をスタッフが受け取った際に、業務上のどんな場面でどんな行動が発揮されると良いか、具体的なイメージが描けているか
同席する中では、マネージャーとスタッフの信頼関係を感じることも多く、お互い誠実に伝えよう・受け取ろう・一緒に考えようという姿勢を感じます。
実行フェーズに関わるようになり、難しい課題について一緒に考え、支援することも大事にしていますが、それと同じぐらい、マネージャー自身があまり意識せず「できていること」にも着目して伝えることを心がけています。
得意なことほど無意識にできてしまうので、自分のマネジメントスタイルの強みに自覚的になる機会になったり、「意識上におく」ことで、マネジメントチーム全体としてお互いのスタイルから学び合いがさらに進むといいなと思っています。
組織開発の取り組みは、採用活動へ戻っていく
各マネージャーと人事側のコミュニケーションが深まったことで、採用活動にも良い変化がありました。
直近の採用活動では、複数職種を一同に募集する定期採用に加え、必要に応じて個別職種の募集を行っています。マネージャーと管掌役員・人事で、現在のチーム構成や各メンバーの得意領域などを整理し、今後の発展を見据えながら、チームにどんな強みを持つ人が入社すると良さそうか、そのために募集要項ではどんな打ち出し方をするか、選考プロセスではどのような実技課題を設けるかまで、詳細に打ち合わせを重ねています。
採用活動を行いながらチームづくりの解像度も上がり、次のマネジメント支援にまた繋がっていく、そんな循環を感じています。
(余談ですが、このような取り組みを経て、新たなアプローチで募集したある職種はそれまでの3倍近い応募数になり、採用活動としても手応えを感じました)
健やかな組織づくりを目指して
私は、前職で事業サイドのマネージャーをしていました。半期に一度の評価プロセスは多くの社員のモチベーションを左右する機会でもあり、評価制度を健やかに運用する難しさをいつも感じていました。
クラシコムに転職してキャリブレーションという仕組みを知った時、数値的なKPIがなくとも評価制度を健やかに運用できるんだ!と、新たな希望を発見した喜びとともに、マネジメントへの負荷が大きい制度であることも感じました。
半期ごとに個々人の数値的KPI目標を定めていないからこそ、期待をすり合わせ、個々の社員が次の半期も健やかにパフォーマンスし、組織全体の成果につながっていくかどうかは、マネージャーとメンバー間の信頼関係がより大きく影響すると感じたからです。
社史を読んで、一歩ずつではありますが、マネジメント支援の取り組みを広げてきたんだなと人事としてもありがたい振り返りになりました。
これからも、事業や組織が変化していく真っ只中にあると思うので、組織の状態を丁寧に観察しながら、皆で健やかに進捗していけるよう力を尽くしていけたらと思っています。
(参考)
2023年版クラシコム社史
【Agend】『北欧、暮らしの道具店』は、無理はしないが手は抜かない。健全な事業成長をするチームとは。 | クラシコム