3月31日、保育園児のこどもごころ
18時をすぎてからお迎えに駆け込む親は少なく、いつもならどんどん空いていくはずの保育園の駐輪場がごったがえしている。
3月31日、卒園児や退任する先生へひとこと挨拶しようと親もこどもも帰る気がないのだ。ましてや働く父母たちの金曜日、名残惜しさも相まって例年以上にのんびりモード。
0歳児クラスから保育園に通う娘も、保育園生活丸5年の年中さんを締めくくる節目だ。来年は年長さん、となってはじめて、ようやくお別れの季節を理解したらしい。
よーく遊んでもらったひとつ上のお兄さんお姉さんと別れるのは寂しそうだけど、長い時間をかけて「最年長児」の引き継ぎをしたし(遠足とか、お当番とか)、あした公園でー!なんて約束しているから大丈夫そう。よかった。
一方で、退任の先生は年度末の2日間でようやく発表される。こどもたちが気持ちを整えるのに一日、お別れをするのに一日。
お別れすることになる先生のなかには、5年間の園生活で複数回と担任を持ってくれた先生も含まれていた。
「2日間、おはなししてくれなかったんですよ。やっとごあいさつできたね」
「うん」
「大きくなったね、げんきでね」
「うん」
父母の代わりにミルクや離乳食をもらい、乳児のころから甘えてきた先生との最後の挨拶だ。
娘はほとんど黙りこくったまま、ぎゅっとされて、ほとんど聞こえないくらいの声で「先生さようなら」と絞り出す。
帰り道、園が見えなくなると娘はしずかに泣きはじめて、
途中買い物に寄ったスーパーでも俯いて歩き、
また家に着くまで、自転車の後部座席を覆うビニールカバーを防音室がわりにして大声で泣いた。
私はといえば、かける言葉が見つからない言い訳に「とりあえず泣いたらいいよ」とかそれっぽい言葉を呟く。
去年まではこんな年度末じゃなかったのに、大きくなって「わかってしまったなあ」と思いながら。
こんなとき、親のできることなんてとっても少ない。
昨日さようならした先生へ。
さようならを言いたくなくなるほど、こどもたちと関わってくれてありがとね。平日も時々の土曜日も、忙しい送り迎えの時間、こどもの様子だけじゃなくて母たちとの雑談にも加わってくれてありがとう。若いのに、なんでそんなに頼れる先生なんですか。すごく楽しかった!
退任と書いたけど、退職。これからも保育に関わるかは分からないけど、どこか何かで働くんだろう。
これだけ心を成長させてくれた先生の未来が、より一層明るいものでありますように。