ユカ座の習慣:建具というものを考えてみた#10
こんにちは
本題に入る前にちょっと小話を、
ボクたちは家に来た人に掛ける言葉として無意識に、どうぞお上がりください、そのようなニュアンスの会話をしているかと思います。
でもよく考えると、家に上がるって?、です。
中へお入りください、も言うかもしれませんが、家に至っては、さぁさぁ上がってください、の方が聞き慣れている感じがします。
皆さんはいかがでしょうか。
で、ですね。
そこには日本特有の文化や歴史が関わっていて今のボクたちにも習慣として残っているからだと言われています。
ということで今回は、床に座る習慣と建具、をテーマにお話していこうと思います。
日々の合間にのぞいてみてください。
それではいきます。
|靴を脱いで座る
靴を脱いで家に上がる、という行為は特殊な部類に入ると言われています。
歴史的に見ると、靴脱ぎ、は弥生時代辺りからが始まったと考えられています。
考えられている説は、
信仰として神様をお祀りしている高床式の神殿。
そこは神聖な場であると考えられ履物を脱ぐことが礼儀とされていました。
そうした影響もあり、建物の外と中を明確に区別し、家という場所にも神様が宿っているとされ、汚れた履物(ケガレ)を祓い、家(神聖な場)へ上がる、というようにも考えられています。
また日本の高温多湿の気候の影響から履物のままでは足が蒸れて不快に感じてしまいます。
そのため縁の下に空気層を作って湿気が上がらないようにするために床をつくることで、履物を脱ぎ足を清潔に保ち、快適に過ごせることから、履物を脱ぐ行為につながったとされています。
そこから平安時代にかけて、畳や板材が普及し床の上に座って過ごす習慣が浸透していったと思います。
建具視点で考えいくと、こうした「ユカ座」や「床上様式」と言われている日本的な習慣によって建具の種類、形状にも大きく影響していったのではないかと考えています。
|「座る」と「建具」
ではここからは、一つの木造建築を参考にして、座ると建具との関係性、を見ていきたいと思います。
埼玉県川島町に「遠山記念館」という伝統的な和風建築があります。
遠山記念館の邸宅は遠山氏の社会的な地位もあり、一つ一つの造りがとても豪華な建築です。
近代和風建築だけに、その部屋はほぼ畳敷きで大広間や茶室など、多くの来客が行き来したであろうと思わせるようなもてなすための部屋が作られています。
つまりは、どの部屋で過ごすとしても畳の上に座ることになると思います。
そこに合わせるように、部屋を囲う建具は座ったときに外の庭園が見えるように設計されています。
大胆に庭園を見せる大きなガラス戸、これは来客を案内した時に庭園を見渡せるようにした歩いた時のためだと思われますが、これは腰を降ろした時でも見通せることが可能です。
また別の部屋では腰を降ろした時に、坪庭がそっと見えるようにした雪見障子(障子の下がガラス)を配置しています。
これはボクの推測ではありますが、来客と話す内容や人柄などを想定して案内をする部屋を使い分けていたのかもしれません。
外に広がる庭園は同じでも、内部の建具の仕様によって「ダイナミックさ」や「慎ましさ」を意図的に演出している、と言えると思います。
どの部屋に居ても常に外の風景が建具によって切り取られ内外と一つにしていて、それらの多くは座ったときに効果が発揮される仕掛けになっています。
遠山記念館を通じて見てきましたが、日本の伝統的な建築は「座ったとき」が中心に空間が機能(天井が高く感じたり、外を見通せたり、襖絵が座る高さだったり)するように作られているというのが見えてきます。
遠い昔から続いている「ユカに座る文化」は歴史的な背景は薄れているかもしれませんが、現代になってもボクたち日本人は床に近いところに腰を降ろして座る習慣が根付いていると思いますし、ボク個人は低めに座る方がどこか落ち着きます。
ということで、今回はこの辺りで失礼します。
今後も座る生活文化については学んでいきたいと思います。
ここまでお付き合いくださりありがとうございました。
ではまた
▼遠山記念館
のどかな風景の中にあるので、興味のある方はぜひ
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