障子舞台:日本的な空間アイデアを落とし込んでみた
こんにちは
以前に(5年ほど前)「障子舞台」という作品を作りました。
これは弊社(倉島木工所)の敷地を使って数社共同のイベントを開催したときにランドマーク的な立ち位置で製作した作品です。
ここで振り返ってみようかなと思いまして、、
当時のボクは感覚的にこうしたいというのはあったけれど、上手く文章や言葉に置き換えることが出来なかったのを記憶しています。
知見が足りなかったのはもちろんですし、書いて伝えることが不慣れで苦手でした。
こうしてnoteで綴っているのもそうした経験があったからです。
客観的に自分の作品を見て、今の自分なら以前よりもう少し伝えられのではないか、という感じで綴っていこうと思います。
そんなこんなで、ボクにとっては振り返りですが、初めてお伝えする気持ちでお話させていただきます。
ちょっとだけ、耳を傾けてもらえると嬉しいです。
では始めますね。
■自在に変容する和の空間アイデア
先に障子舞台とは、からお話しますね。
障子舞台のコンセプトは、自在に変容する空間、です。
これは日本の部屋の使い方、空間アイデアが発想の根本になっているという意味になります。
日本の空間アイデア、それは何もないところにその時に適した部屋に変化させるのが特徴と言われています。
それを可能にしている一つが建具という道具だと考えています。
近い考え方で言うと、伝統芸能の舞台の場面が変化するとき、舞台セットによって、演じている場面を、情景を表現していると思います。
建築空間でも仕切る建具や折りたたむ家具を使って、その時に応じた部屋を作り出し空間を表現していた、つまり完全一致ではないけれど、舞台セット≒建具では?、という解釈も出来るのではないでしょうか。
こうした日本的な考え方(文化)と建具から建築空間を考え、そしてイベントの用途・役割に紐づけて、辿り着いたボクなりの解答が「障子舞台」という作品です。
■障子舞台という木造屋台
「障子舞台」は木造の屋台(骨組み)で周囲を障子で囲った仕様になっています。
機能的な面をお話すると、障子は枠外をぐるっと一周出来る仕掛けになっているのが特徴です。
この障子の仕様は特別なことではなく実は日本の民家にあるんです。
一般的に建具は枠の内側を左右に動く引き違いと言われるものを目にすると思います。
しかし伝統的な建築の中には周囲を覆うように閉じる「回転式雨戸」というまるでカラクリのような建具が存在します。
現在では少ないですが、調べればどこかの地域に回転雨戸は残されていると思います。
こうした仕様にした背景にはイベントという場所で活かすため。
もう少し言うと、通常時には門(入口)の役割、時にはステージの役割を持たせる、といったように複数の用途を持たせた建造物にして幅広く活用できるようにする考えから来ています。
その考えをベースにした時、障子を制限なく外を回せるようにすることで、より自在にどの方向を閉じたいか、もしくは開けたいか、という用途に広がりが生まれます。
■舞台として活用してみた:里神楽上演
障子舞台という作品の文脈は
何もないところに何かしら道具(装置)を使って場を作る(変容させる)日本的な空間アイデアはイベントのような人に楽しんでもらえることにも活用できるのだ、というような提案でした。
その一つのカタチとして障子舞台を使っての江戸里神楽の上演でした。
ボク個人、設計者としては建具の考え方を通じて建築物・空間を構成する試みの一環ではあるものの、やはりイベントとして楽しむ要素は必要です。
楽しみつつ、日本的な建築や伝統芸能にに触れて、日本文化って良いよね、が届いたらいいなという思いもあって仲間の神楽師さんに協力いただきました。
子どもから大人まで楽しめますし、エンターテインメント性もあり、アート的な部分もあって良い雰囲気に包まれていたのを記憶しています。
またやりたいです。
当時の経験から色々学んで今に至っています。
作品を作るなら背景、意図、文脈を大事にすること、イベントするなら何を発信する(売込む)のか、などなど改めて振り返っても自分の起点になった企画でした。
▼noteを始めたころにイベントで経験したことを綴っています。
ということで、
今回はこの辺りで失礼します。
ここまでお付き合いくださりありがとうございました。
それではまた。
▼回転雨戸の様子がYouTubeにありました。
▼ボクが見学した数寄屋建築「松桜閣」
▼よろしければこちらも合わせてご覧ください。
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