美しい、がそこにあった:「フィン・ユールとデンマークの椅子-Finn Juhl and Danish Chairs-」
こんにちは
前回は、頭の中の整理は一旦書き出すといいよね、というお話でした。文でもスケッチでも人それぞれのやり方で手を通して出てきた、純度、が自分の考えている本質に気づける、そんな内容を綴らせていただきました。
よろしければご覧ください。
さて今回のお話に入っていきます。
現在、東京都美術館で開催されている「フィン・ユールとデンマークの椅子展」に行ってきたよ、というお話です。
先日のジャン・プルーヴェ展やクリストとジャンヌ・クロード展とボクにとって好きな作り手の企画展が同時期に開催されているのは貴重な機会ですし、気持ちが高揚しています。
特にフィン・ユールはボクが家業の倉島木工所で木工技術を学び、そしてデザインの道に進んでいこうと決めたキッカケをもらった家具デザイナーでもあります。
※その辺りのお話はいつかしたいと思います。
個人的な思い入れもある企画展のお話ですが、お付き合いくださると嬉しいです。
それではどうぞ
■「美しい」が似合う
今回の企画展ではフィン・ユール本人の作品に焦点を当てながら、同時代に活躍していたデザイナーの作品も展示されているので、当時デンマークのデザインがどのようにしてモダンデザインに移り変わっていったのかを追っていけます。
フィン・ユールはデンマークのデザイナーでハンス・J・ウェグナーなど今では北欧デザインと言われている家具を手掛けてきた家具デザイナーの1人です。※建築もインテリアも手掛けていました。
特に椅子のフォルムが特徴的で、
肘掛け部分から脚にかけての流れるような曲線、包み込まれるような背面になんとも言えない柔らかな印象を受けます。
一つ一つの構造の滑らかな造形に目を奪われますし、彫刻のような椅子、と言われる所以がわかります。
1940年辺りのモダンデザイン(家具や建築)は直線的なイメージがある中でフィン・ユールの椅子は他とは違う感情が湧いてきます。
そう、美しい、です。
ボクの中で、「キレイは整っている状態」で「美しいは感情」から湧いてきたこと、という感じに分けています。
キレイは、デザイン的な比率なりバランスなりが整理整頓されているモノゴトを表す時に使っています。
個人の感覚なのを前提ですが、美しいは森の木々で見るような意図していない自然な造形や曲線に触れた時、あるいは自然が作る現象や風景を見た時を湧き上がる感動に近い感覚です。
美しいの中に、どこか優しさだったり温かみや優雅さ、または純粋さを感じているのかもしれません。
そんな「美しさ」をフィン・ユールの椅子には感じるんです。
■座れるよ
企画展の最後の展示室ではフィン・ユールだけではなく、デンマーク出身巨匠デザイナーたちの椅子に座れるセクションとなっています。
これはなかなか出来ない体験ですし、展示品として対面していることが多い中で実際に触れられる機会は大変貴重です。
デンマーク文化のヒュッゲ空間を演出していると思われます。
椅子に座りながら、適度な照明の明るさ(暗さ)に気持ちが落ち着きます。
大きくてゆとりのあるフィン・ユールの椅子に座りながら目を閉じて居座らせてもらいました。
他の方々の座りたい気持ちを察しながらもちょっとだけ自分時間をいただいて、、
企画展に行かれたら自分に合う椅子を見つけてみてくださいね。
椅子文化(イス座)で座面の高さ、広さ、傾斜、堅さ、柔らかさなど様々なタイプの椅子を使い分けて過ごしている、と聞いたことがあります。一方で日本はユカ座と言われるように畳や板のように床の上で過ごす生活スタイルです。
そこから考えていくとイス座文化にとっては座面の上が床(場所)という考え方だと思います。
なので、イスの座面が床であれば用途によって座り心地を変えて居場所としているとも言えそうです。
ゆったり過ごす場合は座面積の広く奥行が合り、そして傾斜が付いた座面、さらにハイバックが座った本人を包み込むフォルムによって小さな空間を作り出しています。
日本と生活スタイルの文化の違いはありますが、限られた環境の条件の中で自然と調和をしつつ、気持ち良く過ごそうとしていたところはどこの国でも近いものがあるんじゃないかなと思います。
家具は欧州では伝統的な文化になっていると感じますし、日本は部屋そのもので床素材や建具で過ごし方に変化をつけていた、文化の違いを知る面白さや学びが多い企画展でした。
フィンユール展は10月までと会期も長いので北欧デザインやフィン・ユールデザインがお好きな方は足を運んでみてはいかがでしょうか。
ボクもまた行きます。
ということで
今回はこの辺で失礼します。
ご覧いただきありがとうございました。
ではまた
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