素のままを活かすために:木について話そう#02
こんにちは
日頃の仕事では、色々な木材を扱い製品作りをしております。
「無垢の木」なんて呼んだりしていますが、木材のそのままを活かした製品や空間に触れると「落ち着く」だったり「あたたかさを感じるね」といったお声を多くいただきます。
作り手側からのお話をしますと、「無垢の木」は新建材のように加工しやすい製品ではなく、100%の自然素材です。
もう少し言うと、無垢の木は出来上がると本当に素敵ですが、そこに至るまではなかなかのじゃじゃ馬な素材です。
作り始める前から木の割れや反りが表れていたり、どのような状態かを見て、その素材の特徴を見つけて、どのようにして良さ(長所、魅力)を引き出していくことが出来るのかを考えていくのが作り手のお仕事だったりします。
ってふと考えてみると、木も人もまずは相手を知っていくことからが始まりなのかも、なんて思ったりもします。
ということで、
今回は、素を活かす、お話をしていきたいと思います。
お時間があるときにのぞいてもらえたら嬉しいです。
|木は暮らしの語部
冒頭でお話した通り、確かに木をはじめ自然素材が活用された空間(部屋)に居ると「安らぎ」を感じます。
作り手側のボクもやはり無垢の木や素材をそのままを活かされたモノは好きですし、気持ちが和らぎます。
また、自然素材で作られたものは時間が経過することで「味わい」となって変化していきます。
その「味わい」というのは、部屋や木製品の痕跡(擦り跡や傷跡)を見た時に住み手の「思い出」という記憶を呼び起こしてくれるスイッチ的な役割があるのではないかと思います。
真新しい空間(部屋)や木製品から暮らしは始まり、生活の一部にだんだんと溶け込み、日常から生じる痕跡が暮らしの個性となって、その住まい特有の味わい深さを感じさせてくれるのではないでしょうか。
そう考えると自然素材(木材など)は機能面のメリットのみならず、住み手と共に「トキ(時)」を過ごしてきた歴史を伝える「語部的な存在」とも言えそうです。
定期的なメンテナンスは必要になりますが、木などの自然素材を取り入れる理由の一つに何かの参考にしていただければ嬉しいです。
▼暮らしの痕跡についてはこちらでもお話しています。
|新宮熊野神社「長床」という建築
以前、福島県喜多方市を訪ねました。
その時に立ち寄った内の一つが新宮熊野神社。
神社の内にある拝殿「長床」(ながとこ)は国指定重要文化財となっている歴史的建造物となっています。
この木造建築は修験者が修業に励んだ道場として使われたとも、また参拝者が拝礼や祭儀を行う拝殿であるとも伝えられているようです。
特に周囲はふさがれているわけでもないので殺風景といってしまえばそれまでなのですが、ただ少しジッとしてみると風が通り抜け、また鳥や木々が揺れる音が建物内に響いてきます。
丸柱に目を移すと、素地のままの柱で修繕を繰り返した継ぎ足しの跡が見ることが出来ます。
それは何年もこの場所、この土地、そして地域の人と一緒に過ごしてきた証とも受け取れる気がします。
歴史を感じる佇まいと場の静けさと共に素のままの素晴らしさ(または素材の持つ力強さ)、を感じられる素敵な木造建築です。
興味のある方は足を運んでみてください。
長床の柱群にしても日頃扱う木材にしても、元々ある素材そのままの個性が素敵であって、その部分を引き出してこそ味わい深い魅力につながる、素を感じる建築や木材に触れてみるとそうした教えを与えてもらった気がします。
自分が考えるデザインにはそうした素が持つ美点を活かせるようにした(※そこがムズかしいところですが)、そんな風に思います。
ということで、
今回はこの辺りで失礼します。
ここまでお付き合いくださりありがとうございました。
ではまた
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