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哲学的意味がありますか?
「哲学的意味がありますか?」
これは米澤穂信の著書『さよなら妖精』の作中でのセリフだ。
私は大学受験が終わり、先日友人に借りていたこの本を読むに至った。元々『氷菓』など米澤穂信の書く古典部シリーズが大好きで期待をもって熟読したのだが、終盤の推理とやるせないラストに心を打たれた。
本書のなかで印象的だったのが、ユーゴスラヴィアから日本にやってきた少女マーヤのセリフだ。彼女は17歳ながら自国の発展のために日本の文化を探求し、学びたいという意欲をもっていた。そのため主人公たち(ひいては私たち)にとって日常的で当たり前の事象について「哲学的意味がありますか?」と問う。主人公たちはその当たり前をマーヤが理解しやすいようにかみ砕いて説明する。そうして改めて常識を再認識すると疑問が生まれてくる。
マーヤが素直な疑問をぶつけ、主人公たちはその謎を解き明かす。その繰り返しの中で彼らの仲は深まり、成長していく。
米澤穂信の書く”日常の謎”には、私たち読者への人生教訓的なメッセージが深くこめられているように感じた。マーヤの生き方に憧れ、成長した主人公に私は自分を重ねるようになっていった。
探求心をもって日常と向き合うこと。
平和な自分の世界から外に飛び出すこと。
マーヤから主人公が学んだように私もそういう生き方をしたいと思った。人間の非力さを痛烈に描いた作品だからこそ、ミステリーという枠を超えて心に作用するのだと思う。
ぜひ皆様にも一読してもらいたい。