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好きを仕事にする
なんか嫌だった。
好きを仕事にしてしまうと、いつかは嫌いになってしまうから。
それはただの思い込みであるのかもしれないと気付いたのは最近のこと。
私は音楽が好きだ。
就活をしていた高校生の頃、渋谷のタワレコで働きたいなんて考えていた。
渋谷駅に遊びに行く用事があれば必ずタワレコのあの大きい看板を眺めては心躍らせる日々だった。
実際に行動に移そうと求人を調べるとその夢は一気に消えていった。
大卒が最低条件だった。
高校の進路の先生には、最近はデジタル化が進んでいるからCDショップなんていつかなくなってしまうよとさえ言われた。
ああ、私は無理に等しい将来の夢を抱いていたんだなと思った。
だけどいつしかその出来事は正当化された。
結局高校を卒業し好きでもない車業界に勤めてからだった。
CMや日常生活で自分が働く会社を目にするたびに嫌気がさした。
働くと、その業界ごと嫌いになってしまうのかもしれない
私は確信した。
そもそも仕事に対して悪いイメージしかないからそりゃそうなると納得した自分がいたのだ。
それと同時に好きを仕事にしてはいけないと心から思うようになった。
せっかくのプライベートに好きが消えてしまうから。
ここ最近はまた気持ちが変わった。
好きを仕事にしてみたい
今の職場の仕事の負担やセクハラ上司のおかげで適応障害になり休職に至った今、強くそう思う。
私の好きなものは高校時代から変わらず "音楽" だ。
昔からどん底になった私の心を救ってくれたのは紛れもなく音楽だった。
音楽でつらい思いもした。
音楽をきっかけに仲良くなった人がいた。
その人はピアノが世界で一番上手だった。私は勝手にその人に恋をした。
半年恋心を抱きながら過ごしていたが、しまいには好きな人の好きな人の話を聞いていた。しまいには、私の気持ちも、伝えていた。
もちろん返事はごめんなさい。
分かっていても、失恋は心の一部分を抉る悪魔。同時に私は音楽も嫌いになってしまいそうだった。
その人との思い出は常に "音楽" だったから。
振られてその人とサヨナラして始発の電車が待つ駅まで歩いた30分間。
私に寄り添ったのは音楽だった。
何でかわからない。嫌いになんて1ミリもならなかった。
ましてや、次の日からピアノを始めていた。
私を振った彼は世界一上手なピアニストだったのに、ピアノなんて触れてしまえばその彼のことを思い出してしまうのに。
音楽の楽しさが勝った。
私が思っている何倍も、何十倍も、私の好きな音楽は私の味方なのかもしれないと結論が出たようだった。
これなら、仕事にしても嫌いにならないかもしれない。
そんな思いに着地した。