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手放す、許す、許され


3年付き合った彼のお母さんには、とてもよくしていただいた。


1年前、結果的にお別れすることになったものの、していただいたたくさんの心遣いに、なんのご挨拶もできていなかったことがなんとなく、ずっと私の心のしこりとして浮游していた。


終わりにしたかった。


結末を迎えたかった。


物語りを完成させたかった。


いただいたものを持ち続けることも、後ろ髪を引かれるような思いをするのも、もうやめにしたかった。


1年経ったことを機会に、

身勝手ながらに自分の部屋の断捨離を行い、

心の断捨離も。と思い、彼のお母さんにお手紙を書くことにした。


ご住所は、彼と別れたときに彼のものを送る先として知っていた。


手紙なんてもう久しく書いていないな、と思いながら近くの東急ハンズに便箋を選びに向かった。


彼のお母さんが好きだった色を思い返す。 


彼のお母さんは、ふくろうが好きだったことを思い出し、ふくろうが印刷されている便箋を探すが、なかったので諦めた。


いざ書き始めようとしても、なかなか言葉が見つからなかった。

 



見つかるのに、文章に変換するのが難しかった。という方が正しいかも知れない。


仲のいい友人宛てに書くわけではないので、お手紙の書式を検索したりするものの、そこまで固く書いてしまうとどこか味気なかった。


ペンを持ったり置いたり、ときにたばこを持ったりしながら時間だけが経ってしまい、


敬語謙譲語が間違ってないかをiPhoneに聞きながら、伝えたい感謝を書いた。


PCとiPhoneばかりの生活をしていたので、単純な漢字を忘れてしまっていることに軽くショックを受けながら進めていった。



あれ?こんなに字下手だったかな、


やっぱり軽くショックを受けながら清書した。


私の身勝手さで手紙を書くだけなので、

返信などあったとしてもむしろ欲しくなかった。


相手にも相手の生活があり、彼にも新しい人が現れていたら煙たい存在となってしまうであろうこの手紙に、私の住所は記載せずに封をした。



手紙の切手は84円なんだってことも調べなきゃわからないぐらい、手紙を書いていなかった。


裏に私の名前しか書かれていない手紙は、84円に託され、赤いポストに落ちていった。


彼からもらったネックレスを外し、首元が少し寂しくなったが、


日に日に寒くなる季節のせいにでもしようかな。


彼のお母さんからいただいたお洋服や、ブランドもののバッグや、アクセサリーも、


所有権は私にある。と謎の言い訳をして踏ん切りをつけた。


彼には彼としての幸せを。


恋愛の続きがしたいわけじゃない。

この恋愛をきちんと終わらせたかった。


そんなことを思いながら投函した翌々日には、

彼のお母さんからLINEが届いた。


『お手紙嬉しくて、息子に連絡先を聞きました。』


少しの安堵と、彼に一瞬私をよぎらせたことになんとなくモヤモヤっとした感情を抱きながら、彼のお母さんからのLINEを読んだ。


突然娘が1人いなくなってしまったような喪失感を抱いたこと


私の話を聞くといいながら、自分の愚痴を多く話してしまったことへの謝罪


そして、2人が別れを選んだことは、自分が介入しすぎたせいなのでは、と苦悩していた日々のこと


私と別れたことを息子から聞いたときに、彼は何も語らず、彼のお母さんが泣いたこと


彼は実感暮らしをやめて、私と別れてすぐ、はじめての一人暮らしをスタートさせたこと


彼が、私には幸せになって欲しいと言っていたこと


そんなことが書かれていた。


文章だけなので、本当のところ身勝手な私に思うところがきっといっぱいあったのかも知れない。


ただ、幸せになるんだよ。


と最後に書かれていた。


わからないけど、涙が出た。


何故だかわからないけど、気づいたら泣いていた。


当時と変わらないあだ名で呼びかけられたせいにでもしようと思う。


私は、ただ

温かくしてどうかお体にお気をつけてお過ごし下さい

ということしか返信出来なかった。


またどこかで偶然すれ違ったときに、恥ずかしくないように一歩ずつ歩んでいきます。

としか返信出来なかった。


私の知らない、私にまつわる物語りを知った。

そして、誰のことも傷つけないなんて不可能さを改めて知った。


私の1年は、進んでいるようで逆再生を繰り返しているようだったのかもしれない。  


でも、この1年、

もがいたり悩んだり、また新しい人と出会ってみたり、やっぱり少しずつだけど、歩めてると信じたい。



彼と過ごし、ご家族にも大切にしていただいた3年間は、私にとって幸せそのものだった。


あんなに私の日常すぎた生活は、

今では思い出になっている今日 


きちんと終わらせられたかな。


どんな言葉も、今には適さないけど、


どうか。温かく過ごして欲しい。

















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