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作:久野那美 ※「短編集1 兎の日」より https://xxnokai.stores.jp/items/5e54107d94cf7b650bddc955 ★戯曲の上演申請はこちらから https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSdfnwd905bJwUCho7YX3jQmJ-ZD9li9Izqgt8VlLgRs10d4IA/viewform ★お問い合わせは、xxnokai@gmail.comまで **************
登場するもの: 男 女 静寂。やがて・・・ かちっ。 女 遠くで音がした。スイッチが切れた。 女 世界は反転し、あっという間に、動揺してざわめく人々でいっぱいになった。 男 おい、大丈夫か? 女 うん。 男 ・・・・困ったな。 女 うん。 男 どうなってんだよ? 女 わかんない。 男 なんなんだ? 女 わかんない。 男 まいったな。 女 どうなるの?これから 男 俺に聞くなよ。 女 だって。 男 あーあ。(あたりを見回して)。 女 ねえ。
photo: beni taeko 町の話遠く離れた二つの町がありました。 うっかりすれば遠くにあることさえ忘れてしまうほど、 二つの町は遠いのでした。 あんまりに遠いものですから、道は途中で足りなくなって途絶えていました。 互いの町を行き来する手段は何もありませんでした。 いつの頃からだったでしょうか。 互いの町がちゃんと遠くにあることを忘れないでいるために、 二つの町は夜になると小さく灯かりを点すようになりました。 夜になるとどちらの町も新しい灯かりを点し、遠くの灯かり
白山羊さんはある日。手紙を食べずに封を開いた。 そんなことは初めてだった。 どうしてそんなことをしようと思ったのか、 ぜんぜんわからなかった。 はじめて開いた手紙は干し草の香りがした。 「さっきの手紙のごようじなあに。」 几帳面な小さな文字がならんでいた。 あの日。 白山羊さんは黒山羊さんに手紙を書きたかった。 どうしてもどうしても手紙を書きたかった。 だけど何を書けばいいのかわからなくて、 考えている内に、なぜだか「さようなら」の手紙を書いてしまった。 どうしてなのかわ
登場するもの: 僕 彼女 僕 彼女は手品師だった。 いつも黒いチョッキを着て、大きな帽子を頭にちょこんとのせていた。 毎週日曜日の公園で、ステッキを花に変えたり帽子から鳩を出したりして拍手を浴びていた。彼女は人気者だった。 けれどもその日、僕が彼女を見かけたのはいつもの公園ではなく、 町はずれの川原だった。 彼女 あなた、いつも公園に来てる? 僕 ・・うん。 彼女 知ってるわ。いつもいちばん前で見てるでしょ。 僕 ・・・・ 彼女 手品が好きなの? 僕 ・・・
登場するもの: 私 彼 私 私は手品師だった。 日曜日になると公園へ行き、みんなの目の前で帽子を開けて鳩を出して見せた。 誰もが鳩を見て、大きな拍手をした。 私はにっこり笑ってお辞儀をした。 とても誇らしかった。 そして、なぜだかいつも、取り残されたように、無性に寂しかった。 彼はいつもいちばん前で、目をまるくしてそれを見ていた。 いつも。毎週。何回も。 何度おなじことが繰り返されても、 いつも心底不思議そうに、わくわくした目で見つめていた。 私にはそれがとても不思
登場するもの: 時計 時計屋 時計 調子が悪くなったので、なおしてもらうことにした。 針の先がなんだか重いし、ねじのところはぎしぎし言うし。 ときどき息切れもする。 最近。時間が経つのが妙に遅くなったのは、きっと気のせいじゃない。 うすうす気づいてはいたんだけれど、認めるのが怖かった。 だけどついに、ごまかしきれなくなってしまった. 修理に出かけることにした。 時計屋 (脈を取る)
作:久野那美 ※「短編集1 兎の日」より http://kaimart.cart.fc2.com/ca1/25/p-r-s/ ★戯曲の上演申請はこちらから https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSdfnwd905bJwUCho7YX3jQmJ-ZD9li9Izqgt8VlLgRs10d4IA/viewform ★お問い合わせは、xxnokai@gmail.comまで ************************ 登場
作:久野那美 ※「短編集1 兎の日」より http://kaimart.cart.fc2.com/ca1/25/p-r-s/ ★戯曲の上演申請はこちらから https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSdfnwd905bJwUCho7YX3jQmJ-ZD9li9Izqgt8VlLgRs10d4IA/viewform ★お問い合わせは、xxnokai@gmail.comまで ************************
※ひとり芝居台本 久野那美 ※上演に際するお問合わせは xxnokai@gmail.com まで ★戯曲の上演申請はこちらから https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSdfnwd905bJwUCho7YX3jQmJ-ZD9li9Izqgt8VlLgRs10d4IA/viewform ************************ ちりん、ちりん、鈴の音。 女がひとり。 手首にはひもが巻かれてい