イカチチ(いかちち)ってなんですか? 岡山香川愛媛と九州のごく一部で流通している珍味食材を調理する
イカチチ(いかちち)ってご存知ですか。この記事をご覧の皆さま、これを読んでくださっているということは、おそらく「イカチチ」「いかちち」という言葉を検索にかけましたね?
筆者の仕事はライティングです。企業や団体でメディア運営や編集、広報のサポートをしています。先日、ライター仲間がX(旧Twitter)で、こんなことを言っていました。
ななななななななな、ななまん!?
78,748 PVってなに。(PVは、簡単に言うと記事のあるページの閲覧数です。)これはずいぶん前のスクショなので、おそらく現在はもっと数字が伸びているのではないでしょうか。
ここnoteもそうですが、インターネット上でものを書いていると、「多勢に読まれなくても、仲間が読んでくれたら嬉しい」という思いと、「PV数に興奮する」思いの両方があるんです。
おばけPV。物書きのはしくれとしてはPVの伸びた記事のひとつも持っておきたいものです。とはいえ、私の仕事にはいかんせんPVはあまり関係ないんですけども。でも自分の書いた記事でGoogle検索のトップに出てくるものがあると楽しいので、ここ岡山の珍しいものの情報を残しておきましょうか。このイカチチ(いかちち)情報は、そんな思いで書いた記事です。ちなみに岡山在住◯年目。ロコではありません。
★★★
なーんて考えていた矢先に、SNS仲間で町のスーパーマーケット好きなおぎ氏がこんな投稿をしていました。
タコとイカ、どっちも好きだわ決められないと思ったけど…
イカにキメて投票。
「イカにキメて」ってカッコ良いですね。
そうしたらですね
みなさん、イカチチに興味津々。
こんなきっかけでイカチチ(いかちち)情報を残しておこうという運びになりました。
イカチチnoteのはじまりはじまり。
目指せ!「検索:イカチチ」で
日本国内グーグルエンジンtop掲載!
なんてね。
★★★
皆さんイカチチって知ってますか。(唐突
検索したらそれなりに情報が出てくるので、「レア情報」というにはインパクトが足りないですね。でも、今回、体を張って格闘しました(イカと)。
イカチチとは?
まずは百聞は一見に如かず。実物をどうぞ。
イカチチは、紋甲イカの卵胞。メスの内臓です。卵子を包む臓器。この中には、将来イカとして海ですいすい泳いでいたかもしれない生命の源がたっぷり…。こんなものまで食べちゃうなんて、人間の食に対する業の深さよ…(食べるけど
ちょっとカタチがね、グロテスクですよね。三葉虫みたいな。フナムシみたいな。うちの子どもたちは見ただけで拒否でした。
大きさは掌に乗るくらい。大小の差はイカ個体の差です。卵胞は2個持っているので、このパックだとモンゴウイカ3ハイぶん。
このイカチチは「生鮮館わたなべ」というさかなに強いスーパーマーケットで買いました。
看板写真がなかったのでチラシで。チャーミングなお魚が看板のお店です。
きむらほどの規模ではありませんが、こちらも鮮魚の種類豊富。え?きむらって何ですか?って? それはですねえ…と、長くなるので割愛。知りたい方はこちらへどうぞ→スーパーきむら
★★★
イカチチは内臓ですよね。では、外身はどこへ? と素朴な疑問を抱き、いざ、生鮮館わたなべの鮮魚コーナーへ。
昼の1時半。おそらく1日の中でいちばんスーパーマーケットが空いてる時間帯。鮮魚担当さんどころか、ひとっこひとりいなかったです。
イカチチパックを片手に、ひとけのない鮮魚コーナーをウロウロするおばさんをご想像ください。
しばらくしたら鮮魚担当さんが通りかかったから良かったものの、危うくバックヤードへのあのペラペラの戸(?)を覗くとこでした。あぶない。
Q.イカチチってどうやって仕入れるんですかー?
鮮魚担当さん「?」
Q.イカチチってどうやって仕入れるんですかー?
鮮魚担当さん「???」
Q.いや、あのイカチチの外身はどこへ行くのかなあって。単なる好奇心です…
鮮魚担当さん「あ、ああ。これはこの状態で仕入れるんです。冷凍が多いかな」
ほーか、冷凍仕入れですか。
Q.身はどこへ…?
鮮魚担当さん「加工用なんじゃないですかねえ…ちょっと詳しくはわからないですけど」
現場からは、以上です。
★★★
このイカチチ、私は岡山に住むようになって初めて見ました。それもそのはず、イカチチは瀬戸内海と九州の一部でしか流通していないのです。
この、魚売り場で見慣れない形。でも不思議と嫌悪感はありませんでした。なぜかというと私の生まれ育った北海道では、イカチチではありませんがこのようなものが売られています。
ホタテの子、知ってますか? ホタテの貝柱の横にくっついている白やオレンジのあれ。精巣と卵巣なのですが、北海道のスーパーではイカチチ同様、その部分だけをパック詰めして売られています。東北でも売っているみたいです。
けっこう強烈なビジュアル。赤いのが雌で白いのが雄ね。
これがまた美味しいのなんの。甘辛く煮たり、バター焼きにしたり。貝の風味と内臓系のちょっとクセのある食感。赤と白で味わいが違うのですが、白い方がサクサクしてて好み。赤はぷりっとしています。
そんなわけで、わたしはイカチチの姿を見てもさほど抵抗がなかったわけです。
んで。
んで、ですよ。
イカの体にイカチチはふたつ…。解体して探してみたくない?
きたよスーパーきむら……
ここならいつもコウイカ系のイカが並んでる。
それも、まるごと。(きむらって何?と思う方はぜひこの noteを)
この日もありました。スミイカ、580円也。鮮魚担当のおいちゃんに「スミ抜きするかい?」と威勢よく聞かれましたが、ノーセンキュウ。本日は、自分でやらないと意味ないのです。(と…この後、大惨事になるのをわたしはまだ知らない…)
この中から、イカチチを取り出したい。とはいえ、オスとメスがあるからね、確率は1/2です。
立派だ。あ、スミが漏れてる。
さ、まずは足を引っ張って取り出して。
スミを抜きまーす。
出るねえ、さすが「スミイカ」。
あれ…、すごい量のスミ…さすがスミイカ…!
ええっと…スミイカ…?
排水溝、詰まった…!スミイカァァァァァァ…!
教訓
おいちゃんの「スミ抜きするかい?」には素直に従っとけ…!
あ、でもこのスミを全部きれいに取っておけば…イカスミパスタとかスミ煮込みとかできたかもしれません。もったいない。
さて、気を取り直して。
ん…?
らしきもの…ひとつ…!
ひとつってことは…
オス。スミイカァ。残念でした。
見た目似てるけど、これは卵胞ではありませんでした。白子でした。残念。
わー、サッカーのスネあてみたい立派な甲。
コウでなくっちゃ。
では、解体ショーで気が済んだのでパックのやつで料理しましょう。
いつもはイカチチ丸ごとの状態で醤油とみりんで甘辛く煮るんですが、今日は検索で得た知識でひとかけだけ「炒める」に挑戦です。
イカチチをきざんだのはこの時が初めて。中身、意外としっかりしているもんですね。トロトロと崩れるのかなと思い込んでました。
ところで、食材のこと検索しまくっていたら、必ず出てくるじゃないですか。
【みんなが作ってる】 いかちちのレシピ 【クッ●パッ●】 簡単おいしい …
みんな?みんな作ってる?と、いつも某レシピサイトにツッコミを入れたくなります。あの検索でヒットする「みんな作ってる」は自動挿入なんでしょうね。
こんな一部でしか知られてない食材イカチチ(いかちち)にまで【みんなが作ってる】と付けるとはいい度胸です。
イカチチを料理していたブロガーさんも発見しました。
「クセがないので何にでも合うと思います♡」
これは、ふざけているのかしら。
形はコレで、味は内臓特有の複雑な味わい、そして何かの貝のよう歯ざわり、匂い…。
味があるかっていうと、さほど味はありません。
あ、イカかなー。イカくさいかなー。くらい。
食感を楽しむ珍味です。
クセがないので何にでも合うだとう…!
イカチチにはクセしかありません
(個人的見解)
味が淡泊過ぎて鍋物とかNGです。きっとポン酢は死ぬほど合いません。キムチ鍋くらい濃い味…ならいけるかもしれません。あとですね、少しでも古くなるとアンモニア臭というのか、独特のにおいが出てくるので要注意。割引シール品は絶対買わない方がいいです。ダイオウイカも浜辺で上がって死んでしまうと、そりゃあもう浜辺が臭くなるらしいです。
薄切りで炒めたものはさほど美味しいモノではありませんでした。あくまで個人の見解。
切ったのを炒めると、貝柱のような食感になります。でも味がしみ込まない素材なんです。炒めるならオイスターソースやコチュジャンや胡麻油でこってり味にした方が良いかもしれません。
やはり我が家では煮た方がいいねってことで、みりんと醤油でコトコトしました。
イカチチの食感はむっちりもにもに。パクパクガツガツ食べるものではなく、チビチビかじるのが美味しいです。内臓とはいっても白子とも腸とも違う。何かの貝のような食感。バイ貝やツブ貝の茹でたの似てるでしょうか。あああ、同等に例えられるものがなくてもどかしいです。とにかく食べてみてほしいです。
わたしにはクセになる食感です。ビールより日本酒向けのアテかなと。
そして、先ほども言いましたがイカチチ自体には中まで調味料がしみ込まないので、味付けはコーティングの調味料頼み。この歯応えとイカ風味にはこってりした味があいます。次回はオイスターソースや味噌で炒めてみましょうか。
岡山へお越しの際は、ぜひイカチチをご賞味ください。
イカがでしたか?
岡山から珍味情報をお送りしました。
★★★
これでお化けPVになるでしょうか。
検索エンジントップになるでしょうか。
インターネットSEO遊び、楽しいですね。
(※2023年9月現在 Google検索エンジンで「イカチチ」第2位)