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実践のための「夢見る小学校」その⑤ 〜きのくに子どもの村が考えるこれからの教育〜

 かなり久しぶりの投稿となりました。
 昨日は、「オモロー授業発表会」という、各地の面白い先生方の実践の発表会に、登壇者として参加してきました。その影響もあってか、「よし!blog更新しよっ!!」と重い腰を上げました(笑)

 今日は、1年前に受講したきのくに子どもの村の実践講座の最終回についてです。これまでの4回の講座を通して、きのくにが実践していることを具体的に学んできましたが、最終回の今回は、じゃぁ、これからの教育はどうあればいいのかというのもです。
 その前提として、現在の社会の変化がどうなっているのか?講座の中で、アメリカでベンチャー企業の支援をしているディンター・スミス氏は、この先、3Dプリンターで家が建てる、車の自動運転、ドローンでの配達など大きく社会が変わると指摘していると聞きました。現に、2019年のワシントンポスト紙では850もの記事がAIによって書かれたそうです。「これまでの暗記型ではなく、課題解決型の教育に切り替えるべきである。」と言っています。
 また、オックスフォード大学の研究によれば、不動産ブローカー、レストランの料理人、金属や樹脂を加工する人、会計士、小売店の店員、工場作業員、臨床検査技師、タクシー運転手、農業従事者、電子機器技術者などはAIによる自動化の可能性が高い職業であり、今後なくなる可能性がある仕事だということです。逆になくならないであろう仕事は人相手や創造的な仕事が挙げられています。知識重視から柔軟に発想し、自らの力で課題解決できる力が必要であるということがこの研究結果からもわかります。
 こういった社会の変化に対し、現場としての実感は薄いのですが、文部科学省の求める学力観も、創造的思考、批判的思考、探究的思考、協同する力、社会参加、コミュニケーション力、問いを設定する力など適応力重視の方向への実は変わってきているのです。
 
 そこで、子どもに持たせてあげたい力はなんだろうと考えたとき、今までは子どもに与えるという考え方で速く、正確に、効率よく、受験に、相手に勝つといった教育が行われてきたけれど、これからは「子どもの内から育つ」と考え、よりよく生きる力(快適、便利、○○したい、面白い、探究心、好奇心=自己実現力)や愛し愛される力(自信、自己肯定力、選択力)、人とつながる力(伝える、聴く、協力する、共感力、民主的な態度)が大切なのではないかとカトちゃん(講師の南アルプス子どもの村校長)は言っています。そして、やる気のスイッチは子どもの内側にあるのであって、外からは開かないというイメージであり、大人がスイッチを入れてしまわないようにしたいと言っていました。そして、教えられて身につく性質のものではない力が育つ環境を用意してあげたいと。これって、すごく難しいことだなと思いますが、とても考えさせられる言葉でした。私たち教師は、どうやったらやる気が出るかなと、無理に子どもたちのスイッチを押そうとしがちです。そういった小手先のモチベーションを上げる手法ではなく、子どもの内側のスイッチが入るのを待つ、環境を用意するってとっても大事だなと感じました。これは、私自身反省するところです。
 そして、「なぜ勉強するの?どうして学校に行かないといけないの?」という問いには、従来の教育では、高学歴、高収入、安定、ステイタスというのが答えですが、そうではなく、なりたい自分、なりたい職業に就くためで、オルタナティブな教育観では、興味があることに夢中になるうちに学ぶ楽しさ、人と協働する喜びを知り、もっと自分を高めたい、満足したいという思いを原動力にして、人としての力を蓄え、自己実現をかなえる場所にたどり着く、言い換えれば生きていて幸せと思える境地にたどり着くようなものだとカトちゃんは言っています。
 これは自分自身の学校時代を振り返ってみても、すごく共感できるところです。私はもともと勉強は好きな方で、学校の課題もそつなくこなしていたと思うのですが、なんで勉強してたのかなって思うと、やっぱりいい成績を取りたい、負けたくない(周りに頭がいいと思われたい)という気持ちが一番強かったように思います。もちろん、自分の目指す職業(教師)になるために、この大学に入りたいというのもありましたが、勉強することの本当の楽しさは、大人になってから知ったと思います。夢中になるうちに、もっともっとと湧き上がる思いは、今まさに実感中です。今回、オモロー授業発表会に登壇させていただいて、もっといろいろ勉強して、いろいろチャレンジして、また皆さんにいろんな角度からお話ができるようになるといいなとも思いました。これも内から湧き上がる原動力ですよね!

 さて、話を元に戻して、きのくにが考える多様な学びを支える5つの条件という話をカトちゃんがしてくれました。
 まずは、①子どもの自己決定が尊重されることです。子どもが学校に合わせるのではなく、学校を子どもに合わせようと言っています。今、不登校が激増しています。勤務校においても、不登校や別室登校、行きにくさを感じている子どもがここ何年かですごく増えたなと実感しているところです。それは、子どもを学校の枠にはめようとしてきた今までの教育のあり方に、子どもたちがNoと言っているのだと思います。デューイは、著書「経験と教育」の中で、「子どもの教育は過去の価値の伝達にはなく、未来の新しい価値の創造にある」と言っています。まさに、大人が過去や自分の経験に囚われず、未来の子どもたちを信じて舵を切っていく必要があると思います。
 次に、②子どもも大人も同じ一票が与えられること。子どもが大人と対等に話をする経験を大切にされています。お互いが一人の人間として尊重し合うということは、フラットな社会、民主的な社会を築く上での基本だなと思います。これは職員室にも言えることで、校長と職員も同様に対等な環境で話ができる環境が望ましいとのことでした。サマーヒルスクールの創始者であるニイルは、権威を捨てよと言っています。子どもたちと教師、子どもたち同士が対話をしていく学校にしていくためには、まずは職員室が経験や年齢、性別、役職に囚われることなく、お互いが一人の人間として平等であり尊重されるような場所にならないといけないと思います。その教師の態度が、きっと教室の空気感になっていくと思います。
 そして、③インクルーシブであること。一人ひとりのゴールは違ってもいい、困った子を排除していく方向ではなく、おおらかに多様性を受け入れ合うことが大事だということです。みんなの学校で有名な木村泰子さんは、大空小学校のことを「すべての子どもの学習権を保障する学校、多様な子が安心していられる学校」と言っておられ、支援の必要な子もみんなと一緒に学ぶことを推奨されています。特別支援教育がいけないというわけではありませんが、多様な子が教室で一緒に過ごすことで、世の中には多様な人がいて、多様な考え方があり、その多様性の中でどのようにみんなが幸せになっていけるのかということを考えていく態度が育っていくのではないでしょうか。
 それから、④ミーティングが大切にされることです。学校は民主的な手続きがなされる小さな社会であるべきで、ルールを自分たちでつくっていくということを大事にされています。世の中はマジョリティの世界であり、多数決で押し通されてマイノリティの声が届かないことが往々にしてあるけれど、民主的な手続きがなされることを子どもたちが見ていくことが大事だということです。学校では多数決で物事を決めることがとても多いのですが、多数決は民主的な手続きてはないと思います。対話を通して、マイノリティの意見も大切にされる、そんな経験を積ませてあげたいなと思っています。そうすることで誰もが生きやすい社会ができるのだということを体感できるような学校であればいいなと思います。
 最後に、⑤誰かの役に立つ「活動的な仕事」を通してホンモノの仕事に取り組む体験学習であることです。「させてあげる」という考え方をやめて、子どもが当事者として関わることを大事にしていこうということです。教育学者の大田堯さんは、「今、子どもたちは出番のない失業状態におかれている」と指摘されています。確かに、子どもたちが実際にやってみたいことや社会とつながりのある活動というよりは、教師が体験させてあげようという思いから作られている学習が体験学習とされ、それはホンモノの仕事ではなく、あくまで真似事のようなもので終わってしまっているなと思います。させるではなく、子どもたちの内側から出てきたやってみたいホンモノの仕事を学習とつなげていけたらいいなと感じます。
 このあと、カトちゃんから公教育への提言があったのですが、少し長くなったので、それはまた次回書いていこうと思います。昨日の発表会の熱が冷めやらず、夢中になっての久しぶりの投稿でした(笑)読んでいただき、ありがとうございました。

※写真は講座のスライドより

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