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【書店歳時記③】哀と幻想のベストセラー主義
ベストセラーの季節
12月の書店は、まさに修羅場という言葉が相応しい状況になる。
たいていの書店で年間で一番売り上げ金額の多い月になり、季節商品(手帳、カレンダー、年賀状素材集等)販売の佳境で、クリスマスギフト需要が絶頂期となりレジ内でのラッピング作業が絶えることがない、、
贈り物の必要性がない人たちも、年末年始の休みは読書に好適な期間となり、休み前に本を買い込む人は確実に平時を大きく上回る。
そんな12月に入った瞬間に発表されるのが、年間のベストセラーである。
出版業界に限らず年末はこの手の企画がどの業界でも多いと思われるが、ネットワークの普及に伴う情報の即時性向上、情報量自体の飛躍的な増加に伴い年々形骸化の一途をたどってませんかね??
因みに今年、別な意味で話題になった下記の年末風物詩イベント。
元は出版物の販促イベントだったのはもう遠い過去の話で誰も覚えていないでしょうねー(笑)
と思ったら販促対象刊行物がまだ発売されててびっくりしました(笑)
imidasとか知恵蔵は20年くらい前に消滅してるんじゃなかな?
んでベストセラーって、なんの為に発表するの?
勿論、販促したり話題になりたいのだろうけど、果たして出版業界のベストセラーって話題になってるかな??
最近だと、ホントにでかい話題にまで昇華されたのはコロナの時の鬼滅ともうだいぶ前になるけどハリーポッターくらいじゃないのかな?
鬼滅とかハリポは販促手法のみで生み出せるムーブメントではなく、色々な条件が複雑に絡み合った結果であり、人為的に作りだすのは相当に困難だろう。。
とはいえ、このレベルでは無くても話題になったり書店に足を運ぶきっかけになるような、ベストセラーランキングになっているのかな??
詳しくは直近の年間ベストセラーを集めていただいた下記note記事をご参照ください。
さて、あんまりこういう言い方はしたくありませんが、最近の取次年間ベストセラーってほぼ法則化できます。
その年一番話題の小説(1,2点 本屋大賞率高め。。)
子供向け話題書、絵本(2点程度ポケモン関連、ゲーム系含む)
実用書(ダイエット、身体メンテ、料理レシピ、最近はメイク系も。。1,2点)
高齢者向け読み物(2点程度)
宗教書(学会&科学各1点、今後はどうなる??)
ほぼ、これらの5項目で完結してます。
今年のランキングから読み取れる唯一の変化は、今後YouTuberの収益化の一つに出版物刊行が加わるのかな??ってな程度に過ぎない。
売れた本は良い本なの??
さて、改めてなんだけど、こんなランキングでいまどきの、どの媒体で話題になるのか??
ランキングに入ってる本を読みたくなる人はどの程度いるのかな??
勿論話題になるためにランキングを偽造しろ!!という意図ではない。
そもそも『ランキング1位!』や『いま売れてます!!』ってゆうPOPや告知でどの程度の購入動機になったり、更なる拡販は望めるものなのかな??
いまどきそんな手法で拡販を図ってる業界って深夜の地上波TVやBS,CSでやってる高齢者向けの真贋不明の健康通販商品くらいではないかな??
そう、我らが書店業界はいつの間にか、
高齢者と子供たち(とその両親)をメインターゲットとした、
情報弱者向けビジネスと同じような構造の業界になっているのではないかな??
そして情弱向け商品なので、その品質もお察しください的なレベルの可能性も十分にある。
そして出版業界の経営者たちが、ほぼ情報弱者、経営弱者の領域展開に巻き込まれているので、他業界のマーケ手法や広告戦略、SNS活用なんかは一切認知できてないのが、悲しいけど現実なんですよねー
※書籍の広告、広報については稿を改めて深堀り予定。
WEB上での年末恒例ランキング
さて悲観的な話ばかりでもつまらないので、最後に世界的影響力のある年末恒例の書籍ランキングというか、リストを紹介しよう。
ご存じの方も多いかもしれないが『ビル・ゲイツの今年読んだ最高の本』シリーズ?だ。
Microsoftの創業者で相当な読書家としても知られるビル・ゲイツは、毎年年末ごろに「今年読んだ最高の本」を紹介している。
いつ頃から始まったのか、正確なことは書き手が調べた範囲ではわからなかったが、毎年年末に発表されるゲイツの推し本は英語圏だけでなく、日本含めて世界中の読書好きに注目され続けている。
※最近は年末だけに限らず、色んなタイミングで様々な区切りでの推し本を発表している。
純粋にゲイツが今年読んで面白かった本を紹介するだけの企画で、紹介冊数もまちまち、ジャンルレスで小説、ビジネス書から、科学、歴史、心理学、哲学はもちろん、料理やスポーツの本が紹介されることもある。以外なジャンルの本を紹介されると寧ろ気になってしょうがない(笑)
ゲイツの推し本企画が世界中でこんなに反響があること自体が、本の売り方や広報周知手法にいろんな示唆を与えていると思うのだけど、どうかな?
因みにゲイツの読書好きは在職中から広く知られていて、読書で得た知識知見をMicrosoftの経営に活かしていることを公言していた。
出版業界の経営者や取次のお偉いさんの皆さんは読書で何を得てきたのかな??
寡聞にしてあまり存じ上げないので、そのうち伺ってみたいものです。
では、また。
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