『そのへんをどのように受け止めてらっしゃるか』能町みね子が、話題の言葉の尻をとらえてネチネチ分析!
若者のあいだでは一般的なワードになった「語彙力」、とある著名人が著書のタイトルに採用した「死ぬこと以外かすり傷」。
チマタに流行る言葉や、有名人の発したあの言葉が、ふと気になるときってありませんか。クスっときたり、モヤっときたり。
そんな気になる言葉尻たちをとらえ、発信者の心理や背景を掘り下げてアレコレと分析した、愉快痛快な本をご紹介。週刊文春にて連載されている、能町みね子さんのコラム『言葉尻とらえ隊』をまとめた、『そのへんをどのように受け止めてらっしゃるか』です。
これがね、とっても面白いの!
なーんもしたくない、ゴロゴロしたい休日に、ポテチ片手に読みたい本ランキングでナンバーワンです(熊野ねこ調べ)。
全83ワードが収録されているのですが、ひとつめの話を少しだけご紹介。2020年に多くの人がザワザワした、高輪ゲートウェイについてのアレコレです。
面白そう!って思った方はぜひ、お手に取ってみてほしい。
『品川新駅(仮称)の特徴』
2020年に誕生した山手線の新駅、「高輪ゲートウェイ」。
駅名は一般公募が行われて、その募集要項に載っていた「品川新駅(仮称)の特徴」欄がうるさい!って話です。
・日本の伝統的な折り紙をモチーフとした大屋根
・障子を想起する「膜」や「木」等の素材を活用し「和」を感じて頂ける駅
・街の賑わいが感じられる駅ホーム上部の大きな吹抜け
・駅舎東西面に大きなガラス面を設け、「えき」から「まち」、「まち」から「えき」を見通せることで一体的な空間を創造
(JR東日本ニュース2018年6月5日より抜粋)
何も考えないで読むと「ふーん」って感じですが、よくよく考えると、何かおかしい。こういうのって、駅周辺の情報とか、土地の歴史とか、そういうのを書くもんじゃないのか。これだと、建物の名前を募集しているみたい。
というのも、駅舎の設計が、新国立競技場の設計などを担当した有名な建築家の、隈研吾さんなんですって。「それがそんなに嬉しいのかね」っていう能町さんの毒にクスっとなる。
でね、この話すごくて。
何がすごいかって、能町みね子さん、執筆当時はまだ駅名決定前だったにもかかわらず、駅名を的中させているのです。
多くの人の「高輪でいいんじゃね?」の思いを無視し、新駅が「なんとかゲートウェイ駅」とか「しながわ(きっとひらがな)何とか駅」とか、「隈研吾記念駅」とか(それはないか)になることはほぼ確定ですね。
当たってる!すごい。
この手のコラムは、毒が強すぎると胃もたれしたりするのですが、能町さんのコラムは、的を射た鋭い観察眼と知識で読みごたえがあるので、どんどん読んじゃう。
他のコラムも、時事ネタや流行語など、バラエティに富んだワードのピックアップで楽しませてくれます。一つひとつは短いので、移動中のお供にいかがでしょうか。
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