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Photo by
yokopie
最後のマスカラ
「マスカラを使うのもこれが最後」女はそう言ってマスカラをつけ、ばっちりメイクで向かったのは断崖絶壁である。
ここは毎年生きる希望を失い、人生を断ち切る人が飛び込む有名な場所だ。おそらく数十メートルはあろうかというとてつもない絶壁で、足を滑らせばほぼ即死だろう。
女はその断崖のすぐ前に来た。間もなく日が暮れようとしている。太陽が正面に見え、もうオレンジ色をした光を女に向けて照らしながら、水平線に沈もうとしていた。足の下には激しくぶつかる白波の音。
「ああ、日が沈む。これまでの私の人生はもう終わりね」誰もいないのにひとりで口を開く女。最後の時を前に思わず口元が緩む。そして女は手に持っていたマスカラなどの化粧道具を断崖から捨てた。
「さ、今から生まれ変わるために行くわよ」女は大声でそう言うと、180度体を回転させ断崖を後に歩き出す。向かう先は病院。
女は今から病院で性転換手術を行い、念願の男になるのであった。
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