シュピナートヌィ・サラート・ス・ヨーグルタムの休日 #同じテーマで小説を書こう
「ん? え、あ!」「おい真理恵、大丈夫か!ずいぶんうなされていたぞ」
私は悪夢を見ていた。そしたら横にいた彼・一郎に起こされる。
「何の夢を見ていたんだ」「え、あ確か、私車の中にいて、そこは広いところ。そしたら見たこともない白くて不思議な形をした飛行機が見えたの。新しい米軍機?と思っていたら、その飛行機。少し離れたところの上空で止まって、そのまま地上に垂直降下。それからは全く覚えてないの」
一郎は真剣な表情のまま「そうか、良くわからないが『シュピナートヌィ・サラート・ス・ヨーグルタム』という言葉を何度も繰り返して呟いていた。何かの呪文かと気持ち悪くなって、それにうなされていたから起こしたんだ」
「ごめん、本当に覚えてないの。その『シュピナート』なんて、私本当に言ってたの」私の問いに彼は頷く。
このような聞きなれないキーワード。無意識に知った何かが、”言葉”として発したのだろうか? 記憶が無い私は、聞いたこともないキーワードが、どうしても気になってしまう。いつもならスマホでキーワードを検索する。しかし今はできない。ここは電波の届かない山の中。もちろんWifiもない。実は彼と山の中でのキャンプに来ていたのだ。
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私は無農薬野菜の小さな農園「コスモスファーム」を、ひとりで始めてから、今までほぼ休みなしに働いていた。でも先月から大学院とバイトという2足のわらじでがんばる彼が、私の農園で一緒に住むようになったの。
少し気持ちに余裕ができたからと思い切って、休日を取ろうということになって、農園から離れて1泊しようと山の中にあるキャンプ場に来た。どうせならネットの無いところで、自然を感じながら一晩を過ごそうということで、バンガローで泊まったのに。それが仇になるなんて。
到着してご飯食べたらすぐに眠くなる。いつもより早く寝たら、悪夢と聞いたことの無いキーワード。
私は寝言のようにつぶやいていた「シュピナートヌィ・サラート・ス・ヨーグルタム」とは何なのか? 本当に気になって目が完全に冴えてしまった。
「私、大丈夫かしら? そんな聞いたこともない言葉の呪文なんて。気味悪いわ」私は思わず彼の腕をつかんで体を寄せた、彼は心配そうに私の背中に手を置いてくれる。温かい手のおかげで少し気持ちが落ち着いたわ。そして耳元で呟くの。
「真理恵。たぶん、本当に久しぶりに農園と離れたところで泊まったから相当疲れてたんだろう。食後に予定していた天体観測をすることなく、すぐに眠っていたし。だから俺もすぐに寝た」
「ごめん、天体観測楽しみだったのつぶしてしまったわ。でもご飯食べたら急に眠くなって、いつもなら作物の事が気になって仕方がないのに」私は身体を小さくして謝る。天体観測が趣味の私たちなのに、とんでもないミスを犯してしまったから。
「またそれだけ毎日気を張っていたんだな。だったら良い休日だったんだ。『シュピナートヌィ・サラート・ス・ヨーグルタム』は、明日帰ったら、すぐに調べよう」
「でも、そのキーワードを検索して出てこなかったり、変なサイトが開いたりしたらどうしよう」
私が恐れて、硬い表情になっているのを見て笑う彼。
「ハハハハ。そんなの気にするな。あのキーワードが黒魔術だろうが呪いの言葉だろうが関係ないよ。俺はむしろ『面白い新しい言葉』を知ったと思って嬉しいけどな」
いつもの彼の余裕たっぷりの温かい言葉。さすが哲学を研究しているだけのことはある。
「目が冴えているといったね。だったら今から、バンガローの外に出よう。予定が変わったけど、これから楽しみにしていた天体観測だ」
「え、夜中よ、外に出るのまずくない」
”圏外”と表示されている、スマホの時計を見ると、ちょうど3時であった。
「なあに、大声を出さなければ大丈夫だ。他の人は眠っているだろうし、電気も消えているから、光害もない。むしろ今見たら満天の星空が見えるぞ」
と彼は嬉しそう。「あ、そうね。今無理に寝る必要ないんだ。今から星空見よう」
私はそういうと、勢い良いよく起き上がり、彼と一緒にバンガローの外に出るのだった。
こちらの企画に参加してみました。
(「シュピナートヌィ・サラート・ス・ヨーグルタム」を調べずに執筆ということだったので、調べてませんし知りません。これ知っている方が見たら。驚くかもしれませんが、それについて予めご容赦ください)
※こちらの企画、現在募集しています。
(エントリー不要!飛び入り大歓迎!! 10/10まで)
こちらは62日目です。
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シリーズ 日々掌編短編小説 228
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