#呑みながら書きました その内容は?
いつもとは違うアルコールを飲もうと思ったとき、それを購入した数日前を思い出す。春の日差しが温かい。サクラのピンクが現れ始めた昼下がりのこと。寒さが緩んだ風が舞っている。下校途中であろうか? 偶然見たランドセル姿の児童たちとすれ違う。最近はいろんな色・デザインのランドセル姿が見られるて華やかだ。そしてこのとき手に持っていたものは、次の休日に飲もうと購入したスペイン産のスパークリングワイン。
そして当日の少し前から氷水に浸しておいた、スパークリングのボトル。汗のような水滴がついていた。さて外も暗くなったので、飲もうとボトルを氷の水から引き揚げる。タオルを用意していたのでボトルを拭きとった。上部の銀紙のようなキャップシールをゆっくりと剥がしていく。アルミホイルの破れ具合。柔らかいがしっかり重みのようなものを感じている。そしてコルクとそれを固定している金具『ミュズレ』が、むき出しになった。
次にミュズレの止めていた金具を緩めていく。実はこの段階で少し緊張が走る。他のコルクのワインやスクリューキャップと違い、スパークリングワインは内部の空気が圧縮されているのだ。だから突然跳ねないか気になってしまう。片方の親指で押しながら先端を固定。そしてもうひとつの手を使いミュズレの金具を外していく。少しでも変な衝撃を与えれば、コルクが勢いよく飛びやしないかと緊張が増してきた。
いよいよ最高レベルの緊張。耳の奥から心臓の鼓動が聞こえている。それはコルクを開けるとき。飛び出す恐れと、その後から噴き出す可能性。過去の失敗が脳裏から蘇る。だから極端に恐れているのだ。念のため先ほどボトルを拭きとったタオルで頭を押さえる。そのままゆっくりとボトル側を回しながら開けていく。
少しづつコルクの長さが増している。そしていよいよ開きそうな予感。コルクの下からの空気圧が強まったことが、コルク上部を抑えている手を通じて伝わっている。緊張が最高潮に達してきた。さらに慎重にコルクをゆっくりと開ける。いつもより秒の間隔が遅く感じる錯覚。そして突然、蒸気が漏れ出るような空気音が聞こえる。こうして無事にコルクの蓋が取れた。さらに液がそのまま吹きあがる様子もない。
これで一安心。いったんボトルをその場に置いた。ここで専用のグラスを用意すると、そのままゆっくりとスパークリングワインの液を注いでいく。
9割程度を注ぎ終えてからスパークリングの液をじっくり眺めて見る。やや緑がかったようにも見えるクリーム色をした透明の液体。真ん中には小さな泡が、秩序ある姿でグラスの底から水面に向けて上昇する。
その姿は『美しい』以外の言葉が浮かばない。フランスのシャンパンには『ペルル』『コリエ』などという名前がついているということを思い出す。
あたかも催眠術にかかったかのような不思議なひととき。ほのかに鼻から感じるスパークリングからのアロマもたまらない。
これは映画のワンシーンの瞬間。ひょっとしたらカラー映画より白黒映画のほうが合うのかもしれない。同じ泡の酒なのにビールではありえない空気が漂う。グラスを利き手で持ち上げ、ゆっくりと口に向ける。飲みやすいようにグラスを斜めに向けるのと並行して口を開けた。そのまま液を口の中に入れていく。その瞬間、唇から感じられる程よいグラスの厚みですら、味に深い影響を与えているようだ。
こうして口にスパークリングワインが入って行く。スパークリング本来の冷たい触感。そしてアロマ以上に口の中の穴から鼻に逆流して感じる華やかなフレーバー。さらに舌や口の中を程よく刺激する泡の心地よさがたまらない。やがて味覚が反応する。ブドウ由来と考えられる甘味と辛味が交錯しながらも、アルコールと思われる成分が見事に調和の役割を果たしていた。だからハレーションなどありえない。一言で表現できない旨さ。そして炭酸の刺激が、さらにその良さを引き立てているのだ。
思わず目をつぶり視覚を遮った状態で味わう五感。ようやく納得の頷きをすると、喉を動かしながら液を食道にいざなっていく。
ビールや日本酒では味わえない不思議なクオリティの高さが、スパークリングワインにはあった。実はこのときアルコールを飲みながら、何かを執筆しようと考えていた。
普段ではないような発想が浮かぶのではと期待している。しかしそれは大きく裏切られた。スパークリングだろうがビールだろうが、アルコールが体内に入ると書けない。頭から何も浮かばないのだ。それでも頑張って目をつぶり無心になろうと深呼吸。頭からアイデアを強引に絞り出す。こうしてようやく頭に浮かびそして書けたもの。
それは次のものであった。
『今日3月21日はツイッター誕生日か。noteの誕生日っていつだっけ』
こちらの企画で遊んでみました。
実際にスパークリングワインではなく、他のものを呑みながらです。ただ飲んでいるとスパークリングワインを開けて飲んだことを思い出し、思わず創作で書いてしまいました。
「画像で創作(3月分)」に、KIGOさんが参加してくださいました
春分の日という祝日の風景。今では珍しい国旗を掲げている家が見える中で感じたもの。かつてのバスの思い出に浸りながら、回数券を握りしめて乗りこんでいく田舎の雰囲気。春の味わいを感じられました。ぜひご覧ください。
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シリーズ 日々掌編短編小説 425/1000
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