剃るべきか、剃らざるべきか。それが問題だ。
剃るべきか、剃らざるべきか。それが問題だ。と悩んでいるのは、高校生の尾道拓海である。それは中学生の頃から生えはじめた髭のこと。これまでは生えてくると必ず剃っていたが、この夏休み思い切って剃らずに伸ばしてみることにしたのだ。
「イメージが変わったな。大人っぽいぞ」拓海は鏡を見て自分自身に酔いしれる。おそらく二学期が始まれば剃らないといけないだろう。校則には髭のことなど書いていなかったが、髭を伸ばしている同級生などいない。夏休み中は制服も着ないので、髭を伸ばしたまま私服姿で街を歩いても高校生とわからず、大人として見られているような気がしているのがうれしいのだ。
だがここで拓海は悩む。「ついに明日帰ってくるのか」拓海には、幼馴染で高校生になる前後から付き合っている彼女・今治美羽がいる。彼女は夏休みになった早々から海外に語学の短期留学と称して出かけて行った。1ヶ月弱の短期留学を終え、明日日本に帰ってくる。いつもメッセージでやり取りしているが、髭を生やしたままの顔写真を美羽に送っていない。
拓海は元々写真を撮って送るとかそいうのが好きではないし、美羽もそのことを求めていないのだ。だから拓海が髭を生やしていることを美羽は知らない。
「あいつ、どんな反応をするだろう」明日は空港で迎えに行くことは決まっているが、それが決まってから悩みだした。拓海としてはギリギリまで髭を剃りたくない。だがこの髭を生やした状態を美羽が見てどう反応するかだ。「こんな、拓海君なんか嫌」と言われたらどうしよう。
「最悪ふたりの関係にひびが入らないだろうか」と悩んでいた。「といっても、逆のこともあるし」実は髭を生やした拓海を見て美羽が嬉しそうに「拓海君、似合っているわ」と、満面の笑顔になって抱き着いてくれるかもしれない。今の拓海にとってそうなって欲しい願望がある。
「でも、明日の朝までに」拓海はこうして悩む。剃るか、剃らざるか。
(本文800字・句読点も含む)
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