究極の趣味
夫の父は自分で木を使って物を作るのが得意だ。
そのクオリティには驚くものがある。木の独特なラインをきれいに表現したデザイン性と加工の素晴らしさ。
誕生日や実家に行った帰りにプレゼントとしてくれるのだが、その技術に毎回びっくりする。
ある時、「とっても素敵だから、売ってみたらどうですか?」と聞いてみた。
こんなに素敵な作品なら、どこに行っても売れると思う、と本当に思って言ったのだが、夫の父はどこか照れくさそうに、でも真顔で言った。
「これを作るのはとにかく楽しい。大切な人が使うから、それを思い浮かべて、ただ他は何も考えずに集中して作りたいときに作る。疲れた時には作らない。作るのが楽しい時だけ作る。それがいいんだよ。」
「ビジネスになったらその途端に作らないといけない、売らないといけない、となってしまう。それは全然楽しくない。俺は楽しみながら作りたい。趣味だからね。」
私だったら楽しく作れるものがあるとしたら、それを売ることでいろんな人の手に渡って、もっと楽しくなるんじゃないか、って思うだろう。だからこそ予想しなかった答えにびっくりした。
どっちがいいとか悪いとかじゃなく、彼の信念がそこにはあった。
私にはそんなに究極の趣味はない。
そんな風に堂々と言い切れる究極の趣味を持つ夫の父に憧れるのだった。
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