汚れた血:走って走って走る。35ミリフィルムの粋
35ミリフィルムのざらざら感や雑音も愛おしかった。
”人質と一緒だから人質を救いたかったら、発砲はよせ。”
警官に包囲されたった一人で逃切る、絶体絶命の名セリフ。
(心の中で)拍手してしまった!アレックス、渋やばいぜ。
走る名シーン
アレックスは走る
デビッド・ボウイのModan Loveに合わせて、夜の石畳を疾走するアレックス。追いながら伴走するカメラが途中、ちょい追い越してしまうところも可笑しみあり臨場感あり、自分史上最高に好きだ。リーズも走る
逃走する一味のスポーツカーを、アレックスの元カノがバイクで追いかける。ようやく追いついたリーズに、どうだ、スピードの達成感がわかったか、と訊ねるのだが…アンナも走る
目をつぶっても見えるかどうか試す…と息絶えるアレックス。静寂でおわるかにみえたあとの、感情があふれだし走り出すアンナ。飛行機のように両手を広げていつまでも走る姿が目に焼きつく。
昔見たときはこんなに顔アップのショットが多いと思わなかったが、アンヌ役ジュリエット・ビノシェの陶器のような肌のきめが美しく、窓ガラスや鏡のなかに彼女を発見し、はっとその神々しさに息をのむアレックスの気持ちが伝わった。やはり、監督自身が彼女の魅力をもっとも知っていたにちがいない。ぼさぼさ頭、ハナをかむ姿ですらキレイだ。
そして、私が気づかなかった色味の妙について、Nanaoさんが書かれているので、こちらもぜひ一読を。
今まで長編6作品しか撮ってないレオス・カラックス監督。
アレックスことドニ・ラヴァンの三部作は「ボーイ・ミーツ・ガール」と本作「汚れた血」と「ポンヌフの恋人」で、破天荒かつブサ男だが憎めないヤツはジャンポール・ベルモンドに通じる。35ミリ三作品のうち、未見の「ポーラX」、こちらは早逝したギョーム・ドパルデューの主演作で、来週見るつもりである。
WE MEET LEOS CARAX!
大阪シネ・ヌーヴォ 6/18-7/8
汚れた血 Mauvais Sang 1986年フランス
★★★★☆ 4/5
監督・脚本:レオス・カラックス
撮影:ジャン=イヴ・エスコフィエ
出演:ジュリエット・ビノシェ、ドニ・ラヴァン
http://www.cinenouveau.com/sakuhin/leoscarax2022/leoscarax2022.html