ふたりの津村さん。土恋/浮遊霊ブラジル。 (芥川賞,または過去に受賞した作家さんの小説を読む)芥川賞ぜんぶ
はじめての街を歩き、はじめての本屋を発見したら本を一冊買う。
幼いころには町の商店街に必ず本屋が一軒あった。小学生のドリルや中学生の参考書、毎月送られてくる「科学となんとか」も月刊の少年漫画・少女漫画もその本屋さんが受け取り場所で、今月号の付録は何かなぁと届くのを心待ちにしていたものだ。
そんなちいさな本屋さんがどんどん閉業に追い込まれる現状をニュースで知り、ちっぽけな一歩だけれど、マイルールに従いはじめての本屋で本を一冊買うのを実践している。
さて、今年の夏は京都に毎月行く用事があり、京都で見つけた「ふたりの津村さん」の小説を読了した。
浮遊霊ブラジル
第140回芥川賞 2009年「ポトスライムの舟」 津村紀久子 の短編集
『地獄』が面白くてゲラゲラ笑い転げた。
バス事故で地獄に落ちた女ふたり。新設地獄だから人間ひとりに鬼一匹がつく。かよちゃんは『おしゃべり下衆野郎地獄』で一生(もうしんでるけど)喋り続けなければいけないタスクをこなし、私は『物語消費しすぎ地獄』で一日数回いろんな物語の設定で殺され続けたり、最終頁が破られたミステリー小説を延々と読み続けさせられたり。
職業が女性作家の設定だけに、オチのイタさがなまなましい!
タイトルの「浮遊霊ブラジル」は第27回紫式部文学賞 受賞作
こちらの津村さんは人間観察眼にすぐれ、いくつもの素材をあざやかに切取り、噛めば噛むほどえぇ味のでる、おばんざいを思わせる作家だった。
#芥川賞ぜんぶ 32冊目/112
土 恋
第53回芥川賞 1965年「玩具」受賞 津村節子 の女性一代記
新潟県佐渡島から越後安田村の窯元・北野窯に嫁いだみほ。
婚礼後すぐに、義母の病と介護、義父の急死と残された借金、初めての出産、台風や地震などの天災などが、次々とみほを襲う。苦難を乗り越え、女として、母として、妻として、土と窯を慈しみ、夫をささえたくましく生きるさまはNHKの朝ドラみたいで、一気読みしてしまった。
文庫版のあとがきを読むと、こちらの津村さんはもともと焼き物に造詣が深い作家さん、現在95歳で執筆は続けてらっしゃるとか。
私自身も焼き物が好き。ふだん使いの民芸の器にひかれるタチだから、物語の中の土や窯の描写がすばらしく、気分が上がった。越後の窯業一家には実在のモデルがいるという。いつか全国の個性ある民芸陶器の里を訪ねて回ってみたいものだ。
#芥川賞ぜんぶ 33冊目/112
古本屋さん
● 京都の銭湯めぐりの帰りに何気なく寄った店先で、
この名前はひょっとしてと手に入れた津村紀久子さん本
灯商店 サウナの梅湯から歩いて30秒、高瀬川そい
古本と雑貨の蚤の市を準備期間に寄ったのでラッキーだった。
●京都の用事あと、乗った市バスが逆回りで小一時間も揺られ、
京阪・三条駅に辿りついた先に発見した古書店 キクオ書店。
店頭ではらんまんの牧野富太郎さんの植物画(版画)が飾られていた。
こちらで津村節子さんを発見。京都は学生の街だから古書店も多く、
京都に来るたび書店を探す のが楽しみになっている。