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DIVA ディーバ ミックス・カルチャーの宝石箱 ジャン.J.ベネックス監督追悼

若いころ、フランス帰りの男性とつきあっていたことがある。
ボルドー赤ワインのおいしさを私に説き、シトロエンに乗って神戸にドライブデートしたり。当然カーステレオから流れるのはフレンチ・ポップス。
しかし、映画の趣味は決定的にちがっていた。…そのココロは最終章で…

※以下ネタバレを含みます。未見の方はご注意ください。


1981年ディーバは早すぎた?

2022年1月15日死去された、ジャン・ジャック・ベネックス監督。私がそのニュースを知ったのは数か月後、なぜか追悼上映がなかった。デビュー作の「ディーバ」そして三作目の「べティ・ブルー 愛と激情の日々」以外、日本でウケなかったせいなのか、近年の新作映画がなかったせいなのか、本当の原因はわからない。「ベティ・ブルー」と二本立て上映すれば興行的にも良いと思うのだが、大人事情があるのだろう、きっと。
当時もカルト的に若者にウケたが、ハリウッド作品とは一線を画す作風にちんぷんかんぷんな人も多かったにちがいない。

映画ディーバの魅力は一言ではあらわせない。

サスペンスとミステリーとアクションとロマンス。
ジャンル分けできない未体験映像が衝撃で、いま見ても斬新なアイディアに散りばめられている。さすが、80年代ネオ・ヌーベルバーグ三監督の雄だ。
ちなみに、その頭文字をとって”BBC”とよばれた三人はそれぞれの個性が際立ち、フランス映画の新時代を走っていた。
B ジャン・ジャック・ベネックス監督
B リュック・ベッソン監督  
  若き日の自伝では、もしトラブルで監督を
  途中降板した際はジャン.J.ベネックス監督に
  なら任せて託したい、と書いていた ↓『恐るべき子供』
 C レオス・カラックス監督

予告編 昔といま

日本公開当時(1981年)の予告編 はこちら
昔の予告編がおそろしくエモい。アクションシーンに字幕がかぶり、男声ナレーションが絡むところなんて昭和レトロぷんぷん、大好き。
ぜひ2022年デジタルリマスター予告編と見比べてほしい。

ディーバ あらすじと物語

郵便配達人ジュールは、オペラ・とくにソプラノ歌手フェルナンデスの大ファンだ。レコード録音を拒む彼女の歌声を高性能録音機で盗み録りし、カセットテープに音源を残す。売春組織から逃走中のナディアは、闇のボスを告発するカセットテープをジュールのバイクかごに隠し、その直後2人組の殺し屋に殺されてしまう。台湾人2人組は盗んだ音源で海賊版レコードを製造しようとたくらむ。殺し屋2人組と刑事2人組はジュールのもつ闇組織の証拠カセットを追う。
2つのカセットテープをめぐる追跡者、三つ巴の奪回作戦に、偶然出会った謎の男とベトナム系少女が絡んでくる。果たしてディーバ(歌の女神)の音源は守られるのか。

美術がとにかくイカスのだ!
東洋的でも西洋的でもなく、未来のような過去のような、それまで観たことのない世界観で、思わず”ほぉぉー”とうなる。
●ジュールの部屋:打ちっぱなしの廃倉庫、貨物専用エレベーター 
●謎のおとこの部屋:中央にバスタブ、海を連想させるオブジェ、
 ジグソーパズル、同居の少女はローラースケートで移動するほどの広さ

きききぃー、だだだだだだだだっ。アクションシーンもすごい!
地下道の階段、メトロへの乗入れ、エスカレーター、バックミラーに映る追っ手、上下の段差をものともせず、追跡者を交わすため、ジュールはバイクで突っ走っる。手持ちカメラでブレブレの臨場感がハンパないのだ。
想定外のストーリー展開が鮮やかで最初から最後まで釘付けだった。

ほかにもサブカルチャーとして、クラシックなシトロエン(車)、レコード屋、sonyウォークマン等、当時のライフスタイルが昭和世代には懐かしく、Z世代にはレトロかっこよく映るはずだ。

今回のポスター トップ写真は当時のパンフレットより


DIVA ディーバ  1981年 フランス
監督:ジャン・ジャック・ベネックス
脚本:ジャン・ジャック・ベネックス、ジャン・ヴァン・アム
出演:
ウィルヘルメニア・ウィンギンス・フェルナンデス :シンシア・ホーキンス
フレデリック・アンドレイ : ジュール
リシャール・ボーランジェ : ゴロディッシュ

どーでもええが大事なこと

まだ近くの映画館で上映しているならぜひ見てほしい。そして、身近な人とどこにいちばん惹かれたかを話し合ってほしい。もし、話が合わなかったとしても映画の見方は、ひとそれぞれ、正しいもNGもないのだから、みんな違ってみんないい。腹をたてたり、馬鹿にしたりしないで。

ー冒頭のフランス帰りBF余談ー
彼と一緒に「ディーバ」を見た私は夢中になった。
地下道を逃げるシーンもすごかったし、オペラを歌うシーンも鳥肌たったし、パンキーな殺し屋のひとり“スキンヘッド”が死ぬ最後にイヤホンが外れ、流れた曲が「禅の音楽」だったのが意外だったよね、と興奮気味に話した。
一方、フランス帰りBFは字幕ではなくフランス語で見ていたため、スキンヘッド殺し屋が「●●はきらいだ」と何に対しても悪態つくのを面白いと思い、外れたイヤホンの音楽が何かを覚えてなかった。

 「嘘?ソコ大事でしょ?!」 

ほかにも、私の視線と彼の視線があまりにも違いすぎたため、ちょっと険悪になり、一緒に来たのに帰りは別々に帰った。
そのBFとは「ディーバ」以外でも映画の話が全然かみ合わず、若かった私はBFと一緒に映画を見に行くのが嫌になった。この恋は終わった。

月日は流れ31年後、デジタルリマスター版を再鑑賞した私は、パンキーな殺し屋がずっと聞いていたのは曲の正解を知る。
――実はシャンソン、日本でいうところの演歌だった。

え!マジやっちゃった!仲違いしなくても良かったやん。(涙;; 

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