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熱は伝わった!
先日、書いた記事。
読んでくださった皆様、ありがとう。
スキをおしてくださった方、ありがとう。
そしてコメントを寄せてくださった方、ありがとう。
実はこの記事は書こうか書かまいか悩みました。
今まで、そういう記事は何度かありました。
一番懸念していたのは「これを読んだ人を心配させてしまうかもしれない」ということでした。
置かれている状況に悩んでいたのは事実ですが
私自身はけっこう平気というか、日常的にあることなので、心配しなくても大丈夫よ〜と自分では思っていて、現状の確認みたいな意味合いで書いたのです。
そしたら、その事が思っていた以上に伝わっていたことに驚きました。
コメント欄で、それを顕著に感じたのです。
「私をフォローしてくださっている方たちってすごい人ばかりだなぁ」とあらためて、自分の置かれている状況に「幸せ」を感じました。
(あとは、オススメしてくださったコッシーさんとのやり取りは、お互いに思っている事を書かなくとも伝わることに驚いたし、サポートして頂いて、あえてオススメしないゆうゆうさんのメッセージに私は大変励まされました)
皆様に、感謝しております。
でも、やはり心根の中では、どこか心配をしている気持ちというものも感じましたので、
「焚きつける」のその後の話を今日は書いてみたいと思っています。
読んで少しだけほっとしてくれたら幸い….かな?
昨日、私は再びこの方のところへ訪問に行かせてもらいました。
お家に向かうのも決して気が重かったりとかはなく、皆さんに「焚きつける」の記事で頂いた「熱」をパワーにして、呼吸もしっかり吸ったり吐いたりして、リハにのぞみました。
実は私はけっこう、悔しがり屋なんです。
(知られているかもしれない….)
同じ轍は踏まない!
前回と同じ失敗はしない!
私の本気を見せたる!
と思いながら、全くアプローチを変えることにしました。
それは、ナラティブを聞くこと。
(このアプローチは作業療法士の原点だと思っています。)
その人の生きてきた歴史、物語を聞くことは、非常に大切な作業の一つです。(私も仕事中の中で好きな時間の一つです。)
お部屋に向かうと、利用者さんは先週より目を閉じておらず、挨拶もしっかりして下さいました。「外は寒いでしょ?」と私を気づかう発言も聞かれています。
これはチャンス!
そして認知症がある事がこの件に関しては良いように作用しているのです。なぜなら、私と先週格闘したことは彼女自身は覚えていないのです。
認知機能の低下は負の側面ばかりではないなと思う事が臨床の中では感じる事があります。
毎回リセットされる関係性だからこそ、私も変に気を使って先週のことを話さなくとも良いのです。
「今日は〇〇さんのお話を聞きたいなと思っていますがいかがですか?」
「ああ、ええよ。」
しっかり目を開いて私を見てくれています。
彼女はリハの時は娘さんが補聴器をつけてくれていますが、やはりお耳の聞こえが悪いので、私も話す時は耳元で低い声で伝えて、その後顔を離して、理解されているのか、伝わっているのか、彼女の顔を見て判断します。
「〇〇さんの生まれはどちらでしたっけ?」
「九州!九州の△△!」
私はこの△△の地名が聞き取れずに苦戦していましたが、この会話を隣の部屋で聞いていた娘さんがはっきりと地名を大きな声で教えて下さいました。
助太刀に感謝。
私はさっそく聞いた地名をタブレットで検索して地図を広げます。地図の画像を見せると利用者さんの顔がほころびました。
「よく知っとるなぁ。私はこのあたりで生まれたんだ。」
「なるほど、海の近くなんですね。港があるのかな?」
「そう、港がある!いいところだよ。昔は天皇陛下も来てくれたんだ。」
私は地名と共に「昔 写真」と検索のワードを打ち込みました。すると、その土地の昔の駅の写真、港の写真などが出てきます。大きな橋の写真も出てきました。
彼女に見せると、とても素敵な笑顔になり、昔の思い出話をしてくださいます。
とはいってもそれほど深い話はでてきません。いつ頃九州からこちらに引っ越されたのかも覚えていません。会話は繰り返しの話も多いです。それでもいいんです。
私は繰り返し彼女の話を聞きます。
動画も検索すると、この地域のことをまとめてくれている方がいらっしゃり、youtubeでその歴史をなぞらえます。
調べていくと確かに、天皇陛下がいらっしゃった時があるという記述が出てきました。
大きな橋が完成した際に訪れたとのこと。時期は昭和の中頃。彼女に伝えると「そうそう!この時来たんだ!」と嬉しそうに話して下さいました。彼女自身の記憶も補足できたようです。動画を作ってくれた方に感謝。
たっぷり話す時間を取ったあと、私は「じゃあ、このあと少し足を動かしても良いですか?」と聞くと「ええよ。」と答えてくださり、時間的には前回よりストレッチにかける時間は少ないものの、暴言を吐いたり、攻撃してきたりといった行動は全く見られずに、動かす事ができました。
時間になったので、彼女にそのことを伝えると「何もお土産をもたすもんがない!」と言い始めたので、お土産はいらないことを伝えました。「また私に教えて下さい。私は九州に行ったことがないので、とても勉強になります。」と話すと「いつでも話すよ!」と力強くおっしゃって下さいました。
私たちの会話を聞きつけた娘さんが隣の部屋から出てきました。
「今日はあまりストレッチにかける時間自体は少なくなってしまったが、本人が嫌な感情を残してやるよりも、穏やかに過ごしてもらいたかったので」と私が伝えると「とんでもない!母も話を聞いてもらってすごく良かったと思います。ありがとうございました。良かったです。」とおっしゃって下さいました。
今回のこと。
決してこれで全てが解決するということではありません。
大成功とも思ってもいません。
今日の場面はある一コマであり、また、来週には記憶はリセットされてしまうのです。
まだまだ彼女の日常は続いているし、娘さんの負担は変わってはいません。
けれども、認知症の方にも必要なのは以前の記事にも書いた「快」の体験であると思っていて、その時感じた感情というものはなくならないと思っています。
自分の存在を認めてもらえて嬉しい。
自分がここにいること。
自分が誰かの役に立つこと。
そんな時間が積み重なることを、私は提供したいと思っています。
帰社してから、会社の月一の全体ミーティングの際に、彼女のことを報告しました。
私と後輩が彼女から暴言や暴力を受ける可能性が今後もあること。ケアマネージャーには現状は伝えてあること。契約書類に「暴力を受けた際には利用を中止してもらう」と書かれているのに、今後もリハを継続することは可能なのかどうか....。
ナースの方からの意見はこうでした。
「彼女は認知症があり、明らかに始めから故意にスタッフを傷つけようとしてやっていることではないと思うので、彼女だけ特別待遇とも思わない。そして、スタッフ側が『ハラスメントだ!』と強く感じて精神的に辛いなら契約終了でかまわないと思う。」
私と後輩は「娘さんが孤立する事が心配である。」「私たちが行かないともう誰も来てくれないことを娘さんが心配されている。」
「まだまだ続けたいと思う。」と伝えました。
情報を共有できて、リハ継続にもスタッフ間で共通認識が持てたことに私は安心しました。
今回のことは、同じ事業所の中で仲間がいること。
そしてnoteで皆さんから分けてもらった
「熱」
で自分自身を焚きつけることができたこと。
そんなことが私の原動力になりました。
相手を理解できないものにするのは簡単。
相手を悪者にするのも簡単です。
その方が気持ち的には楽になります。
けれども、その人が失ってしまったことば。
積み重ねてきた歴史。
まだまだ見たことのない表情を探したり、引き出したりすることは
とても楽しいことだと思います。
私が仕事をしていて感じる喜びやエネルギーは、そういったところにつまっています。
これからもはたらくことで、自分自身を生かしていきたいと思っています。
今回は報告の記事でした。
読んで頂いた方、熱を分けてくださった方、ありがとうございました。
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