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【読書9】2024年上半期に印象に残った5冊(+α)

2024年も半分終わったってよ!ってことで上半期に読んだ本の中から特に印象に残った5冊を選んでみたい!
と思ったら5冊に絞り切れず7冊になった…

千早茜著「さんかく」

恋はもう要らないという30代独身の夕香(食いしん坊の料理上手)、そんな夕香と食の好みがどんぴしゃりの正和、食への興味は薄く研究一筋の正和の彼女・華という3人の語りで物語は進んでいく。
夕香と正和はお互いに恋愛感情は抱いていなかったが食を通じて意気投合、ひょんなことから町家でルームシェアを始めてしまう。繰り返しになるがふたりの間には恋愛感情はない!実際に何ら怪しい関係もない!したがって浮気ではない!が…正和は彼女の華にそのことをなかなか言い出せなくて…

ストーリーもさることながらとにかく描写が素晴らしくて読書しながら五感がグイグイ刺激される。美味しい香りはもちろん、何かを食べたときの食感だとか、京都のピンと張り詰めた冬の空気だとかそんなのもひしひしと伝わってくる。
そして日頃なかなか言語化できないもやもやした感覚がズバッと表現されていたりして、これまたスッキリ気持ちいい。

「心は華にある。身体だってそうだ。(中略)けれど、生活はあの町家にある。穏やかで居心地の好い暮らしがある。じゃあ、感情は?生活に宿るのか、心に宿るのか。」

さあ!3人は一体どんな道を選ぶのか?

大白小蟹著「うみべのストーブ」

「このマンガがすごい!2024」オンナ編第1位!を受賞した大白小蟹さんの初単行本。表題作をはじめ7つの短編が収録されている。

台詞がいい!台詞がないコマもいい!上手く語らせ、でも語らせ過ぎず、最後は短歌で〆る。失われたものを、形のないものを、言葉に頼り切らずに表現した秀作。マンガってすごいね。

中島岳志・若松英輔著「いのちの政治学」

「なぜ日本の政治家は、ペーパーを読み上げるだけで、表層的な政策論しか語れないのか」という問題意識の下、かつて「コトバ」を持ち、「いのち」と向き合った5人のリーダー(聖武天皇、空海、ガンディー、教皇フランシスコ、大平正芳)について語り合い、学びを得る政治学者の中島岳志さんと随筆家の若松英輔さんの対談本。

薄っぺらい言葉しか話せない現代のリーダー(特に政治家)に中島さん&若松さんは危機感を持ちつつ、そんなリーダーしか選べない(そもそも選ぼうとしていない?)国民ひとりひとりにも警鐘を鳴らす一冊。折に触れて読み返したい。


絲山秋子著「神と黒蟹県」

架空の黒蟹県(これといった名物やら特徴のない微妙な県)を舞台に綴られる黒蟹県で暮らす人々(+神)の普通の日々の営み。物凄く劇的なことが起こるわけではないのでとても地味なんだけれど、何だかとても愛しくて、おかしみに溢れた不思議な物語。

架空なのに、いや架空だからこそ地方都市のあるあるがギュッと凝縮されていて物語を読み進めているうちに黒蟹県がたしかに実在する土地として自分の中に出来上がっていく感覚がたまらない。

巻頭には黒蟹県の地図が、各章の終わりには黒蟹辞典が掲載されているという手の込みよう。特に黒蟹辞典に関しては笑っちゃうくらい緻密に作られているので必見。

知らない土地を人間観察しながら歩くのが大好きな方や妄想大好きな方にぜひお薦めしたい!


吉本ばなな著「ミトンとふびん」

ばななさんがこれまでも何度も描かれてきた喪失をテーマにした物語たち。「金沢、台北、ローマ、八丈島。いつもと違う街角で、悲しみが小さな幸せに変わるまでを描く極上の6編。」

癒えることのない傷にばななさんが優しく手を当ててくれるようなそんな作品で何で泣いてるのか自分でも分からないけれど何度も泣いてしまった…そして泣いた後はまるで憑き物が落ちたように不思議とスッキリした。

今までも何度もばななさんの作品に癒され、救われ、背中を押されてきたけれどきっとこの作品も繰り返し手に取ることになる予感がして本棚の一等地に置くことにした。「デッドエンドの思い出」のおとなり。


塩田武士著「存在のすべてを」

1991年に発生した前代未聞の「二児同時誘拐事件」の真相は闇に葬られたまま約30年の時が流れようとしていた。
当時事件を担当した刑事の死をきっかけに、1人の新聞記者があらためてその真相に迫る。

最後まで読んだ上で「存在のすべてを」というタイトルを改めて見つめると、これまた心に迫ってくるものがあって涙が止まらない。

映像化を強く希望!


柴崎友香著「百年と一日」

詳細はこちらで。

2024年上半期は冊数的にはそこまで読めなかったけれど、振り返ってみれば素晴らしい本ばかりでなかなか選ぶのが難しかった(幸せな悩み)

下半期も素敵な読書時間が過ごせますように!

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