教えて、神様
「期待は感情の借金やからなあ」
一呼吸おいて考え、二呼吸目には自分の内側から数多の記憶が噴き出してくる。
そんな言葉だった。
《夢をかなえるゾウ 水野敬也 著》
うだつの上がらないサラリーマンの主人公が、ひょんなことから像の頭を持つインドの神様『ガネーシャ』(なぜか関西弁を話す)から成功するための習慣や考えかたを学んでいくストーリー。
紹介されている成功法則は、トイレ掃除、募金、自分の得手不得手を知るなどなど、どこかのビジネス書や偉人伝で聞いたことがあるものが多い。
けれども、まるでコントを見ているかのようなコミカルな作風と、作中の随所に散りばめられたハートフルな展開が、それらの成功法則に違った味わいを与えてくれている。
さらにガネーシャの言葉が、その味わいをより深めている。
とくに僕がグッと来たのが、最初に紹介した言葉。
「期待は感情の借金やからなあ」
である。
本を読み、人に会い、旅をする。
そして『この本が、この人が、この場所が、自分を変えてくれる!』と期待する。
そうやって、まだ何もしていないのに成功するかもしれないという高揚感で気持ちよくなって、いずれ現実にぶちあたったときに期待した分だけ大きく凹む。
だから『期待は感情の借金』なのだとガネーシャは言う。
人間が期待する対象として最高位の存在『神』が、期待を否定するなんて…。
その構図が秀逸だと思うのと同時に、その言葉にものすごく惹きつけられた僕。
自分の記憶をたどってみると、思い当たる節が多い。
(このセミナーに参加すれば変われる的な)
だからモノゴトに、以前ほど期待しなくなった自分もいる。
でも、そんな期待しない自分は寂しい。
「じゃあ、どうしたらいいのさ!教えて、神様」なんて思いながら読み進めると、その答えとして挙げられていたこと。
それは『行動して経験すること』
本を読むことも、人に会うことも、旅をすることもけっして無駄というわけではなくて、重要なのはそのあと。
どんな行動をおこして、どうやって持続するか、ということなのではないかと僕は感じた。
そう感じた瞬間、「なにかひとつをやり続けなければ!あきらめちゃダメだ」と肩にグッと力が入った僕だったが、物語終盤のガネーシャの言葉にハッとする。
「あきらめてもええんやで。自分に向いてないと思ったら。でもな自分自身に対しては、あきらめたらあかん」
こんなに心地よく心にひびく関西弁は初めて。
続編もあるそうなので、さっそく読んでみようと思う。
肩の力を抜きたいひとにオススメの一冊。
ちなみに、本作をオーディオブックで聞くこともオススメ。
声優・大川透さんの関西弁が、めっちゃええかんじ(笑)