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画角から溢れたハッピーエンド

言葉にできないことばかりだけど、確かに今、言葉にしなきゃいけないことがあるのもまた事実で、こういう時人はどうあるべきなのだろう、と、いつも考えている。欲しいのは正しさじゃない、最適解でもない、ただ僕の気持ちが、心が、目の前のあなたになるべくそのまま届いてほしいだけなのに、それが随分と遠い。遠いから、それに酷似した質感の温もりへと強引に持っていくために、黙って抱きしめるしかなくなる。言わば強硬策、言わば消去法、どうしようもないから、声にならないだけだったんだよいつも。なんとなく良いことをしているようで、実は全然違う。逃げている。言葉にすることから逃げている。そういう引け目が確実にあって、それはじわじわと、僕の傷口を開く。それでいいのか、いいわけがない。

無言の抱擁でなんとかなったことも何度かはある。でもそんな最終手段でも太刀打ちできない絶望に阻まれた時、僕がもう少し大人で、博識で、優しさみたいなあやふやなものじゃなく、もっとはっきりとした力があればどんなに良かっただろうか。これまでそう思ったことは数知れず。その度に僕は、優しさなんて本当に肝心な時ほど機能しないという現実を突き付けられてきた。今だってそう。現在進行形でそう。きっとこれからだって、そういう現実はいかなる時も付きまとってくる。

でも同時に、こうも思う。
言葉が完全でないことは、なんて愛おしいことだろうと。
あなたの考えていることが分からない、僕の考えていることの100パーセントはあなたに伝わらない。嫌になるくらい僕らは他人だ。でも違う人間だからこんなにも傷つけ合えるのだとしたら、傷つくということは、触れ合える距離にいる人間同士の特権みたいなものかもしれない。だから我々は、伝わらずとも、傷つこうとも、いつだって本気で言葉にしようとするしかない。そうやって言葉の不能感に負け続ける日々が、そう遠くない未来の自分を奮い立たせてくれると信じているし、もし信じられず泣いている人がいるのなら、僕はあなたの味方だとせめて言いたい。一人で抱えるには長すぎる夜に膝を抱えているのなら、そこまで言いに行きたい。

誰だって分からないことが一番怖い。大切な人が苦しんでいる意味が分からないのは辛い。でもそれは、僕もあなたも、多分一緒なんだ。どこまでも別々の人間だけど、そこだけは一緒なんだ。暖を取るには心許ない火かもしれないけど、手元を照らすくらいはできるはずだから、僕があなたに問いかけ続けるように、あなたも僕に問いかけ続けていてほしい。ずっと。できれば死ぬまで。

厄介なもの持ち寄って
いつまでもそばに居て
傷つけてもいいけど
本当の気持ちだけで話してよ
どれだけ君を見つめても
分からんことがあるなんて超ロマンだなぁ!
死ぬまで絶対飽きないよ


最近の夜は秋の匂いがしますね。
あなたの夜はどうですか。

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