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カラーアース

9
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#小説

カラーアース 9

こんなに穏やかな時間はいつぶりだろう
歩き続けてから
いや
毎日過ごしていた中でもなかった感覚
そんなに追われていただろうか
そりゃあ、課題もあれば部活、バイト、
友人との付き合いだってないわけじゃない
知らず知らずのうちに、必要のない事まで振り回していたのかもしれない
今だって、追いかけているものが無いわけじゃない
無事にいつもの街に戻る
カズキを日常に帰す
それをやってあげられるのは今、私しか

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カラーアース 8

静かに視界が、白んでくる
朝だ
もう何回目の朝だろうか
分からない
あの日から、ちょっとずつ、休みながらひたすら見える街を目指す
手前にもかつての面影を残した跡地があった
誰も人はいない
やはり、この外の世界に暮らす人は居ないのだろうか、そうとしか考えられないとも思っていた
有名な景色が見える場所、そういう所がある街は文字通り囲われて、今も存在する
そうでない、なんでもなかった街はもう衰退するしか

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カラーアース 7

こんなに歩いたのはいつぶりだろうか
普段はもう、歩くなんて事はほとんどない
移動する床に小型の自動二輪車、高速移動の車両
当たり前だと錯覚していた
全身の筋肉が少しずつ、また少しずつと引き裂かれる思い
健康に過ごすには体を動かした方がいいとはよく言ったものだ
こんな社会に普段の健康なんてもはや必要なかったのか
生きていけたって事は確かだ
それでも、必ず連れ帰らなきゃ行けないんだカズキを
彼はほとん

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カラーアース 6

見たこともない景色
そんなもの、生きている世界にあるはずないなんて思っていた
きっと世界のどこに行っても、無機質で均整のとれた街並みが変わらずあると思っていた
知っていた世界は思いもよらずちっぽけだったんだ
ちょうど上り始めた太陽に照らされ、見えている景色は沢山の光を抱えていた
かつては私たちの街と同じ建物だったのか
今では緑のベール植物?みたいなものなの覆われてしまって、穴ぼこだらけだ
こんな時

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カラーアース 5

気を失っていたのだろうか
ゆっくりと目を開ける
時間はそんなに経ってない
周りの静けさがより頭の痛みを強くする
『みんな?』
呼びかけたところで声が聞こえない
周りに人がいる雰囲気はまるでない
ふと、小さな頭が目の前に見えた
『カズキ、、、!』
ちょうど瓦礫に挟まるようにカズキはそこにいた
『お姉ちゃん、、、?』
反応している、よかった、無事みたいだ
自分で瓦礫の隙間から無理やり体を抜け出してカズ

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カラーアース 4

『よく来たねぇ』
朗らか。穏やか。
ゆったりとした口調で微笑みながら話す
『久しぶり、おばあちゃん』
時間が空いても安心を感じられるのは人柄によるものだ、温かい気持ちになる
はしゃいでいるカズキにも、ウンウンと頷きながらお家に向かう
こんな日々は、いつぶりだろうか
毎日過ごしているだけであくせくしてしまう
私もおばあちゃんになったら、こんな風に子供達に安心を届けてやれるのだろうか
未来を先んじて不

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カラーアース 3

『あれ、ここどこ?』
戸惑いながらアカネは周りを見渡す
見慣れない均整のとれていない街
建物は色も形も大きさも違って
異常な煙が立ち上り、地面のデコボコは全く移動することに適していない
何を取っても知らないところだらけの場所でアカネは不安になる
『ここ、おばあちゃんの街、、?』
いや、ありえない
こんなところじゃなかった
それに、カズキも家族も誰もいない
何か勘違い、いや夢でも見ているのだろう

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カラーアース 2

朝を迎えた街
キラキラ光り始める建物の反射で、アカネは目を覚ます
いつのまに寝てしまったのだろうか
気付いたら用意をしなくちゃいけない時間だった
少し寝ぼけたまま慌てて準備をし始める
もちろん、どれもこれもおばあちゃんに喜んでもらえるように
アカネたちの街から割とそれなりの距離にあるおばあちゃんの街
だが、この世界
街並みはほとんど統一化されていて、特に代わり映えなんてしない
あるのは普段出会えな

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カラーアース1

空は青い。広々とした大地は緑を生い茂らせ、川はせせらぎを届けてくれる。
僕らの世界は、感動する景色や物でいっぱいだ。
外に行くことは、ドキドキする。

今日も家を飛び出して、学校に向かう。
移転革命が起きた私たちの街
移動に時間をかける事は最早有り得ない事だった。
家を出たら五分で目的地にたどり着く。
遠くの方になればそれは少し長くなるが、1時間あれば山口から青森まですぐだ。
アカネは起きてすぐ

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