見出し画像

すいすいの秋

秋が来た。
完全に秋だ。
玄関のドアを開けるたび、
外を歩く呼吸のたび、
しみじみと秋の訪れを実感する。

どの季節の匂いも好きだけど、秋は特別好きかもしれない。秋生まれだし、誕生日がくる嬉しさが子ども時代に刷り込まれているせいかも。
同時に、秋の匂は心にがらんと空間が空くような淋しさも連れてくる。
夏の私より秋は1コ静かになる。そういう感じ。


『〇〇の秋』とはよく言ったもので、本当にいろいろな意欲を連れてくる。
私は読書、漫画、映画、お茶&おやつ、散歩あたりが、今したい気持ち。
意欲というより、心に出来た空間を埋めようとしているのかも。誰かと一緒にやるというよりも、独りでやれることを淡々としたい。

漫画や映画といってもジャンルや作品ごとにそれぞれ似合う季節があって、秋は静かで落ち着いた恋愛映画とか、じんわり系のヒューマンドラマとかを見たい。
漫画はなんといっても、いくえみ綾。
私の中でいくえみ綾の漫画って秋冬のイメージが強くある。
いくえみ作品にヒタヒタでいたい季節。
(私が清少納言だったら“秋はいくえみ”とかって書くのかなぁ?枕草子ってそういうのでもいいのかな)

あと、やたらと体育祭を思い出す。
自分のじゃなくて、漫画に出てきた体育祭のシーンを。
いろんな漫画を読んできて、いろんな体育祭があった。
それらが浮かぶ。
君に届けの体育祭(球技祭?)で爽子と風早くんがハイタッチするシーンとか、1番よく思い出す。
自分の体育祭では、高3の時の棒引きで唇を切って流血した思い出がある。ボタボタと溢れる血が自分の顔から流れていると気づいた時は驚いた。普段は薄い唇が石原さとみくらいの厚さになったのが懐かしい。
風早くんとハイタッチするはずだった両手で、バケツを抱え自分の血を受け止めた。


今日はバイトが16時上がりと短くて、心地いい空気の中をすいすい進んで帰った。
平日のこの時間帯を歩くことってあまりないから、街にいる人の層が普段の通勤とは違くて新鮮で嬉しい。
高校生とか大学生とか子供とか、若くて明るい表情の人間が街や駅にいっぱいいる。

電車で隣の席に男子大学生が2人座っていた。暇だったので会話を盗み聞きした。
「俺、なんか新しいバイトしよっかなって思ってんだよね〜、普通にピザの配達とかやろっかな」
「あぁ〜、アリだよね」
「今友達がやっててさ、通話とかしながら配達しててめっちゃ楽そうw」
「マジ?w」
「そう、普通に喋りながら配達してるw」
「確かに何しててもバレないもんね、早く届けたらその分サボれるんじゃね?」
こんなにも絵に描いたような大学生の会話って本当にあるんだと思うと面白くて、得した気分で電車を降りた。

自宅マンションに続く狭い一本道に、鮮やかな黄緑の帽子をかぶった保育園の子どもたちがコロコロと、ちまちまと、ちょんちょんと点在している。先生に何かを教わりながら愛らしい手で草を触ったり、しゃがんで何かを見つめたりしてそれぞれ遊んでいる。
私は足元に咲く小さな花の一つ一つを避けるような気持ちで丁寧に歩いた。

マンションの前にリードを持った飼い主を携え悠々と歩く猫がいた。
猫も、飼い主も、気ままな様子の午後である。
家に帰ると飼い猫が起きてきて、私に向かってニャンと喋った。




アマプラの『Modern Love』ちょっとずつ見てる

いいなと思ったら応援しよう!