ビジネスとユーザー体験を接続する方法とは?【グロースサイクル実践編】
この記事はGoodpatchアドベントカレンダー2021の22日目の記事です。
私はGoodpatchという会社で、様々な企業や事業にExperience Designの専門性を持って携わってきた経験をもとに、現在は事業開発を行なっています。
本記事では、以前投稿した「グロースサイクルの本質」の続編として、グロースサイクルをユーザー体験の設計までどのように接続していくべきなのか?という部分に焦点を当てた実践編を記載していきたいと思います。
私自身グロースサイクルというサービスの設計図を定義した後、具体的なユーザー体験へとどのように接続するのかを日々試行錯誤してきました。そんな中でグロースサイクルとある行動モデルを組み合わせると、ユーザー体験との接続がしやすくなることを発見したため、そのナレッジをここに残したいと思います。
こんな時におすすめ
ここでご紹介する方法は、特に以下のようなケースで活用しやすい方法です。何かのご参考になれば幸いです。
グロースサイクルのおさらい
「グロースサイクル」「グロースモデル」「flywheel business model」などいくつかの呼び名がありますが、どれもサービスが循環し価値を提供し続ける生態系として機能するために必要な基礎概念となる考え方です。
詳しくは以前投稿したこの記事に詳しく記載しているため割愛させていただきますが、以下が私が考えるグロースサイクルの概念です。
グロースサイクルの課題
私自身、グロースサイクルを書いた後、すぐに具体的な体験フローやカスタマージャーニーマップのようなものを設計し始めてしまっていたのですが、グロースサイクルからユーザー体験の設計までが本当に接続されているのかがあやふやになり、本質的ではない体験設計をして失敗してしまうことがありました。
そのような体験から、グロースサイクルからユーザーの体験を具体的に描くまでの間にある大きなギャップを埋める方法を試行錯誤してきました。
そこで発見した鍵になる考え方が、ユーザーが行動をするために必要な要因を紐解き、行動の連鎖を生めるような行動モデルをサービス内に設計することだと考えています。
フォッグの消費者行動モデル「B=MAT」
ここで登場するのが、フォッグの消費者行動モデルというものです。
これはスタンフォード大学のB.J. Fogg氏が提唱した、消費者が購買などの行動をするために必要な要素の相関を表した考え方です。
詳しくは以下の記事に詳しく書かれているので、サマライズしてお伝えします。
この消費者行動モデルには以下の公式が提唱されています
要するに、ユーザーの行動を引き起こすためには、以下の三つが必要で、いずれかが欠けてしまうと、ユーザーは行動を起こさないというモデルです。(なので掛け算で表されています)
この行動モデルとグロースサイクルを掛け合わせることで、ユーザーがサービスのコアとなる行動を連鎖的に引き起こしてくれそうかどうかが定義できると私は考えています。
それでは、ここからは具体的な方法を紐解いていこうと思います。
グロースサイクルにB=MATを掛け合わせる
今回は一例として「Twitter」の体験を扱いながら、グロースサイクルと行動モデルを掛け合わせてユーザー体験の設計に接続する方法を記載していこうと思います。
1. コア体験を定義する
まずは、グロースサイクルの元となる最小のサイクルを定義します。
Twitterの場合、コア体験は以下のように定義ができます。
2. グロースサイクルを定義する
上記の二つの最小の体験に対して、ユーザーの行動を考えながらグロースサイクルを定義します。今回はシンプルなサイクルのみを定義しています。
3. セルごとにB=MATを当てはめる
グロースサイクルができたら、「〇〇が増える」ために必要な行動をB=MATで定義していきます。例えば「反応が増える」というセルに対して、以下のような行動モデルを定義していきます。
各セルに対して同じように行動のモデル化を行いながら、前のセルで定義した「行動」を次のセルの「トリガー」へ接続して、ある行動が次の行動の引き金を引くように設計していくのがポイントです。
以下は3.で定義したグロースサイクルのうち「反応が増える」と「投稿者が増える」のセルのみに対してB=MATを当てはめた図です。
以上が簡単な説明となりましたが、グロースサイクルとユーザー体験を行動モデルによって接続する方法です。
4. 行動モデルからユーザー体験を具体化する
上記のステップで明らかになったサービスのコアとなる循環とユーザーが行動する理由をもとに、実際にユーザーの行動をどのようなプロセスで引き起こすのかという設計をカスタマージャーニーマップやストーリーマッピングなどで明らかにしていきます。
このように、サービス循環とユーザーの行動モデルが明らかになっていれば、あとはその行動をどのようなプロセスで引き起こされるのかの解像度を上げていけばサービスの全体設計と矛盾のない形での体験設計が可能になります。
まとめ
サービスを循環させるのはユーザーの行動
私はこれまでBtoBであれBtoCであれどのようなサービスでも、ユーザーが存在する場合ユーザーの行動でしかサービスは循環し始めないし循環し続けないということを肌身で感じてきました。
サービスに対するニーズは明らかなのにサービスがうまくいっていない場合や、ユーザーが途中で離脱してしまう場合は、サービスの全体設計とユーザーの体験設計に食い違いがあったり接続に不和があるケースがほとんどです。
そして、ここまでにお話ししたプロセスは、UXデザイナーやサービスデザイナーが一人で考えれば良いというものではありません。良いビジネス・良いユーザー体験を生み出して世の中に価値あるものを増やすためにも、サービスに関わるチーム全体で上記の観点を網羅し、共通認識を持ちながらユーザーにとって価値あるサービスを作り上げることが重要です。
さいごに
この記事のサマリーを載せて終わりたいと思います。
おまけ
行動を連鎖させてサービスを循環させる方法を理解すると、多くのうまくいっているサービスで「小さな行動からだんだんと大きな行動を引き起こしていく」という共通点があることがわかります。
そして、小さな行動を引き起こすためには最初の行動をするモチベーションを持ったコアユーザーを見つけなければいけません。
最初の歯車を回すパワーを持ったコアユーザーに上記どこのセルを回してもらうのかを考え、その最初の行動に対して小さな行動を集めて増幅させるような行動のデザインを意識すると、ユーザーにとって不自然な行動がサービスに盛り込まれることが少なくなるのでおすすめです。
記事を最後まで読んでくださってありがとうございます。とても嬉しいです!