「店長の仕事」評価すること
人の上に立つようになると、好むと好まざるとにかかわらず、人を評価するという作業をすることになります。
しかし、人が人を評価するということは、そう容易いことではありません。人には感情があるからです。好きとか嫌いというような主観に左右されることなく、客観的に評価することが求められます。
<店長評価>
評価した本人と、堂々と評価内容について話すことが出来るようにすることも、人材育成という観点からは必要になります。
それにはきちんとした判断基準が必要です。
基本的接客態度や方法、実績、店の方針に沿った取り決めや指示がどの程度実行できているかなど、あらかじめ社内で方針を決めて、スタッフ間で共有しておくことが重要です。この基準に従って人材育成を行うのですから。
そして評価というものは、後でまとめて行うものではありません。毎日気が付いたことをメモすることから始め、毎月末にそれらを記入していきましょう。
具体的には、次に示す具定例の各項目ごとに、リストを作り、そこに点数形式で入力していきます。10点満点でも5点満点でもいいでしょう。
出来ているかいないのかの〇✖ではなく、点数にすることで、昇給や賞与の際に半年分をエクセルで簡単に集計できます。6か月なり1年の集計をすることで、点数が平均化され、一つの出来事に過大に加点したり減点したりすることがなくなり、通期での勤務実績が公平に評価できることになります。
営業というものは毎日の積み重ねなのですから、評価も同様に積み重ねであるべきなのです。
(評価項目)
評価項目の基本的な例を挙げてみると、
お客様・出入りの業者・社員同士で挨拶はできているか
呼ばれたときに「ハイ」と返事が出来ているか
陰ひなたはないか
社会的常識は心得ているか
店内で名前を呼ぶとき、**ちゃんとかでなく、きちんと名前で呼んでいるか
時間にルーズではないか
無駄な時間はなかったか
勤務中個人的なおしゃべりや私用電話は目につかなかったか
無断で持ち場を離れたりしていないか
真面目にコツコツ努力しているか
遅刻早退は多くないか、同様に欠勤はないか
健康管理はできているか
身だしなみは適切か
自分のお客様はあるか、増えたか、お客様の顔や名前を覚えているか、工夫をしているか
担当商品の売上目標は達成できたか、同様に店舗目標はどうか
目標に適切にアプローチしていたか
成果は期待にこたえられるものだったか
きびきび、てきぱきと、要領よく接客していたか
電話の取次ぎに問題はなかったか
お客様の注文の聞き間違えはなかったか
商品・備品・テスター・什器等の取り扱いは丁寧か
使用したものはちゃんと元に戻しているか
商品の売上・在庫数・入荷時期等は正確に把握しているか
ゴミや汚れを見つけたら、すぐに対処しているか
業務改善に意欲的か、意見やアイデアを出しているか、問題意識はあるか
進んで仕事を追いかけているか
後輩に正しい手本を示しているか
報告連絡相談は適時適切か
言いつくろうことはないか
安心して任せられるか
約束は守ったか
同僚や先輩後輩と協力して仕事をしているか
周囲との摩擦はないか、気分のムラはないか、発言にトゲはないか
プラスワンを心がけているか
少額のお客様も大切にしているか
お客様粘り強く接しているか
いつも笑顔で感じのいい接客をしているか、言葉遣いは丁寧か
「いらっしゃいませ」としっかり声が出ているか
声掛けのタイミングは適切か
お客様の話を注意深く耳を傾けているか
買わなかったお客様に嫌な顔をしていないか
予期せぬ質問に嫌な顔をしていないか
他の作業中でもすぐにお客様の要望に対応しているか、ほったらかしにしていないか
お客様の目を見て応対しているか
商品説明は適切か、説得力はあるか
代金の受け渡しはスムースか
他のお客様にも気配り目配りしているか
仕事の段取りは十分か、手順は効率的か
ディスプレイの基本は知っているか
会社の方針を理解できているか
上司の指示をよく聞いているか
部下や後輩を協力的にまとめているか
商品知識(担当商品・担当外商品)は十分か
競合ブランドや競合店の情報は把握しているか
国内外の価格や為替動向は把握しているか
担当の仕事の出来具合は要求されたレベルに達しているか
基礎知識・専門知識・技能は備えているか
表現力(書く・話す・伝える)は持っているか
技術や知識を日々学んでいるか、など
これらの項目の中から自社に適したことを選び、エクセルで個人別にリストにし、横に点数記入欄を設け、点数を入力していきます。縦の集計はその月の点数合計。項目ごとの半期集計は、その個人の強み弱み、その縦集計が半期の個人評価点数になります。
<自己評価>
もう一つ、私が強く推奨したいのが、自己評価システムです。
前述の店長側からの評価に加え、それに対応した自己評価リストを作成して、各スタッフに毎月提出してもらうのです。
出された自己評価チェックリストと店長の出した評価リストをすり合わせることで、認識の相違、理解のずれが見つかります。
本人のこだわりの部分がどこにあるのか、それは正しく見られているか、本人が気づいていない点があれば、指摘して修正できます。
毎月店長と個別面談してそれらを話し合うことで、少しずつ同じ方向に向けていきます。これは、片方だけの問題ではなく、お互いにメリットがあることです。
(チェックリスト)
各スタッフに自己評価してもらうには、チェックリストを作成し、毎月提出してもらうのがいいでしょう。
この場合のつくり方は、スタッフに出来るだけ負担をかけないようにすることです。設問は多すぎないようにし、こちらのチェックリストは、〇△✖の選択式にするといいでしょう。本人が全部〇と言っていても問題ありません。店長との認識のずれがないか確認しましょう。
項目については基本的に店長評価の項目と同じです。
下段に追加で次のような記入欄を設けるといいでしょう。
新たに取得・習得した資格・技能はありますか
現在の仕事に満足していますか
希望のポジションはありますか
人間関係は良好ですか、知ってほしいことはありますか
何か提案はありますか
自分の目標に対して、どのくらいできましたか 100点満点でいくつですか
今後の目標は何ですか、など
<最後に>
企業人である以上、人事評価は避けて通れません。しかし、これは人を批判する場では決してありません。そうなってはいけないのです。
その人材の本人が気づいていない長所を伸ばし、不足している部分を補う努力を促す、そういう前向きな建設的な場でなければならないのです。
スタッフ全員を、店長の求める人物像に近づけるよう、繰り返し話し合い、育てていく機会に過ぎないと思ってください。
ここを間違えると、せっかくいい雰囲気になっていたものが、台無しになってしまいます。
一度にやろうとせず、毎日少しずつやれば、重荷にはならないはずです。
毎年人事考課の時期になると憂鬱になる方は、ここまで述べてきたことをやってみてください。評価という作業を人材育成の一つの手段に活用するのです。
ぜひ有効に利用してください。
以上評価することについてお話ししました。最後まで読んでいただきありがとうございました。良ければスキ・フォローをお願いします。次回で「店長の仕事」シリーズはいったん最後になります。これからもいい記事を書くよう努めますので、どうぞよろしくお願いいたします。