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夢を売るとは(商品を売るのはやめてしまおう)

私は大学を出てから定年退職するまでの45年間、一貫して接客販売の仕事に就いていました。
務めていた会社は一つではなく、
その方法も戸別訪問や電話外交、ルートセールスや店舗販売などいろいろで、扱う商品も株や債券、酒類に食品、化粧品に高級ブランド品など多岐にわたりました。
その間「接客販売の本質は、単に“商品”を売ることではない。」ということを心底感じています。

株などは、実体としての株券はありますが、売買されるのは額面価格ではありません。
将来見込まれる利益や損失の期待値です。
お客様は、それらの情報を的確に独自の視点でもたらしてくれるセールスマンから買うことになります。

問屋のルートセールスにしても、販売先は決まっていると言っても、小売店の出入り業者は複数あります。
好条件を出す業者、的確なタイミングでキャンペーンを企画してくる担当セールスを選んでそこから仕入れすることになります。

化粧品や高級ブランドは一般常識をはるかに超えた価格であっても、「これは安い!」と思わせてくれる販売スタッフからこぞって買っていきます。

つまり、販売してきた“商品”には、目に見える形になった“物”と、目に見える形の無い“物”と両方あるのです
場合によっては目に見えない“物”の方が価値が高くなっているのです。
お客様は、その目に見えない“物”を示してくれる販売員からなら喜んで買っていくことになるのです。

今回はそのことについてのお話です。私が長らく携わっていた店舗販売を念頭に進めていきます。

いらっしゃいませ

そこには、店舗があり、商品があり、販売スタッフがいます。
お客様は、お店を見つけ、外から入るかどうかを眺め、入ることに決めたら、一歩入って店の中を見渡します。
何かありそうだなと思えば、そのまま進んで、商品をいろいろと見ていきます。
探しているものが見つかったなら、手に取ってレジに向かいます。

まず、このように接客を受けなくても販売は成り立ちます。
それは、すでにお客様の頭の中で、その商品を買った後のことがイメージ出来ているからです。
それを使って何かを作り、出来上がったものが頭の中にあります。
又、それを持ってどこかに出かけている自分がちゃんとイメージ出来ているのです。
その商品なら、そのイメージを実現できそうだと自分で判断したので、レジに持ってこられたのです。
そこには必ず目的があります。
「あれを買ってこうしよう」、「これならこんなことが出来るかな」というようなイメージが頭の中にあり、それが自分にとって必要だと思えば、それに見合う価格かどうかを判断して買うかどうかを決めているのです。
商品の内容程度のことなら、説明書きを読めば済むことなので、その程度の接客なら、「わかってるから」と言われてしまい、必要がないのです。

お客様だけでも、目に見える“物”と目に見えない“物”を結びつけることはできます。
しかし、それは最小限の“物”でしかないのです。

販売員の仕事は、商品とお客様を結びつけることです。
お客様は、“変わる”自分や物をイメージし、期待し、希望を持って、理想を描きながら、それを現実の形にするために店に来られます。
店舗外観はその思いに即したものでなければならず、商品はその要望に応えるものでなければなりません。
販売員はその手助けをするだけにとどまらず、その目に見えない“物”をより大きくし、さらに横に広げる努力をしなければなりません
横に広げることによって、さらに関連した商品の需要が生まれるのです。
これがただ“物”を売ることから、“夢”を売ることにつながっていくのです。

買った後の自分を思い描く手助けをすること

お客様が持ってきた商品をただレジ打ちするだけではダメなのです。
お客様に売るのは、商品だけでなく、その商品と結びついた価値、付加価値、そしてそこで得られる喜び、よりよい未来なのです。
目に見える“物”よりも見えない“夢”の方がはるかに大きいのです。

“マネジメントの発明者”と言われる経営学者のピータードラッカーも、こう言っています。

「顧客は商品を買うのではない。サービスを買うのである。」

接客販売については、基本的心構えを書いた「「接客の心得」お客様がどんどん増えていく3つのポイント」で、
その具体的方法については「「接客のコツ」お客様の心をつかむ7つのポイント」にまとめています。ぜひ参考に読んでみてください。

“夢”を売るための具体的方法として、補足的に6つ追加で紹介しておきます。

➀ まず、お客様の今描いている夢を知ることです
さりげなく、それでいて丁寧に、何に悩み、不満で、不足しているのは何かを把握することで要望である夢が見えてきます。
その夢にいちばん近い“夢”を店の中の商品から選んでいきます。

どんな夢かな

 お客様が“夢”を描きやすいように、商品のストーリーや商品にまつわるエピソード、その商品を実際に使った感想などを具体的に説明します

 商品が絞られてきたら、実際に試していただきます
手に取ったり、試着してみたりするよう促します。
高級品の場合は、おもむろに白手袋をはめるなどして、ゆっくりした動作で、丁寧に扱うと、お客様の“夢”がより大きく膨らみます。

いろいろ試しているとさらに夢がふくらむ

 お客様の反応を観察し、気持ちを察し、それに同調することで、より共感して信頼を得られます。

⑤ はじめに聞いたお客様の夢に即した印象を伝えることで、徐々に具体化していきます。

 お客様がそれにより、ワクワク、ドキドキ、嬉しそうな表情を見せ始めたら、ほぼ決まりなので、クロージングに入るといいでしょう。

喜びの表情をみるとこちらも嬉しくなります

このようにして最初の夢をさら大きな“夢”に膨らませることで、より良い商品になり、さらにそれに付随した商品も加わるようなり、1000円の売り上げが2000円にも3000円にもなるのです。
或いは、買うつもりがなかったけれど、スタッフに“気づき”を与えてくれたので購入に結びつくということもあります。
しかもお客様の満足度は自分だけで選んだ時の数倍に跳ね上がるのです。
これは、販売スタッフとお客様との共同作業です。
つまり、お客様にとって、その販売員とでしか得られない感動なのです。
他の店、他の店員ではダメなのです。
ですから、「またあの店に行って、あのスタッフと話をして、あのスタッフから買おう」ということになるのです。
世の中には様々なブランドがあり、同じ商品を売っている店もそこら中にあります。
その店の中にも大勢のスタッフがいます。今ではネットショッピングもあります。
お客様は、それらの中から、“この販売スタッフ”だけを選んで、来店しに来て下さるのです。
これこそが、より人間的な販売の形なのです。
店舗によってはセルフレジなどの自動化が進んでいますが、それでは必要最低限の物しか売れません。
その対極的にあって、より求められるのがこういう所ではないでしょうか。あなたはどう感じましたか。

今日もお読みいただきありがとうございました。スキ・フォローを頂けると嬉しいです。これからもよろしくお願いします。

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