現在の介護業界と現場を俯瞰し、時代に合った介護士になるために
■ 他業種で経験してから介護業界で働く
介護事業を営んでいて感じることは「介護の仕事だけしてきた人」と「他業種から介護に転職してきた人」とでは仕事への認識に大きな差があるということだ。
前者は介護業界しか知らない、何なら今働いている介護現場しか知らないということから、いわゆる「世間知らず」な状態になってしまいやすい。
そこから過度に利用者たる高齢者に入れ込んでしまったり、利用者に変に取り入ろうとしたりと仕事の本質からズレた働き方をすることがある。
後者は他業種の風習もそうだが、仕事はビジネスであり客商売という認識が前提としてあることから、社会人としての挨拶といった振る舞いやモラルがそこそこ備わっている。
また、利用者との距離感を線引きして、多少嫌なことが合っても「これは仕事だから」と割り切って働いている傾向にある。
このような比較をして思うことは、介護という仕事を本質的な意味で適切に行うためには、他業種を経験してから介護業界で働いたほうが良いということである。
■ 現在の介護業界と介護現場を俯瞰してみる
とは言っても、何も他業種や違う介護事業所に転職すればいいという話ではない。気持ちを急かさないでいただきたい。
それにこの考えはあくまで私の視点(というか偏見)であるうえ、私の中でも全てが上記に該当するわけではないと思っている。
しかし、長く介護業界にいるほど、同じ介護現場にいる人ほど狭い範囲でしか物事を考えられなくなっているうえ、介護業界も含めて時代がどんどん変化しているのに昔ながらの考え方で介護の仕事をしている様子が伺える。
社会全体の働き方だって変わっている。個人情報保護・感染症対策・自然災害・高齢者虐待といった社会問題だって介護は関わっている。
もはや、利用者の介護をして1日を過ごせばいいという時代ではない。
こういった社会変化に合わせるためには、長く勤めている介護業界や介護現場を俯瞰して見れるようになる必要がある。
自分が当たり前だと思っている業界の風潮や、自分がルーティンでやっている介助手順に対して「これって何のためにあるの?」と問いかけるのだ。
その疑問を解消を1つ1つ解消していくプロセスの中に「今はもっと新しい考え方ややり方があるのでは?」「他業種はどうやっているのだろう?」と考えるようになる。これが前進する一歩である。
■ 時代の変化に合わせた介護士になるための自己投資
このような視点になるためには、目に見えている介護業界や長く勤めている介護現場だけでは不十分である。「今までどおり」という現状維持思考から脱却するには同じ環境から離れる必要がある。
ここで改めてお伝えするが、他業種や違う介護事業所に転職すればいいという話ではないのでご了承いただきたい。
一番てっとり早くできることは、自己学習することである。本屋に行けば介護雑誌は普通に売っている。本屋でなくとも電子書籍だって構わない。少し大きめの本屋に行けば介護保険制度や介護知識・技術に関する参考書が見つかる。このあたりから1~2冊買って読めばいい。
インターネットの記事や動画でも構わないが、出版社から出ている書籍は校閲のもとに世に出ているので一応の信頼性は確保されている。また、お金を出して学習するということは「自己投資」として意味がある。
自己投資としての学習の大きなメリットは「現在の自分に疑問を抱くことができる」ということだ。それは介護の仕事で言えば「今の介助法は合っているのかな?」「自分の認知症の知識は古いかも」といった気付きである。
介護現場で伸ばす経験もあるが、それだと途中で「今までどおり」「同じことの繰り返し」で成長は頭打ちになる。だからこそ、プラスαとして自己投資としての学習によって時代の変化に合った介護士を目指す必要がある。
■ まとめ
若いうちから介護業界を目指すのは嬉しいことであるが、個人的には世間知らずにならないためには他業種を数年は経験したほうが良いと思う。そこで仕事としての対人関係を学んだり、ビジネスマナーを学んでからでも遅くはないだろう。
特におすすめは「営業」である。スケジュール管理をはじめ、良くも悪くも色々な人間と関わることができる。私もかつて営業マンだったこともあるし、現在も施設入居のための営業をしていることから実感している。
一方、すでに介護の仕事に就いている方は別に急いで他業種に行ってやり直しせずとも、学習という自己投資により見聞を広げることはできる。
もしも学習する機会がこれまで全くなくて、何を参考にして良いのか分からないという方は「おはよう21」という介護雑誌を読めばいいと思う。これは介護業界や知識・技術、運営や教育といった内容を網羅しており、読み続けているとバランスよく学習ができるのお勧めである。
本記事が何かの参考になれば幸いである。
ここまで読んでいただき、感謝。
途中で読むのをやめた方へも、感謝。