職場で愚痴や陰口ばかりの人と関わってストレスを溜めている場合の対処法
職場で、愚痴や陰口ばかり言う人がいる。
仕事に不満があるのか、プライベートに何か問題を抱えているのか分からないが、口を開けばマイナスな言葉を言う。仕事中でも、作業の手を止めてしゃべり続ける人もいる。
愚痴や陰口の問題点は、「必ず誰かが聞いている」ということである。
独り言でもその場に誰かいれば、嫌でも耳に入ってしまう。
目の前に聞いてくれそうな人がいれば、雑談のようにしゃべる。
その場にいない人でも、人づてに話した内容が入ってくることもある。
直接的でも間接的でも、愚痴や陰口を聞いて良い気分になる人はいない。
一時的ならば相手のストレス発散になればと親切心で聞いてあげたとしても、それが顔を合わせるたびに愚痴や陰口を聞かされると、聞いている側はストレスが蓄積されてしまう。
実際、介護施設を運営していると、特定の人物の愚痴や陰口に耐え切れなくなったスタッフから相談を受けることはある。
「〇〇さんの話が長くて仕事になりません」
「いつも愚痴ばかりで精神的に病んでしまいそうです」
「自分も違うところで悪く言われていると思うと心配です」
という自身の抱えている感情を吐露することもあれば、
「あの人とシフトを一緒にしないでください」
「とにかく顔を見るのも嫌なので、辞めようと思います」
と物理的に距離をおく対策まで考えている人もいる。それが自身の生活の糧を得る手段としての仕事と手放す決意をしてまでのことだ。
このような場合、面談によって1~2時間かけてじっくりとガス抜きすることで解消することもあれば、出勤日や作業が重ならないようにシフト作成をすることで納得することもある。
しかし、その職場に存在しているという要素がわずかでもあるだけで許せないというケースは、それ以上の配慮がしようがない。
ここまでで「本人に注意をしないのか?」と思われたかもしれない。
しかし、この手の話が厄介なことが2つある。
まず、愚痴や陰口を言っている本人が、自分の言動の問題に気づいていないということだ。
本人は呼吸するように不満や陰口を吐いている。そのため、上の人間が注意したところで「何でそんなこと言われなきゃいけないの?」となって、新たな不満を抱いてしまう。
そもそも、愚痴や陰口に限らず、人間というのは注意や指摘を素直に受け入れにくいもの。それが無意識で言っている愚痴や陰口となると、余計に注意や指導するのが困難というのが本音である。
もう1つは、愚痴や陰口を聞いている人と本人との間の関係性や理解に誤差があることも挙げられる。
「この人はこういう人だ」と分かっていると「あぁ、また愚痴か」などと流して話を聞ける(いや、ほぼ聞いていない)。一方、本人の人物像を掴んでいないと真正面から話を聞いてしまうので、愚痴や陰口をまるで自分事のように考えてストレスになってしまう。
だからと言って、ストレスを抱えている人が泣き寝入りするのは違う。
職場を管理している立場としても、リスクは放置はできない。
特に、愚痴や影口を聞いている人は、黙っていると周囲から仲間扱いされてしまう恐れがある。
人間は物事を表面的にしか見ないため、愚痴や悪口を言う人の話を黙って聞いているだけなのに「あの人も一緒になって愚痴や陰口を言っているのだな」と誤解されてしまう場合がある。
ただでさえ、せっかくの親切心や気遣いによって愚痴などを聞いていなのに、ストレスを溜めているところに周囲から悪い者扱いされてしまう―――こんな理不尽があってはいけない。
これに対しては、本人に対して周囲から注意するよりも有効な手段がある。
それは、愚痴や陰口を聞いてストレスを溜めている自分自身が「私は愚痴や陰口といった話は好きではないです」「そのような話を聞くとストレスを感じます」と伝えることだ。
これは過去に私自身もやったことがあり、またこのような悩みを抱えている人にも同様の方法を実践した結果からも有効だと思っている。
前述のように、愚痴や陰口を言っている人というのは、自分が悪い振る舞いをしているという自覚が薄い。さらに、それを黙って聞いてくれている人のことを親切で都合の良い人と潜在的に思っている。
そこで、いつも話を聞いてくれる人から「その手の話はもうやめて欲しい」と言われると、思いのほかショックを受けるようだ。信頼まではしていないまでも、今まで話を聞いてくれた人から抵抗を受けたのだから、怒りよりも驚きのほうが勝るらしい。
この方法を伝えると「怒らせたら面倒なことになる」「一緒にいると気まずくなるのは避けたい」と思われるかもしれない。
人によっては「その人も悪気はないから」「そこまで言わなくても」などとも思われるかもしれない。
しかし、考えてみてほしい。すでに自分がストレスを溜めているという面倒事になっている。一緒にいると愚痴や陰口を聞かされるという気まずさを抱いている。
もしも面倒事になったり気まずくなっても、理由が変わるだけで現状と大して変わらない。それどころか、自分が周囲から愚痴や陰口を言っている悪者に見られるリスクをゼロにしたほうが良いだろう。
また、悪気がないからと言って愚痴や陰口を言って良いわけではない。
ここまで言っても「そこまで言わなくても」と思うならば、愚痴や陰口を我慢して聞き続けてストレスを溜めて、周囲から悪者扱いされ、最終的に職場を去ることになる未来を目指せばいい。
これはあくまで提案であって、強制することではないのだから。
別に対立しろと言っているわけではない。
まして、愚痴や陰口を言っている本人のあり方を非難することもしない。
ポイントは、感情ではなく「事実を伝える」ことだ。
「その人が不満や陰口を言っている」という事実。
「不満や陰口を聞くと、自分はストレスを感じてしまう」という事実。
あくまで自分から見た事実で構わない。いつも黙って話を聞いているのだから、たまには自分の意見を言っても良いだろうくらいの態度でも良い。
作業効率を理由にしても良いだろう。
例えば、「自分は話を聞きながら作業ができないので、できれば黙ってくれると助かります」と言っても良いだろう。だって、職場には仕事をしにきているわけだから。
もしも帰り際に話しけられたとしても、「すいません、予定があるので帰ります」と言えばいい。「今度聞きますから」とも言わなくていい。
とにかく「もう愚痴や陰口は受け付けません」という態度を示すのだ。
本記事で書いていることは、言ってしまえば周囲の働きかけではく自分自身の力で乗り越える手法である。
しかし、結局のところ自分のことは自分で何とかするしかない。
そしてこれは、愚痴や陰口を言っている本人も同様である。
愚痴や陰口を言いたくなる気持ちはわかるが、それを言わないようにしたいならば根本的に自分自身で解決するしかない。
言葉にすることで何とかしてもらおうとまでは思っていないだろうが、ネガティブな気持ちを他人に伝搬させるのは大人のすることではない。
改めて言うが、愚痴や影口を言ってくる人の対策は強制しない。
――― 愚痴や陰口を言う人相手に時間を費やすのが人生か?
――― 他人の愚痴を常に聞くほどの聖人なのか?
――― たった一人の毒を吐く人を相手に周囲から悪者扱いされていいのか?
――― 仕事の成果と関係ないところで、精神を病んで仕事を辞めるのか?
あなたの人生は、愚痴や陰口を言う人のためにあるのではない。
ほんの少し勇気は必要だが、その先にあるのは自分の人生を取り戻し、望む生き方に進む未来だけである。
ここまで読んでいただき、感謝。
途中で読むのをやめた方へも、感謝。