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介護施設に訪れる困った面会者【中編】
昨日は「介護施設に訪れる困った面会者【前編】|ktate】を投稿した。
今回はその続きである。若干愚痴っぽいが、介護施設として面会という場面を少しでも良い状況なものにしたいと考えているとご了承願いたい。
前回は面会に関して時間を中心とした話だったが、今回は悪意のない困ったケースをご紹介してみようと思う。
面会者に伝わらない入居者の状況
施設入居者は高齢者であることから、心身が低下しているのはもちろん、個別に何かしらの介助を要することは珍しくない。
それに対して介護のプロとして、施設スタッフは支援計画などを話し合って入居者個々の状態に適した介助を行っている。
しかし、面会者はそのような施設としての取り組みや背景を知らない。言ってしまえば入居者の日常の様子や状態を知らない。何も知らないままで面会を終えることも珍しくない。
いくら施設として状態や様子を伝えても、面会者によっては1%も伝わらないまま、何なら誤解して帰ることだってある。
良かれと思って介助しようとする
何も知らずに帰るならばまだ良いほうだ。中には何も知らないまま、介護スキルゼロの面会者が入居者に介助を行おうとすることがある。
例えば、下肢筋力が低下して立位や歩行が不安定な入居者に対して、車椅子から立たせようとしたり、反対に車椅子の仕組みも知らずにサイドブレーキもかけないまま車椅子に移そうとしたりする方もいた。
治療中の箇所に負担をかけてベッドから起こそうとしたり、立ち上がりバーに装飾をして掴まる箇所を阻害したりということもあった。
この「良かれと思って」に対しては施設としては注意しにくい。悪気がないところに注意すると反発や戸惑いを生むだけだ。
だからこそ、日々電話や文書で状態をお知らせしたり、面会前にも色々と伝えているわけだが、上記でもお伝えしたようになかなか伝わらない。面会者の「良かれと思って」によってトラブルがあっても、施設としては責任をとることはできないのに・・・。
施設で起きたトラブルは施設の責任
ご自宅で介護をされていて、そこにヘルパーなどの介護従事者がいるという状況ならば、そこで何が起きてもご家族やご本人がしたことであれば介護側に責任になりにくい。それは自宅というシチュエーションだからだ。
しかし、介護施設という空間において起きたトラブルは、面会者(ご家族など)やご本人の意思や希望が起点だとしても、施設において何かしらの責任は発生する。それは施設運営をしてきた立場として痛感している。
ときには面会者が「良かれと思って」やったことが直接の原因でも、居室内の備品や環境状況など責任の一端を負わされることは珍しくない。何なら、「良かれと思って」によりトラブルを起こした面会者本人が「これは施設側に問題がある」とおっしゃることもある。嗚呼、何たる理不尽。
大ごとになったことはないものの、この手のトラブルは介護業界から見れば共感を得るかもしれないが、行政も含めて社会というのはそう甘くない。
客観的という言葉によって、あっさり施設側の責任になってしまう。それはトラブルの発生場所が介護施設というシチュエーションだった、というだけの話であるからだ。嗚呼、何たる理不尽。
とりあえず一声かけてくれればいい
少し話が脱線したが、面会者が入居者に対して「良かれと思って」「何かしたい」という気持ちは分かる。しかし、介護施設では専門的スキルをもって支援をしているという前提を覚えておいていただきたい。
施設から何かしらの状態変化などを聞いたならば、その点においては最低限注意していただきたい。そうしてご本人やご家族(面会者)が「こうしてあげたい」と思うことがあるならば、それをすぐ実行に移すのではなく施設に相談していただきたい。
「本人が✕✕したいと言っているのですが、良いでしょうか?」
「本人のために△△してあげたいのですが、問題ないですか?」
このように確認いただければ、ときには施設としても協力することはする。
もちろん、そのときの状態によってNGならばハッキリ言うし、ときには医療従事者に施設から確認することだってある。
何にせよ「良かれと思って」によってトラブルとなり、面会者と施設が気まずくなるのは良いこととは言えない。わずかでも「あれ、これって勝手に自分たち(面会者)がやっていいのかな?」と思うならば、迷わずに施設に相談してほしい。
また、施設から注意事項を事前に言われたならば、必ずそれに従うようお願いしたい。それが入居者の安全を守ることであり、長期的に入居者にとってトラブル防止になるのだから・・・。
ここまで読んでいただき、感謝。
途中で読むのをやめた方へも感謝。