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「同じ仕事をしているのに賃金が同じ」という不満はなぜ起きるのか?

まず、以下の問いを考えていただきたい。

フリーター(17歳)のA子さんがいる。
シングルマザー(45歳)のB子さんがいる。

この2人は同時期に同じ職場のパートとして雇われた。
業務内容、勤務時間、勤務日数は全く同じである。
そして、時給単価も同じである。

――― 果たして、この2人の待遇は平等であると言えるだろうか?


次に、以下の問いを考えていただきたい。

新卒(22歳)のC男さんがいる。
中途採用(55歳)のD男さんがいる。

この2人は同時期に同じ職場の社員として雇われた。
業務内容、勤務時間、勤務日数は全く同じである。
そして、月給も同じである。

――― 果たして、この2人の待遇は平等であると言えるだろうか?




さて、上記2つの問いをどう考えただろう?

どちらの問いも「平等である」と思っただろうか?
どちかを「平等である」あるいは「平等ではない」思っただろうか?
あるいはどちらも「平等でない」と思っただろうか?

問いを投げかけておいて申し訳ないが、残念ながら答えはない。
というのも、答えを明確にするには「何をもって平等とするか?」の定義がなされていないからだ。

分かりやすいところで「年齢」を軸としたとしても、「年齢が低い人の賃金を高めにするか?」「年齢が高い人の賃金を高めにするか?」となる。

「年齢が高い人のほうが賃金が高いのでは?」と考えた方も多いと思う。
そのような方は、上記2つの問いに対してシングルマザーと中途採用の男性に賃金を優遇するだろう。

「子育てが大変なシングルマザーに救いの手を差し伸べるべきだ」という考えだってある。これは子育てだけでなく、親の介護なども当てはめても良いと思う。




しかし、このような考えだと、次のような不平等が生まれる。
それは「同じ仕事をしているのに賃金が違うのは変だ」という不満だ。

これは職場における「自分のがほうがたくさん働いているのに、仕事をしないあの人と同じ賃金なのは納得いかない」という不満の逆バージョンだ。

何が言いたいのかと言えば、「同じ仕事をしているから賃金が同じ」というシステムにすれば一見すると平等のように思われるが、冒頭2つの問いのような年齢や個々のおかれている状況を鑑みると不平等になってしまうのだ。

これは感情が混じっているというよりも、社会的視点や立場によって労働との定義が変わってしまうからに他ならない。

極端な考えを述べるならば「誰もが納得できる平等な労働など存在しない」ということである。

あるいは、その職場においては平等かもしれないが、一歩外に出た人たちからすれば「その職場は平等性に欠ける」と言われるかもしれない。

では、どうすればいいのだろうか?




このような多くの働き手が感じる不平等さであるが、そのような感覚になるのは労働に対して認識というか誤認があるからだと思う。

そもそも、「年齢が上がるほど賃金が高いはず」というのは誰が言ったのだろう? そして「社会的弱者でない人の賃金は気にしなくてもい」という論点になっていいのだろうか?

これは日本という国の歴史が作り上げた労働というものの考え方があるだろうし、様々な社会問題を解消しようとしてきた取り組みから生まれてきた考え方もあるのだろう。

しかし、国の歴史や社会問題から色々な考え方が生まれるのは結構だが、いずれも労働および賃金の定義になるだけの要素として弱いと思う。

それは、労働とは「同じ仕事をしている」ということは関係ない。
労働とは「成果を生み出す」「価値を創造する」という前提がある。

そこには年齢や社会的立場とかは関係ない。求められる成果を生み出すためのスキルや経験があったり、価値を創造するに至る思考錯誤や実績があるかどうかに意味がある。それが巡り巡って対価としての賃金につながる。

つまり、「同じ仕事をしている」かよりも、自分が「求められる成果や価値を生み出すための力量があるかどうか」のほうが重要なのだ。

おそらく、この点を置き去りにしているから年齢や個々の立場などの狭い視点の議論になってしまい、そうでない立場の人たちと衝突する。そうして「同じ仕事をしているのに賃金が同じ」という不満を抱くと思われる。


――― もしも、このような不満を抱くならば、職場の同僚を比較するよりも自分自身が業務遂行スキルがあるのかを問いかけたほうが良い。案外、同じ仕事をしている(と思っている)のに相手のほうが賃金が高いというのは、その人が然るべきスキルや実績を出しているからかもしれない。

まずは自分に対しても周囲に対しても、冷静かつ客観的な分析をもってしてから、それでも賃金に不平等性を抱くならば職場の上司などに、その分析結果をもって直談判してみてはいかがだろう?


ここまで読んでいただき、感謝。
途中で読むのをやめた方へも、感謝。

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