介護の専門家だって、分からないことは行政へ相談しよう!
人間関係において「会話」は重要である。
・・・と、このくらいは誰でも分かりきった話であり、だからこそ人間関係で悩んでいる人のために「伝え方が何割」とか「雑談の仕方」といったビジネス書やセミナーはたくさんある。インターネットで会話やコミュニケーションに関するワードを検索すると多くの悩みに共感するだろうし、それら悩みに対して的確な回答も得られるだろう。
偉そうに言っているが、私も会話やコミュニケーションは得意ではない。文章では多弁だが、テーマがないと雑談に困窮する。介護事業所の管理者という立場として、幅広い年齢層や様々な家庭の悩みを抱える介護職員と何気ない会話や面談をすると、自分の人生経験の乏しさを痛感する。そのため、私もまた会話やコミュニケーションに係る本を参考にしたり、インターネット上の有識者のありがたい助言に胸を打つこともある。
そして、このようなコミュニケーションの考え方でよく見かけるのは「会話を交わした回数が多いほど、信頼関係が構築される」というものだ。これは心理学や脳神経などでも裏付けされているし、そうでなくても関わる回数と人間関係は密接であると誰もが感覚的に分かるはずだ。
初めてこの考え方を聞いて、納得するとともに私の中に思い浮かんだことがある。それは「介護事業所も、もっと行政や市町村と関わる回数を増やしたほうが良いのでは?」ということである。
これは介護業界の全体の話でもなければ、地域連携といった話ではない。あくまで1つ1つの介護事業所の話である。
具体的には、法令について不明点があれば、介護保険課といった行政や市町村等へどんどん問い合わせをすることだ。それにより、法令遵守に即した運営につなげ、引いては長期的な事業継続とすることができる。
ご存知の方も多いと思うが、行政や市町村等は何も一般市民のためだけにあるわけではなく、各業種や社会インフラなどの分野に応じて部署が分かれており、それぞれ関係する業界や企業などもアクセスすることができる。
行政だからといって何でも市民や企業などの要請に応えなければいけないわけではないが、下手にたらい回しにしようものなら現代ではインターネット経由でお叱りを受けてしまいかねない。その予防策かは分からないが、最近では受付システムを設置したり案内人を配置したり、懇切丁寧に応対してくれる職員や担当者も多く、いたれりつくせりと思ってしまう。
少し脱線したが、なぜこのような話をするのかと言うと、介護業界の人たちはどうも行政へ相談するのが不得意なように見えるからだ。不得意というか、何とかして行政との関りを避けようとしているとも言える。
特に管理職や計画作成の立場にある者は、運営整備や介護支援計画のために法令や解釈を的確に把握しておく必要がある。しかし、当然ながら全ての法令を熟知して、全ての整備や計画を法に抵触しない解釈ができるかというとそんなことは決してない。
このブログで実地指導やら法令遵守やらを偉そうに書いている私だって、頻繁に「これって法的に問題ないのかな?」「この要件はどこに書いてたっけ?」と指定基準をパラパラめくっては「うーん、わからない」となる。このような状況はどの介護事業所も同じだろう。
私は調べても分からないことや自分の解釈に自信や確証がもてないときは、すぐに介護保険課などの管轄部署に問い合わせをする。なぜならば、そのほうが確実だし解決も早いからだ。
そこまで頻繁ではないものの、先方からしたら「またか・・・」と思われているかもしれない。しかし、こちらも幾度も質問や相談をすることで、簡潔かつ意図を明確にした問い合わせができるようになってきたし、完全な解決策に至らなくても不明点に対して一定の方向性を得ることはできる。
また、行政に問い合わせをしたという事実は運営体制の整備において根拠として大きなバックボーンになる。また、その内容を事業所内で記録として残しておくことで類似のケースで迷ったときの参考にもなる。場合によっては実地指導で指摘されたときに「この件は介護保険課に問い合わせしたところ・・・」と返答もできる。嫌な言い方だが、根回し的にも有効である。
一方、行政に聞いたほうが早いのに、いつまで経ってもインターネットで調べたり、事業所内で「これってこういう意味だと思う?」「それでいいんじゃない?」「でも、確証がもてなくて・・・」という議論を繰り返している人たちが多い。
特に同一法人の管理者がそのような状態であると、私は「介護保険課とかに電話してみたら? そっちのほうが早いよ」と伝えるが、メール問い合わせすらしないことも多い。
上記のように行政は全体的に言いやすい環境になっているし、電話が苦手でも問い合わせする手段はたくさんある。活用しない手はないと思うのだ。
しかし、何度もお伝えしてのように行政を避けようとする傾向にある。
事業所の運営であっても計画作成であっても、不確実性のあるままでは将来的に支障をきたすことが分かっているのに、役職者としての立場にありながら電話一本もしないのだろうか?
このように書くと責めているように思われるが、行政に電話をするのは抵抗があることも理解している。
その理由はいくつか考えられるが、例えば「このようなことを質問して、馬鹿にされないか?」とか「先方も忙しいのに、お手を煩わせていいのか?」といった新人職員のような遠慮的な思考になってしまうため、いつまで経っても質問や相談というアクションができなくなるのだ。
・・・しかし、同じ職場ならば上司や先輩が新人職員を気遣って声をかけてくれるかもしれないが、行政はそのようなことを知る由もない。まさに「聞いてこなければ、分からないよ」と言われてもぐうの音も出ない。
また、「教えを請うこと」「教えてもらうことが苦手」ということもあるのではないか?
というのも、行政に問い合わせをするのは一般の介護職員ではなく、管理者といった一定の立場にある者である。ある程度の役職に就いている人の中には、自分から教えることは活き活きするが、「人の話を聞く」「教えてもらう」といったことをしないことがある。要は「他人に頼れない」のだ。
特に現場から叩き上げで管理者になった人はプライドが高く、職場内の問題や整備はすべて自分が把握して、自分一人で何とかしようとする人も少なくない。そのため、たとえ相手が制度の窓口だとしても、教えてもらうということが自分のプライドに障ることを気にするのかもしれない。
最後の理由としては、下手に聞いたら実地指導となったり、罰則があるという思い込みである。
これはかつて私もそう思い込んでいたが、幾度も相談や質問を行っているうちに、そんなことにはならないと分かった。というか、行政サイドだって質問や相談をするごとに「ここは分かっていない、実地指導だ!」「それはNGだろう、罰則だ!!」なんて反応していたら、今ごろ介護事業所はどこもなくなっているだろう。
全くないとは言えないだろうが、質問してきたらマイナスポイントを食らうなんて考えを行政がしているならば、そもそも学校教育を任せておけないだろう。もう少し行政を信用しても良いのではないか?
最後に。
介護事業所にはたくさんの知識を有した職員は多くいるが、高齢者介護であっても認知症ケアであっても、介助技術であっても完全に全てを網羅している人なんていない。そこを得意なスキルで補助し合うのが組織であり、そして社会という人間関係及び集団の成り立ちだ。
ちゃんと介護保険課といった専門の管轄があるということは、何か困ったことがあったときのアクセスしてほしいということ。それを「言いにくい」「悪いことになったらどうしよう」というのは逆に失礼というものだ。
信頼関係まで構築しなくていいので、調べても分からない不明点やどう解釈していいのか分からないことがあれば、せめてメールフォームから問い合わせをしてみることをお勧めする。
ここまで読んでいただき、感謝。
途中で読むのをやめた方も、感謝。
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