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欠勤者が出て人員不足になったときこそ、何とか乗り切れるため業務改善という名の「実験」をする
介護スタッフの急な欠勤
介護施設は24時間稼働している。その中で大体はシフト制によって人員配置を組んで1日1日を橋渡ししていると思う。
しかし、豪雪の影響で業務時間に間に合わなかったり、体調不良や家庭の事情などで急にスタッフが休みになるということは珍しくない。
そのようなとき休みのスタッフに声をかける(出勤してもらう)ということもするだろうが、私が現場勤務のときはできる限りそれは避けている。また、現場勤務外のときは当日の業務をリスケして代理で現場入りする。
それは事業者として、シフトで休みとした日はちゃんとスタッフに休んでほしいということがある。何だか自己犠牲のように思われるだろうが、このような点に配慮をしないとスタッフが不満を抱いて辞めてしまいかねない。
しかし、その配慮の結果として当日の介助スタッフが2人の予定だったのが私1人になることも当然ある。正直言ってキツイ。
突然の人員不足は「今まで通り」を見直すチャンス
――― 但し、それは「今まで通りの業務」をその通りにする場合に限る。
今までどおりの流れのまま2人で行っている介助を、1人で全てやろうとすると当然キツイ。それを半分以下にまで減らせないかと考えるわけだ。
具体的には、平時において10人のオムツ交換を9時間の間に30回遂行しているところを、10回にまで減らすことはできないかという発想である。
これならば何とかできそうである。
このような話をシフト通りの人数が揃っている日常ですると、大抵のスタッフから「できるわけがない」と言われてしまう。
しかし、このような人数が突発的に不足するような、ある意味での緊急事態においては「何とか乗り切らなければ」が優先で反論する人は少ない。せいぜい、その日の介助員以外から「え、それでいいんですか?」と言われるくらいだ。
何が「いいのですか?」と言えば、「”今まで通りのやり方じゃなくて” いいんですか?」という意味である。それは結果や目的が欠如している思考である。このような思考だから「できるわけながい」と反論が出るのだろう。
また、反論が出にくい理由としては、何とか業務量を減らしたとは言え、実際にそれら業務を実行するのは私自身ということもある。成功しようが失敗しようが楽になろうが苦労しようが、直接それをやらない人たちにはあまり関係ない。
つまり、私にとって欠勤者が出たときは、人員不足につきその日の勤務は正直キツくなるけれど、「今まで通り」を見直すための機会でもあるのだ。
平時において業務改善を提案しても「理屈ではそうだけれど・・・」と、今まで通りに固執するスタッフに向けて、私自身が実践・実験することで実績を得ることができる。
オムツ交換の回数を減らすための「実験」
さて、「どうすればオムツ交換の回数を減らせるか?」ということで言えば、1つの具体策として尿取りパッドを平時より大きいサイズ(吸収量が大きい)にするだけでいい。
これは平時において尿量を一定期間測定してから行うことが望ましいが、大まかに「このくらいの尿取りのサイズならば間に合うだろう」という目途はつける。そうでなければ、普段使うサイズの倍を用意すれば確実だ。これによって、少なくとも排尿(失禁)に関してはオムツ交換の回数を減らせる。
何だか当たり前のような話をしているようだが、ベテランの介護スタッフであっても「オムツ交換の回数は多い方がいい」「放っておくと利用者さんが不快な思いをするし、不衛生で尿路感染のリスクもある」「この方は尿量がかなり多いので溢れてしまう」といった意見が出る。
しかし、これは誤解である。誤解というかオムツに関する情報が古い。
各オムツメーカーが出している現代の排泄商品は、夜間も含めてなるべくオムツ交換の回数を減らせるような構造になっている。失禁してもすぐ吸収素材のおかげで肌触りがサラサラになるし、雑菌も増殖しにくい。これらは製品紹介でもちゃんと説明されている。
「今まで通りのやり方」を続けたい心理も分からないまでもないが、せっかっく介護者や要介護対象者を楽にするためのオムツや尿取りパッドを有効活用しないのはもったいない。
実験の結果および今後
――― で、結果どうなったか?
結果としてオムツ交換などの排泄介助も含めて、私1人でも何とかなった。もちろん、時間は何だかんだでオーバーしたし、その日介助担当でなかったスタッフのフォローもあったので全てを1人でできたわけではない。
それでも、「今まで通りのやり方」を見直して業務量を減らすことで乗り越えることはできた。特に尿取りパッドを大きめにすることによって、それまで日中帯に1人あたり3~4回の排泄介助をしていたことを、1人あたり1~2回まで減らすことができた。
便失禁をしていた方もいたが、誰かは排便するのは当然であると考えていたので特に問題ではない。それよりも大きめの尿取りパッドだと、まだまだ余裕をもって排尿を吸収できることが分かった。
もちろん、尿取りパッドはかなり重かったが、介助量を減らすという観点から言えば、あと1回くらい排泄介助を減らしても良かったくらいである。
本記事では、尿取りパッドの選定を大きめのサイズに変えるという方法をご紹介したが、介助手順や居室への誘導などの工夫したことはたくさんある。
このような成果は介助を行うスタッフにも報告し、次は平時においても試してみるつもりだ。このような1つ1つの改善が全体の余裕につながる。
それが働きやすい職場となったり、休みもとれやすくなれば良いと思っている。急に休んでも「ちょっとキツイけど、何とかなるなる」と思えるようになればいい。
もちろん、前向きに考えているようで急な欠勤は私だってキツイ。先日も早朝から「すいません、朝から体調が悪いので休ませてください・・・」という電話を受けたばかりだ。
それでも何とかやるしかない。せっかくだから、いつもと同じことができないならば、いっそ「今日は私一人しかいないから、やり方を変えて乗り切ろってみよと思う」と周囲に伝えて業務改善の実績を蓄えている次第だ。
ここまで読んでいただき、感謝。
途中で読むのをやめた方へも、感謝。