食材廃棄を容認してまで、高齢者の食事のわがままに対応するべきか?
高齢者施設では、一般的に朝・昼・夕の食事が提供される。
おやつが提供される施設もあるだろう。
高齢者なので飲み込みにも配慮する。一口大や細かくきざんで提供したり、トロミ剤などを用いて提供することもある。アレルギーなどの禁食の提供は控えるし、栄養制限のある方は量やカロリー、塩分にも気を付ける。
このくらいは、おそらくどこの施設もやっていることだと思う。
逆に言えば、現在の介護施設の食事提供に関する配慮というのは、これが最低限のレベルということでもある。これ以上の食事提供における対応は、個人の嗜好などに対する配慮である。
大袈裟に言うならば「高齢者の食事のわがままに、どこまで付き合うか?」という話である。
施設によっては、アレルギーや食事制限などの肉体に支障をきたす場合を除いて、その人がその食べ物を嫌いだからという理由だけで代替品を提供することもあるかもしれない。
利用者が手を付けない食品を食べてもらおうと一生懸命に声掛けしたり、健康のために本人が嫌いと言う食材を別な食品に混ぜるといった努力をすることもあるだろう。
それは顧客満足度という観点からすれば大切なことかもしれない。実際、当方が運営している施設においても、一部の調理担当者がこの手の意見を言うこともある。
――― しかし、個人的にはそこまでする必要はないと思っている。
介護施設を運営している立場でそんなことを言うのは問題かもしれないが、高齢者という年長者が特定の食品を口にしないからと言って、大袈裟に対策を立てるのは何か違うと思う。正直、残したければ残せばいいと思う。
あるいは、将来的に食べ物が枯渇するであろうシミュレーションもあることから、確実に手を付けない食品は、最初から提供しなくても良いと思う。
体に良いかもしれないが、何とか食べるよう一生懸命に声掛けしたり、調理を工夫するなんて努力も不要である。相手は子供ではない、高齢者なのだ。好きにさせておけば良いじゃないか。
そもそも、自然災害や地球環境の変動などによって食材の収穫量が落ちているという報道があっても、施設にいる方には関係ないかのように平気で残す高齢者も珍しくない。
当然ながら、残った食品は廃棄となる。手つかずでも廃棄する。
お客さんが残した食品はスタッフが美味しくいただきました、という時代もあったが現代は衛生通念上できない。というか、手つかずだからと言って残った食品を食べるスタッフはいないだろう。
食べ物だって限りある資源だ。幸いにも戦時中のような飢餓の時代を生きてこなかったいないものの、食べ物を廃棄するたびに、その光景を見るたびに「残すと分かっているなら提供しないほうがマシだ」と思ってしまう。
代替品を出すことなんて甘やかす必要もないだろう。
サービス業としては利用者、人生の先輩たる高齢者という方々を相手であっても、食べ物を捨てるということが当たり前になっているのはモヤモヤする。時には「この方は戦時中、戦後という厳しい時代を生きたのではないか?」と思うこともある。
・・・まぁ、こんなことを言っても仕方ないと思う。
しかし、現実問題として食材が枯渇する未来はやってくるのは確かだ。
食材をかけて国同士で争いが起こる可能性だってある。
そんなときになって「アレ、残さず食っておけば良かった・・・」なんて後悔しても遅い。多少の好き嫌いは誰でもあるだろうが、アレルギーや食事制限を除いて、なるべくでいいから貴重な食材に感謝の念を込めて口にする世界になれば良いと思う。
これは正義感の押し付けかもしれないが、そうなるよう祈る。
ここまで読んでいただき、感謝。
途中で読むのをやめた方へも、感謝。
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