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ChatGPT と作った中1 英語問題、使ってみました
元旦に、ChatGPTに中学1年生用の英語問題を作ってもらったことを投稿しました。今日は、実際に使ってみた結果をご報告したいと思います。
実は、ほとんど使えませんでした。というのも、使い出してすぐ、うまく行かないと気づき、引っ込めたからです。
ChatGPTが至らなかったのではなく、私が加えた修正がまずかったのでもなく、私の見通しが甘かったせいでした。
生徒さんと親御さん、それから、もともとの依頼主である私の会社の先輩の了解をいただいた上で、ことの次第を以下に綴ります。
1.見通しの甘さ(その1:下調べ不足)
年が明け、明日から学校が始まろうという日、私は、ChatGPTと一緒に作った英語問題をもってヒロシ君(仮名)宅に乗り込みました。
ご両親を交えて年始っぽい儀式をしたあと、ヒロシ君と二人で彼の勉強部屋に移動しました。ヒロシ君の勉強机の傍らに真新しいイスが、それもひじ掛けつきの立派なのが、置いてあります。私のために新しく買ってくれたのかもしれないと思うと、なんだかドキドキしてきます。
席につき、ひとつ大きく息をついてから、
「ヒロシ君がどんなところで困っているか確かめたいので、ちょっと問題をやってもらうね」
と、用意してきた問題を差し出す私。緊張した面持ちで、それを受け取るヒロシ君。
ヒロシ君が【問題1】全体に目を走らせます。つづいて、【問題1】(1)をじっと見る。そして、彼の手が…...完全に止まって、全く動きません。
(1)から(2)に目を移してじっと見つめるけれど、手は動かず。(3)、(4)、(5)まで目を移したところで、ヒロシ君は、居心地わるそうにモゾモゾし始めました。そして、小さな声で言いました。
【問題1 】 次の単語を正しい順序に並べて、意味のとおった英文をつくりましょう。
(1) ( book / her / interesting / is )
(2) (book / this / interesting / is)
(3) (book /this /interesting /is / an)
(4) ( a / small / he / dog / cute / has )
(5) ( dog / small /and /his /cute /is )
(6) ( this / small / cute / his / dog /is)
(7) ( their / new / car / is )
(8) ( beautiful / house / his / is )
「これって、どんな文になるの?」
「どんなって...…そこにある単語をつなげて出来る英語の文」
「え、でも、意味わからないし」
「意味? そこにある単語をつなぐと意味になるよ」
「それって、日本語で書いてないの? ふつう、問題って、日本語で意味が書いてあるよ」
「え?」
そこで、ヒロシ君が学校でもらっている英語問題集を貸してもらい、めくってみると、並べ替える英単語の前に、どんな意味の英文にするかが日本語で書いてあるではないですか。たとえば、1(1)だったら
次の日本文に合う英文になるように、( )内の語を並べかえなさい。
彼女の本はおもしろいです。( book / her / interesting / is )
という形で出題されているのです。それを調べておかなかった私が、うかつでした。
2.見通しの甘さ(その2:常識の押し付け)
下調べ不足に加えて、もうひとつ、私は阿呆なことをしていました。
仕事と留学で英語を使ってきた私にとっては、ともかくスピードが重要でした。ですから、英語は英語のまま聞き・読み・書く習慣がついています。
私にネイティブ並みの力があるというわけではありません。「当たらずとも遠からず」で良いと割り切って、スピードを優先してきたのです。
そういう私ですから、日本語のガイドがないと英文を作れないという状態を、想像もしていませんでした。
しかし、考えてみれば、中1の頃は、私も、日本語の文を英語に移し直す形で英文を作っていたのです。
私は、現在の自分の常識を、英語を学び始めたばかりの中学1年生にあてはめるーーいえ、押し付けるーーという、教える者にとって最も初歩的な過ちを犯していたのです。
3.見通しの甘さ(その3:学校進度の把握不足)
これは1の下調べ不足に含めても良い内容ですが、時間の流れで3番目に気づいた甘さなので、(その3)として記します。
【問題1】でつまずいたので、私は、ヒロシ君に【問題1】を飛ばして【問題2】に進んでもらいました。こちらは2択問題だから、日本語で意味を書いてなくても、なんとかなるだろうと思ったのです。
【問題2 】 それぞれの文の下線部に、( )の中の2語から正しい方を選んで入れて、を完成させましょう。
(1) This is _ (a / an) orange bag.
(2) I saw _ (a / an) old man in the park.
(3) He found (an / a) interesting story.
すると、ヒロシ君が尋ねてきます。
「sawって、どういう意味ですか?」
私は、思わずほくそ笑みました。
―ー出た! 中学生定番の不規則動詞の過去形わすれ!
私は答えます。
「なんかの過去形だよ。不規則動詞なの。忘れちゃった?」
「過去形って、まだ習ってません」
「え!ええええ!」
そうだったんです。ヒロシ君の中学では、過去形は3学期からの学習単元だったのです。私は、ヒロシ君が学校でどこまで履修しているかを調べずに、英語指導を引き受けていたのです。
過去形は【問題2】だけでなく、【問題3】にも使われています。つまり、【問題3】も使えないということです。
【問題3】 以下の日本語を、( )内の単語を使って英語に直してみましょう。
(1) 私は彼女のかわいい猫を見ました。 (her, cute, cat)
(2) あなたの大きなカバンはどこにありますか? (your, big, bag, where)
(3) これは古い青い車です。 (an, old, blue, car)
(4) 私たちの新しい学校はきれいです。 (our, new, school, beautiful)
(5) 彼の小さな部屋は静かです。 (his, small, room, quiet)
ここで、私は、ヒロシ君に渡した問題を回収しました。
「オジサンは、大人用の問題をもってきちゃって、いや、申し訳ない」
と頭をかいたわけですが、どこが「大人用の問題だよ!」って話です。
4.学校が用意した副教材は、よくできていた
結局、その日は、ヒロシ君が学校から渡された副教材--教科書準拠の問題集と先生の手作り教材--で、勉強しました。
ここでも、私の非常識があらわになったことがあります。それは、学校が用意した副教材は、よくできていたということです。
「日本人の英語力はOECD諸国の中で見劣りがする。そして、その原因の大きな部分は、日本の学校教育にある」
こういう言説に触れることが多かったので、私は、ヒロシ君が英語で困っていると聞いた時に、「どうせ、学校の先生が大した教え方をしていないのだろう」と思いました。それも、私が、ヒロシ君の学校での授業や学校から渡された教材について調べなかった理由の一つです。
ところが、私が見る限り、学校が用意した副教材は、基礎固めには絶好のものでした。教科書準拠の問題集は文法の基礎と語彙を過不足なく抑えています。先生の手作り教材も、生徒の痒いところに手が届くように作られていて、先生の熱意と創意工夫を感じました。
先生がこれだけ手厚く備えているのに、なぜ英語の学力がつかない(と言われている)のだろう?
という新たな疑問が湧いてきました。
5.今後、ご報告できたら良いと思うこと
ヒロシ君の英語を指導していく中で、中学生一般に当てはまりそうなつまずきの石や、それを避ける工夫を見つけることができたら、ご報告したいと思っています。
ヒロシ君、ヒロシ君のご両親、そして、私にヒロシ君の指導を依頼してきた先輩も、ヒロシ君の体験が他の中学生の役に立つかもしれないからという理由で、こうして note で公開することを許してくださいました。
不定期の投稿になると思いますが、また、お付き合いいただけると、幸いです。
では、今回はここまでとします。
ここまでお付き合いいただき、本当にありがとうございました。