不祥事の裏にある"生臭い”人間的事情
昨日企業の不祥事に関して投稿しました。それをお読みくださった方が、ご自身の投稿のなかで不祥事の裏にある”生臭い”人間的事情を鋭く突いていらっしゃるのを見つけました。私見も交えながらその記事を紹介させていただきます。
画像提供:K_Kameno https://note.com/k_kameno
中山 てつや さん https://note.com/nakat_1956 が投稿なさった次の記事です。
この投稿の中では【中山さん記事】と表記します。
私の記事はこちらです。この投稿では【楠瀬記事】と表記します。
1.組織人の哀しい性(さが)
中山さんは、上司の指示がコンプライアンス面で問題があると認識していても、妥協して従ってしまう部下の心理は「組織人として生きていくための性(さが)」だとおっしゃっています。
私も、まったく同感です。私自身、大企業の社員だった時代、つねに、次の3つの「圧」を感じていました。
私は、このような「圧」を感じてしまう組織人の心理を《組織人の哀しい性(さが)》と呼びたいと思います。
企業不祥事の背景には、この《組織人の哀しい性(さが)》があると私も考えます。
2.《深い契りの上司・部下》
中山さんは、さらに踏み込んで、一度不正に手を染めてしまった上司は「相性の良い部下」を「安心できる部下」として重用し、部下もそれに応えて忠誠を尽くすと指摘していらっしゃいます。
これを、私は、絶対にお互いを裏切ることがない(と期待されている)⦅深い契りの上司・部下》関係が生まれるのだと理解しました。
私自身は、幸いにして、不正行為に巻き込まれずに会社員生活を終えることができました。
しかし、私は、会社員生活のなかで、不正行為ではない、まっとうな業務でも⦅深い契りの上司・部下》の組合せを多く見てきました。
そして、組織の中で大きな仕事を成し遂げるためには、自分の上司または自分の部下と《深い契りの上司・部下》関係を結ぶことが、必須とまでは言わないが、とても大きくモノを言うことを痛感しました。
企業活動の基本はチームワークです。どれほど優秀な個人であっても、一人でできることはチッポケなものです。自分の思いを通そうと思ったら、それを理解し賛同してついて来てくれる部下が必要ですし、自分の考えを理解し、サポートしてくれる上司も必要なのです。
3.《一族郎党》の誕生
私の周りで《深い契りの上司・部下》関係を結ぶのが上手な人たちは、関係部署の人たちとも強い絆を結ぶことが出来ていました。直接の上下関係にはありませんから、人間関係と業務上のギブ・アンド・テイクの両方を駆使して強い絆を培っていくわけです。
「メンバーシップ型雇用」で成り立っている日本企業では、社員一人ひとりの職務範囲が必ずしも明確ではなく、個々の社員が遂行する仕事の質と量は、その社員が周囲と結んでいる絆の強さによって決まると言っても過言ではありません。
大きな仕事・優れた仕事を推進している《深い絆の上司・部下》は、関係部署も取り込んで、左右に(場合によっては斜めにまで)強い絆の網の目を広げ、さらに大きな仕事・優れた仕事をこなすようになっていくのです。
こうして、濃密な人間関係を基盤に利害を共有する《一族郎党》のようなグループが生まれることになります。このグループは共通目的の実現を強力に推進することができます。
4.《深い契りの上司・部下》と《一族郎党》の逆回転
《深い契りの上司・部下》と《一族郎党》は、企業内で相互に密接に連携したシステムを形成しています。このシステムが順回転しているとき、つまり、正しい目的に向かって適切な仕方で動いている場合には、企業を前進させる原動力になります。
しかし、このシステムがひとたび逆回転し出すと、誰もそれを止めることができず、企業を奈落の底に引きずりこんでしまいます。当事者たちが目的を見誤まること・行動の選択を誤ることが逆回転を起こす原因です。
上司と《深い契り》を結んでいる部下は、上司の指示が間違っていると思っても、心情的にNOとは言えない。拒まないことで、さらに上司に引き立ててもらえるという計算が働くこともあるでしょう。
《一族郎党》に属する部署同士では、お互いの不手際をカバーし合うものです。それが最も重要なギブ・アンド・テイクだからです。
したがって、《一族郎党》内のどこかの部署が不正に手を染めたとしても、他部署が断固としてそれを止めようと言う動きにはなりません。黙認するか、最悪の場合は手を貸すのです。
優れた製品やサービスを提供し社会からも強い信頼を得ていた企業が驚くような不祥事を起こすのは、順回転してその企業の発展に貢献してきた《深い契りの上司・部下》と《一族郎党》のシステムが逆回転してしまったことによるのだと、私は考えています。
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。
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