読書と先生と私
先生は、私にたくさんの事を教えてくれた。読書をすることの楽しさも、先生から学んだことのひとつだ。
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今日は、本と先生と自分との思い出を綴る。
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小学校
小学校4年生の担任のM先生は、いつも穏やかで優しいベテランの女の先生だった。私が嫌がらせを受け、先生に相談したら、嫌がらせをしてきた子をきっぱりと叱ってくれて、「もう大丈夫、何かあったら相談してね。」と言ってくれた。小学生ながら、その言葉に嘘はないと思った。
そんな先生が勧めてくれたのが、『大きな森の小さな家』(ローラ・インガルス・ワイルダー』だ。舞台は約100年の北米、主人公のローラ、父、母、姉、妹で力を合わせながら生活していく。むかしを生きた人々の、「生きる力」の強さで溢れた1冊である。
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森に吹く爽やかな風、ほかほかできたての美味しそうな異国料理たち、自分とは違った生活様式…今まで知らなかったことが私の頭の中を駆け巡った。凄い、すごい!もっといろんなことが知りたい!いろんな旅をしたい!このワクワクをすぐ先生に伝えに行った。先生は頷きながら私の話を聞いてくれて、共感してくれたのをよく覚えている。
誰かと同じものを共有し合える幸せを学んだ。
中学校
中学校2年生の担任のE先生は、新任の男の先生で、先生が初めて持ったクラスが、私が所属していたクラスだった。とにかく熱くて面白い、親近感のある先生だった。国語が専門で、重松清の『タオル』を、目を潤ませながら、心を込めて授業をしてくれたのが印象的だった。
E先生が教えてくれたのは、『向日葵の咲かない夏』(道尾秀介)だ。主人公は、夏休み直前の終業式の日に同級生の自殺の発見者となる。しかし、すぐにその同級生は姿を変えて目の前に現れる。妹とともに、同級生が自殺に至るまでの事件を追うというミステリーだ。
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この作品は後味の悪い「イヤミス」としても名高い。内容も全体的に重く暗く、そして展開も衝撃的であったために、読む上でかなり体力を消耗したことを覚えている。また、ミステリーの幅の広さを知った作品でもある。そして、なによりも、あんなに明るい先生がこんなに暗い内容の本を読むのかと大変驚いた。
この先生は、クラスメイト全員と交換日記をしていた。だからこそ、私が書いた好きなもの(ミステリーやホラー)から私の趣向をくみ取ってこの本を進めてくれたのだと思う。交換日記ではこの本を含めて、色々なことの感想を交換し合った。
好きなことを言葉で伝え合う楽しさを学んだ。
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高校生
高校1~3年生、3年間私の担任をしてくれたH先生は、明るく朗らかで、何よりも生徒を優先に考えてくれる女の先生だった。色んな相談に乗ってくれて、たくさんの知識を与えてくれて、先生なしでは高校生活を終えることはできなかったと思う。
国語が比較的得意だったわたしに、先生は『万葉の人びと』(犬養孝)を買ってきてくれた。ネットで中古で、1円で販売されていたらしい。そんなことあるんだ。
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『万葉集』で詠まれた歌の地を著者自らの足で渡り歩き、情景や人の心情をふまえつつ、それぞれの歌について一言一句丁寧に考察する1冊である。私が好きな歌、「あかねさす…」に関する考察が興味深かった。
H先生自身も専門科目であった英語だけでなく、さまざまなことに興味を持って追究していく姿勢を持っていた。本当にカッコいい先生だった。
1つのテーマに対して深く掘り下げることの楽しさを学んだ。
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本そのものの内容もちろん面白いから、それに対する感想も余すことなく述べ続けたい。しかし今回挙げた本の名前を見たり、手に取ったりすると、あの頃の"先生"との思い出が鮮明によみがえるのだ。本は自分の人生を豊かにするだけでなくて、人とのつながりをつくってくれる手段でもある。読書と先生との思い出は、切っても切り離せない。
これが私の「読書感想文」である。
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