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歯と歯医者について知っておくべき5つのこと
『デンタルクエスト』というマンガはご存知ですか?
歯科医療、それも歯科衛生士にスポットをあてたマンガで、お仕事の内容や歯に関する知識が学べるとっても素敵なお話です。
このマンガについて話をしているときに「今描かれている話よりももっと描くべきことがあるのでは?」という指摘がありました。
どうせなら振り切って非保険治療の解説とか、銀歯と金歯とセラミックの違いとかやればいいのに、身近ではない話で基本的な話してるからなあ https://t.co/H1791Jnuud
— 暇な空白/Kiyoteru Mizuhara (@hima_kuuhaku) November 22, 2020
というか歯のことで患者が今本当に知らされて興味を持つことが見えてなくて、口内炎と梅毒は似てますとか言われてもフーンで終わりなんだよね。縁がないし。
— 暇な空白/Kiyoteru Mizuhara (@hima_kuuhaku) November 22, 2020
銀歯は二次カリエスになりますって話サラッと流してたけど、それこそ何故なのか深堀するべきだし https://t.co/FhL9Wk4VsS
銀歯保険適用の理由と、金歯セラミックの効用、金歯は成金のイメージだけど実際金は味がしないから、とかいくらでもここで興味引けるし、自分の歯で噛めなくなったらQOLが激変する話にもつなげやすい。あとは矯正かな、アメリカでは性癖になってるとか話もりあげやすいし。この2つはやるべき https://t.co/pCyRNns7pj
— 暇な空白/Kiyoteru Mizuhara (@hima_kuuhaku) November 22, 2020
それは確かにその通りだなと。
で、そうこう考えているうちに
「歯医者について一般人が知っておくべき本当に大切なことってなんだろう」
という疑問がわいてきたので、お口の健康に与える影響が大きい順にまとめてみました。
第5位:自由診療へ抵抗感をなくし正しい選び方を知ること
自由診療(じゆうしんりょう)とは、公的医療保険(健康保険、国民健康保険、後期高齢者医療制度)が適用されない診療のこと。保険診療と対になる診療である。診療を受ける者と、診療を行う医療機関との間で自由に個別の契約を行い、その契約に基づいて行われる診療である。
『自由診療 - Wikipedia』より引用
いわゆる保険が効かない高いヤツ。
冒頭でまさに暇な空白さんがおっしゃっていた「非保険治療の解説」ですね。
保険適用外の治療、自由診療と聞くと「えーメチャクチャ高いやつでしょ。ボッタくられそうだし‥‥。」と抵抗感がある方も多いと思います。
実際お値段は安くなくて、例えば詰め物で考えると保険の銀歯が3,000円くらいで済むところが、ゴールドやセラミックにすると4~8万円くらいします。
でも見た目がずっと良いだけでなく、虫歯が再発する可能性が大きく下げられるのが大きい。
もし虫歯を繰り返し、抜歯することになり、入れ歯を使うことになってしまったら‥‥。
固いものは食べられなくなってしまうし、入れ歯のせいでうまくしゃべれないこともある。口の中に入れ歯を入れるのはどうしても違和感があって気持ち悪いという人もいるし、毎日入れ歯を消毒したりみがいたりするのも大変です。
抜歯したあとは、インプラントといって口の骨の中に人口の歯を直接埋め込む方法もあり、これは入れ歯に比べてずっと快適に使えますが、だいたい1本45万円くらいかかります。
それなら数万円の詰め物できちんと再発防止した方がずっとお安い。
年をとって自分でしっかりケアできなくなった結果、インプラントがダメになってしまうケースも多いです。
でももうそんな年齢だと入れ歯に切り替えようにも口の方が変化に耐えられず、使えないこともしばしば。
残りの人生、歯がないまま。食べられないまま耐えるしかありません。
だからもしお金で健康が買えるなら、本当にお金をかけた方が良いです。絶対です。
まず大事なのは自由診療への抵抗感をなくし、歯科医師からきちんと保険診療・自由診療両方の内容説明を受けること。
説明を受けたあとでやっぱりそれだけのお金は出せないなと思えば保険にすればいいし、それだけの価値があるなと思ったら自由診療にすればいいんです。
いまどき一度説明を聞いたからって押し売りするような歯医者はほとんどいないので安心して聞いてもらって大丈夫です。押し売りしてきたらヤブ医者だと断定できるのでむしろラッキー。すぐ逃げましょう。
理想的には銀歯とゴールドとセラミックの違いなんかはある程度理解しているのが一番ではありますが、これに限らず自由診療は色々ありますし、患者さんの事情によってどれを優先すべきかというのは変わるので、いざとなってからしっかり話を聞くだけでも問題ないと思います。
ちなみにざっくりですが、
銀歯:保険適用。安いのが長所だが、虫歯が再発しやすく見た目も良くない。金属アレルギーのリスクがある。
セラミック:最も天然の歯に近い見た目が再現できる。銀歯よりはずっと虫歯の再発が起きにくい。銀歯やゴールドに比べ強度が低いため削る量が多くなるのが欠点(もともと虫歯が大きければ問題ないが、そうでない場合は要注意)。
ゴールド:虫歯の再発防止最強。かみあう相手の歯にも優しい。天然歯の摩耗にあわせて変形してくれるので長期的なかみ合わせも良好。銀歯と比較すると天然の歯に色が近いため目立ちにくい。金属アレルギーにはなりにくい。
みたいなイメージですね。
ちなみに私も家族も自分の詰め物にはゴールドしか入れません。
さすがに前歯4本のどれかが虫歯になってしまったら、見た目の問題でセラミックも考えるかもしれないけど‥‥、そうでもなければ虫歯の再発防止の方が大事なので絶対ゴールドですね。
第4位:虫歯になりにくい飲食の方法
虫歯の再発防止という意味では5位と同じ。
こちらは飲食の話です。
なぜこちらの方が順位が上なのかというと、虫歯が再発するかどうかの要因を考えたとき、こちらの方が影響が大きい&大切だからですね。
より良い方法で虫歯を治すのは大事なこと。
今後再発するリスクを減らせるから。
でもどんなに良い材料でどんなに腕の良い歯医者が治しても、所詮人工物を口の中に入れてるので、天然の歯よりは虫歯になりやすいんです。
虫歯になった人というのは「同じ習慣を続けている限りまた虫歯になる人」といえます。だって虫歯になるだけのリスクを抱えているからこそ虫歯になったんだから。
このままだとまた虫歯を繰り返してしまうんですね。(もちろん明日またすぐ虫歯になるわけではなく、何年もかけてですが)
なので、まずは「虫歯にならない人」(虫歯になりにくい習慣で生活している人)になることが大切。
そのために一番クリティカルなのが飲食の方法なんです。
さてどんな飲食の方法が良いのか。
一言でいうと
糖を含む飲食の回数をできるだけ減らすこと
です。
最悪なのが、一日中ポカリとかコーラとか砂糖が入ってるものをちびちび飲んでるパターン。
あるいはスナック菓子か何かを一日中ちょびっとずつつまんじゃってるようなパターンですね。
こういう人はもう間違いなく虫歯だらけです。
え? ここ何年も虫歯になってない?
そんなわけありません。歯医者に行ってみてください。きっと虫歯が見つかりますよ。
おどしはさておき。
目安として糖を含む飲食は一日4回までがセーフとされています。
一日食事を3回取るとすると、このときに糖を取ってしまうはずなので、それ以外の飲食は1回までということになります。
おやつはもちろん、ジュースとか砂糖入りのコーヒーとか何か一回でも飲んだら、もう4回です。
逆に言うと回数が増えなければいいので、スイーツを食べたいときは食後すぐに食べればOKです。これならカウントは3回のまま。
ちなみに私は水分補給には麦茶か爽健美茶しか飲まないですし、食事以外でスイーツを食べた日は絶対ほかに間食を取らないです。
虫歯のリスクについては歯みがきをいつ何回するか、きちんとフッ素入り歯みがき粉(できれば最高濃度1450ppmのやつ)を使っているかという点も大きな要素ですが、まあ皆さん歯みがきはきちんとやるべきってことはさすがに理解してますもんね?
こういった飲食や歯みがきの習慣は、それなりの歯医者(上位5%~10%くらい?)だときちんとヒアリングして「あなたのリスクはこれくらいですね。こういうところを改善するともっとリスクを下げられますよ」って教えてくれるはずなので、そういう歯医者を見つけるのが望ましいです。
だって良い治療をするかどうか以上に虫歯の再発防止には大事なことだし、これをやってくれない歯医者は患者さんの健康に対する責任感や知識が乏しいということ。
つまり治療自体のレベルも低い可能性が高いってことですからね。
国語と英語のテストの点数が0点なのに、数学だけ100点取れるやつなんてそうそういる? っていう話です。
第3位:フロス等の必要性と正しい使い方
フロスって分かりますか?
歯と歯の間をみがくための糸です。
本当に糸だけの状態で売られているものもあれば
こんなふうに持ち手がついてる、使いやすいものもあります。
あるいは、同じく歯と歯の間をみがくためのものとして、歯間ブラシもあります。
で、どうしてこれが大事なのかというと、これを使うことが特に歯周病予防にはメチャクチャ大事だからです。
5位と4位は虫歯予防の話だったけど、3位は歯周病予防の話ってことですね。
4位と3位はどっちの方が大切か微妙なところなんですが、歯周病の方が歯を失う原因になっているというデータがあり、よくそう言われるので、
僅差でこちらを3位にしました。
フロスってあんまりなじみがない方も多いと思うんですが、これ本当に本当に大事です。
だって歯と歯の間って歯ブラシじゃみがくの無理じゃないですか。ってことは、これ使わなかったらキレイにできないですよね?
アメリカなんかでは本当にみんな使うのが普通で
「Floss or Die(フロス使わないと死ぬよ)」
って言われるくらいです。
ただ、フロスって使い方がそう簡単じゃないので、今まで使ったことない人だと、歯医者でしっかり歯科衛生士さんに習わないと難しいかなと思います。
持ち手付きのフロスなら比較的使いやすいんですが、それでも正しい使い方ができない人は少なくないですし、実は糸だけの形状のものの方が清掃効果は高いとされる(色々な角度から柔軟に掃除できるので)ので、そちらの使い方をしっかり身につけるのが理想ですしね。
ちなみに歯間ブラシは使い方そのものはそんなに難しくないんですが、たくさんのサイズがあり、小さすぎるサイズを選んでしまうと全然キレイにならないし、逆に大きすぎるサイズを選んでしまうと傷つけて歯ぐきを下げちゃったりすることもあります。
しかも歯によって適切なサイズが違う。
なので、絶対に歯医者でプロにサイズを選んでもらってくださいね。
そもそもフロスと歯間ブラシのどちらが自分に適しているかもプロに口の中を見てもらわないと分からないので。
歯周病予防には歯ブラシの方も正しく使うことがとても大事ですが、「フロスや歯間ブラシを使うかどうか」と比べると効果が小さいし、いずれにしても歯医者さんで正しいやり方を教わる必要がある、という点は変わらないです。
ちなみに歯ブラシを正しく完璧に使えている人は臨床の経験からいうとだいたい0.3%以下くらいですね。
まず歯医者さんに行って、正しくできているか診てもらいましょう。
第2位:定期メンテナンスの重要性
いわゆる検診とかクリーニングとか言われる、定期的に通うヤツです。
頻度としては3~6ヶ月くらいに1回で通う人が多いはず。リスクが高めだと判断されているか、あくどい歯医者だと、1~2ヶ月に1回で指定されている方もいるかもしれません。
「検診」や「クリーニング」という言い方だと、このとき歯医者でやることの一部の内容しか表現できないので、力を入れている医院だと「メンテナンス」と言われることが多いと思います。
これなんですが、本当に行く必要あるの? って思いますよね。
日本では定期的に歯医者に通ってる人は5%くらいしかいないと言われます。
みんな定期メンテナンスは重要じゃないと思ってる。
でも定期メンテナンスに通うと歯を失う確率が下がる、ということについてはしっかりとエビデンスがあります。エビデンスレベルもほぼ最高。1)
10年間メンテナンスをし続けた人としなかった人で、歯を失った率が全然違ったというデータも。2)
し続けた人:3.6±1.8%
しなかった人:14.1±3.5%
メンテナンスしなかったら、歯を失う確率が4倍近く上がっちゃってる。
歯を失っちゃったら大変だよー、という話は
「第5位:自由診療へ抵抗感をなくし正しい選び方を知ること」
にも書きましたが、実は寿命に与える影響についてもデータがあるので、ここで触れておきますね。
歯を多く失うことで死亡率は1.1~2.7倍に増加すると分かっています。これもエビデンスレベルほぼ最高。1)
下限の1.1倍と上限の2.7倍の間をとったら1.9倍ですよ。
分かりますか?
歯をたくさん失っている人は、そうでない人の2倍近く死にやすいってことです。
信じられなくないですか?
でも多くのデータがそう示してるんです。
定期メンテナンスに通わないと歯を失う確率が爆上がりする。
その結果たくさん歯を失うと死亡率が爆上がりする。
少しでも健康に長く生きたければ本当に絶対に定期メンテナンスに通った方がいいです。
第1位:良い歯医者(の見つけ方)
さて最後。第1位は「良い歯医者(の見つけ方)」です!
具体的な見つけ方については↓の記事にまとめました。
だってね、そもそも良い歯医者にめぐりあえれば、今回説明した第2位~第5位が全部解決するんですよ。
良い歯医者はすべてを解決する。
第5位:自由診療へ抵抗感をなくし正しい選び方を知ること
→本人がどうしても話を聞こうとしないとどうしようもないけど、そうでなければ話を聞ける。というか、良い歯医者でないと間違った説明を受けてしまう可能性がある。ネットの情報は言うに及ばず。
第4位:虫歯になりにくい飲食の方法
→もちろん教えてくれるし、飲食以外の要素も含めて全体をきちんとヒアリングした上でまとめてくれる。取り組みやすいところから取り組めるよう誘導してくれる。
第3位:フロス等の必要性と正しい使い方
→これももちろん教えてくれる。加えて「フロスと歯間ブラシどちらを使うべきなのか」「歯間ブラシの正しいサイズはどれか」も教えてくれる。というかこれを教わらないとダメ。
第2位:定期メンテナンスの重要性
→これも。きちんとメンテナンスの意味を説明してくれ誘導してくれるし、適切な頻度を設定して、質の高いメンテナンスを行ってくれる。
さらにさらに、良い歯医者は患者さん自身の知識ではどうにもならないこと、例えば治療自体の質も高い。
「第5位:自由診療へ抵抗感をなくし正しい選び方を知ること」で説明した通り、自由診療は治療の質を大きく上げてくれます。
でもね、例えばウチで診ていても、他院でやった自由診療の1~2割くらいはウチの保険診療より質が低い=予後が悪いですよ。
同じ医院であれば保険診療より自由診療の方が質は高いです。それは間違いない。かなり大きな差が出ます。
でも 悪い医院 vs 良い医院 の差は、 保険診療 vs 自由診療 の差を乗り越えてしまう。それくらい大きい。
だからあなたにとって一番大切な情報は、どんなことよりも
「どこが良い歯医者なのか」
あるいは
「どうやったら良い歯医者を見つけられるのか」
です。
良い歯医者を見つける具体的な方法について気になる方は↓を読んでみてください。
まとめ
歯と歯医者について知っておくべきことベスト5は
第5位:自由診療へ抵抗感をなくし正しい選び方を知ること
→自由診療を選ぶことで虫歯が再発する確率を下げよう。虫歯を繰り返して歯を失うことになったら本当に大変だから。
第4位:虫歯になりにくい飲食の方法
→糖を含む飲食の回数をできるだけ減らすことが大事。
第3位:フロス等の必要性と正しい使い方
→特に歯周病予防に有効。「フロスと歯間ブラシどちらを使うべきなのか」「フロスはどう使うのか」「歯間ブラシの正しいサイズはどれか」歯医者さんで歯科衛生士さんに教えてもらおう。
第2位:定期メンテナンスの重要性
→メンテナンスに通わないと歯がなくなる。歯がなくなると早く死ぬ。
第1位:良い歯医者(の見つけ方)
→良い歯医者はすべてを解決する。本人の知識ではどうにもならない、治療そのものの質も上げてくれるので超大事。
以上です。
なお「デンタルクエストに描くべき話ベスト5」ではありません。
あくまで「お口の健康に与える影響が大きい、患者さんが知っておくべきことベスト5」です。
おてうは引き続きデンタルクエストを応援しています。
注
1) 『健康長寿社会に寄与する歯科医療・口腔保健のエビデンス 2015』日本歯科医師会
2) Bostanci HS, Arpak MN. Long-term evaluation of surgical periodontal treatment with and without maintenance care. The Journal of Nihon University School of Dentistry 1991; 33: 152-159