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SNSを主戦場として言葉を繰り出すうちに、他者の視線に合わせるように自分の思考そのものが実に平均的で奥行きの欠けたつまらないものに変化していく

【スマホ断食 / 藤原智美】

◼︎ スマホは意識を様々な世界へ引き込み、次々に新しい場所へと誘導する、立ち止まって考える暇もなくあっという間に時間が過ぎていく

◼︎ 本当に必要なのは大量の情報入手することではなく、それを咀嚼して自分の思いや考えに役立てること

◼︎ 人は情報にアクセスしてその上っ面を通り過ぎただけなのにそれに満足してしまいがち、多くの情報に接するとそれだけで賢くなった気になるがそれは大いなる幻想

◼︎ 人には個と集団という2つのフィールドが存在し、読書では個の想像や思考を発展させることができるが、ネットの場合は何より他者とのつながりが必要になる

◼︎ ネット繋がっている時間では常に誰か、どこかへの意識を捨てることが出来ず、その誰かどこかは常に応えを求めてくる

◼︎ 人間の細胞はひと月もすると入れ替わる

◼︎ 大人も子どももスマホの利用時間が増加しており、量の増大は人間関係の質の変化を生み出す

◼︎ アメリカロサンゼルスにあるレストランでは ”人々の結びつきを取り戻してほしい” と、スマホを店に預けて食事をすれば5%の割引、オランダにあるビールメーカーの直営のバーでは、目の前の相手とのリアルコミュニケーションの為にスマホを預けるとビール1杯をタダにというサービスを始めた

◼︎ スティーブ・ジョブズは10代の我が子にiPadを使う時間を厳しく制限、またMicrosoftの創始者のビルゲイツは子供が14歳になるまでスマホを持たせなかった (彼らは子供にとってスマホやタブレットの害をよく理解していたからである)

◼︎ 本来人間は歩いている時、周囲の状況に目を配り頭の中では様々な思いや考えをめぐらす、歩きながら手元の何かに視線を奪われ続けるということはなかったが、スマホが普及してそれが当たり前になってしまった

◼︎ 英国ではパブリックフットパスと呼ばれる歩くための道、いわゆる散歩専用の小道があり、郊外では何10キロにもわたって整備されている

◼︎ 人は外部からの情報や刺激が減るほど、様々な考えが浮かぶ (だからただただ座って頭を空っぽにすること、”座禅” が修行になる)

◼︎ 孤独の時間が人生を豊かにする

◼︎ 人の輪の中で承認されることを常に求め続けるスマホ社会が自立的な思考を避けて孤独を恐れる人間を今大量に生み出そうとしている

◼︎ いつでも誰とでも繋がることができるという便利さが、自分の想像力や思考力を奪い去るという落とし穴に気が付いている人が少ない

◼︎ 手にはスマホがありそれは ”魔法の道具” で考える前に直ちに答えを手に入れて満足してしまう

◼︎ ミニマリストとはモノに占有された暮らしからの離脱者でありスマホ信奉する情報主義者でもある

◼︎ ネット社会において人の存在が ”データ化” しつつある、血の通った目の前の人間は意識から消され、画面上のデータ処理に意識が集中する

◼︎ 情報のデータ化とネット化が、本来は他人には漏れないはずの個人のプライバシーを露出させており、更にこれからは個人の内面に属するような情報すら流出してしまうということも起こりうる

◼︎ あなたのデータを日々どこかに蓄積されてAIによって解析されている、それは日本国内とは限らない

◼︎ 最近ではDNA情報ばかりか、個人の声や仕草の特徴までデータ化して他者と区別する技術も進んでいる、指紋や手の平、顔の認証システムなどは国家管理に利用するところもある

◼︎ スマホを利用するようになって、人々の移動と滞留を日時で記録できるようになった為、そのデータを集めて商業活動や行政に活用するばかりか個人の仕事や趣味嗜好、対人関係というプライバシーまで推測できるようになる

◼︎ 静寂の中の孤独は想像や思考を生み出す手がかりを与えてくれるが、現代人はそれをすっかり忘れてしまっている

◼︎ 紙の本が思考を鍛える

◼︎ デジタル化した言葉にばかり取り巻かれていると、言葉や知性の態度が尊大に傲慢になっていく

◼︎ 教養や知性とは、人間と世界を理解しようとする態度そのもののことだが、それを支えるのはデジタル化された言葉ではなく紙に記された言葉である

◼︎ 教養は廃れて今は反知性主義が横行している、教養や知性に代わって主役を務めるのが情報となり、その情報社会を駆動しているのがデジタル化した言葉である

◼︎ 神奈川県にあるある病院ではネット外来というものを設けていて、依存症になった若者を受け入れている (最近ではリタイヤした高齢者のネット依存症も少しずつ増えてきている)

◼︎ スマホ的思考とは、プロセスを無視して結論だけ見ようとする拙速(せっそく)が特徴、順序立てて物事を考え結論を引き出すということがない

◼︎ 若い人がスマホに書く言葉は概して会話的で、機関銃の段丸のように速射される、吟味された言葉は少ない (それが書きやすさの秘密であるが、それは言葉が思考を伴わない反射神経の産物)

◼︎ 動画や画像は前後の文脈を切り取られ編集され断片化される、私たちが受け取るのは事実のほんの一部に過ぎず、それが刺激をしようとするのは人の思考や知性ではなく受け手の感情である

◼︎ あなたがスマホを見ているのではなく、スマホがあなたがを覗いている

◼︎ YouTubeやInstagramなどのSNSで人気を博している発信者はできるだけ自分をオープンに見せようとする、それがファンを獲得する最善のやり方だからである

◼︎ 日常的にネット上でいろいろな情報を発信しているがそれらは全て他者に知られても心配ないもの、しかしバラバラに点在するその情報が誰かによって収集されたい体系的に統合されたとき、そこから思わぬ秘密が露呈されることがある

◼︎ MOOC (マッシブ•オープン•オンライン•コース): ネットを利用した大規模な無料講義で、主に米国の大学で運営が進んでいる、ネットで講座を受講したり試験も受けられ、人気の教授の講義を世界中で何万人も受講するという現象もある

◼︎ 無駄な思い、余計な言葉こそ思考となり発展し深化することもあるが、同調性や感性が求められるスマホ的世界では無意味である

◼︎ これまでの社会は自立した個人の成長や成熟を”読むこと”、”書くこと”、”生の対話” によって実現しようとしてきたが現代のスマホ中心の情報社会は個人の自立的な思考よりも、集団への参加とつながりを第一義的に考えており、人々の内面を知らないうちに変化させている

◼︎ リアルな人付き合いが想定されないネット上のデジタルの接続は単に情報の共有やデジタルな自己表現の場でしかない

◼︎ 言葉というものは思考そのもの

◼︎ 言葉を使って考える、判断するのが人間だとすれば、スピードが最優先されるネットでは熟考する、内省する、深く考えるという言葉による人間的な営為がないがしろにされている

◼︎ 現在のネットユーザの共通感覚は発信した情報が拡散されて、多くの人に閲覧されたり利用されることを願うというものである為、ネットで見られる情報を無断で使用するというのは当然の権利だと思われている (逆に著作権を振りかざし自分の著作を保護しようとする姿勢は、自由平等がルールのネット世界のモラルに反するという意見さえある)

◼︎ ネットに流れているのは、著作ではなく全て無料の情報である

◼︎ ネット社会には、知識や情報は個人で独占されるものではなく、公開され共有されるべきだという考え方がある

◼︎ ネット上に存在する情報の多くには実名がない、一体どこの誰の発言なのか、誰が作った画像や映像なのか、実態がよくわからないのが現実

◼︎ 匿名性が主流のSNSの中でFacebookは原則的に実名で書き込みを行うことを利用規約に盛り込み拡大し、誰もが安心して情報を共有することをモットーにしていたが現実は違う (2017年のFacebookの匿名率は20%を超えている)

◼︎ 文章に限らず著作権は、書き手、発信者が特定されることで成立する

◼︎ 著作権 : 知的財産権であり作品を独占的に使用できる権利のこと

◼︎ ネットリンチは実名を隠して行われる、匿名だからこそ起こるもの、匿名性の罠である

◼︎ Amazonはショッピングの好み、Googleはウェブサイト閲覧の癖を調べ、Twitterは我々の心の動きを手中に収め、Facebookは交友関係まで抑えている

◼︎ Facebookの交友関係とは、ソーシャルグラフと言われる公開交友録のことで、世界の人口の10%が網羅されている、今ではこれらの情報とSNSのメッセージなどから第三者が個人を特定して住所を割り出す事も不可能ではなりつつある

◼︎ 会員カードやポイントカード、スマホは1台に様々な機能を詰め込んでおり、利用者から見ると便利で得をするという感覚だが、その裏で個人の様々なデータがまとめられつつある

◼︎ 情報はコピーが簡単のため、それが一度外に出ると全て回収したり消去したりすることは不可能

◼︎ ポイントカード等のカード類を使うということは、自分のデータを出しているということでもあることを忘れてはいけない

◼︎ 銀行やカード会社には収入と支出が、ネットで本を買えばその時々の関心事か思想傾向まで推測され、ドラッグストアで薬を買えばあなたの病歴がデータ化される

◼︎ 米国にあるディスカウントストアは、購入履歴、データの分析から妊娠した客の消費パターンを導き出しており、これによって顧客の出産日まで予測できるようになり、特定された妊婦向けに様々な商品の売り込みをしている

◼︎ 自らの名前を明かさずに、たった10秒足らずで行える誹謗中傷はSNSが生んだ負の側面

◼︎ 公に発する言葉は原則的に実名であるべきであり、言葉への責任を負うべき

◼︎ 風前の灯(ふうぜんのともしび) : 危険が迫っていて今にも滅びそうな様子や、人命にかかわるような危険な状態をたとえる

◼︎ 荒唐無稽(こうとうむけい) : 言うことに根拠がなく、現実性に乏しい、でたらめであること

◼︎ たとえ他人のメッセージであっても、それに共感しリツイートした途端、自分の言葉となってしまう、この錯覚が常態化されたものがネットである

◼︎ 肝心なのは事実、現実はネットより強い

◼︎ ネットの世界には現実と仮想が渾然(こんぜん)と入り乱れている、嘘と真実が同居していて、それを見分けるのは極めて困難

◼︎ スマホだけが情報源になると、自分が好きなタイミングで興味のある話だけを限定して受け取る、あらかじめ限られた狭い範囲でしか情報を得ようとしないそこに意見の偏りやフェイクが生まれる

◼︎ 新聞やテレビ、書籍といった幅広く物事を伝える情報媒体が衰えると社会は至るところで摩擦よくぶつかり合いを起こす

◼︎ フィルターバブル : ネットにおいてユーザが個人的に好む情報や広告だけを選別して届ける機能、スマホやパソコンで検索をかけたり閲覧を続けるとユーザの指向性をネットを把握して、情報にフィルタをかけ、あらかじめ選別されたものだけを送ってくる

◼︎ フィルターバブルにより、ユーザの興味の範囲は、広がることなくどんどん狭くなり、広大なネット情報のごく一部だけをピンポイントで受け取っている

◼︎ 人間は誰しも聞きたい話だけ受け入れて、不快で興味のない話には、耳を塞ぐという性質がある(こういう心理を「確証バイアス」という)

◼︎ ネットは確証バイアスがもっとも働きやすいメディアである

◼︎ 私たちは高速で行き交うネット情報を自分自身の思考を通さず、瞬間的に受け入れ反応してしまう傾向がある

◼︎ 情報を受け入れるかそれとも拒否するかは、第一印象からくる瞬間的な信じたいか、信じたくないかという感覚的な判断

◼︎ 日本のハロウィンは伝統的な祭りと違って、地域のつながりとは無縁な新しいタイプの祭り(スマホ社会が生んだもの)

◼︎ 地縁、血縁が生きていた時代には地域に密着した盆踊りなども祭りが各地で催されていた

◼︎ 日本のハロウィンの奇抜な仮装は、強烈な自己主張とも捉えられる

◼︎ 都市型の祭りは、人々の縁が薄れていった地域でその空白を埋めるように発展していった

◼︎ 現代の祭り(渋谷ハロウィンなど)における仮装は、それを楽しむためにあるというより、自分、自己の固有名詞を隠し、普段できない感情爆発の時間を手に入れると同時に、群れとの一体感を得るためにあるともいえる

◼︎ ハロウィンのコスプレというペルソナ(仮面)の向こうには、案外醒めた気分と祭りの空気に身構えた孤独な個人が隠れているのかもしれない

◼︎ 2,000人近くのアメリカ人を調査したところ、SNSを熱心に利用している人たちの方が孤独を感じていることがわかった (孤独感が強い人ほどSNSに逃げる)

◼︎ 世界で1番歩行者の多い渋谷スクランブル交差点では、1回の青信号で約3,000人が渡る (1日では平日に40万人、休日は60万人ともなる)

◼︎ モデレーター : 職種、動画サイトを運営する会社で投稿される動画を閲覧して、児童ポルノや残虐シーンが含まれる作品を削除する仕事、不快なシーンを見続けることにより鬱病になる人も多い

◼︎ SNSに流すメッセージの大半は、他者からの注目を集めることが目的であり、内容はどこにもないような新鮮なものでなければならない、それには表現を過激にすることが1番手っ取り早い(これが表現のエスカレーションになる)

◼︎ SNSを主戦場として言葉を繰り出すうちに、他者の視線に合わせるように自分の思考そのものが実に平均的で奥行きの欠けたつまらないものに変化していく

◼︎ 「いいね」を沢山とるには、誰にも分かりやすい平均的な価値観や感覚から外れないメッセージでなければならない、ユニークで独創的なあるいは批判的な主張などは敬遠される

◼︎ アドトラ(アドバーティスメント•トラック/広告トラック)はネット関連の会社や商品の広告だと秋葉原を中心に、風俗の募集広告だと新宿歌舞伎町近辺というように、ルートが細かく設定されている

︎◼︎ アドトラの出没率は東京が最も高い、普通の車と違って渋滞こそ本領発揮の機会 (人通りの多い場所での滞留時間が長いというのはそれだけ広告展示に有利ということ)、また、クラクションはよほどの危険がない限り鳴らさない (広告のイメージダウンになるから)

◼︎ テレビ局は街頭に複数のカメラを設置していて、ニュース番組天気予報の前後に街の様子を数秒だけ流すということを繰り返しているが、その映像にアドトラに展示されている広告が移り込むようにすると、宣伝効果が一気に上がる

◼︎ TLDR (Too Long Didn’t Read): アメリカでネットの文章に対して使われる4文字、長すぎて読めなかったという意味、SNSでは短文が基本になっており、1,2行で済ませるのがセオリー

◼︎ 短文化は文章、簡素にそして定型に収めようとする、それを補うように記号やマークが対応され画像が重宝される、ライブ感とスピード感も重要である為、言葉は練られることもなく貧困な表現の反復になる

◼︎ 画面に情報を表示しただけでそれを理解した気になっていないか

◼︎ 「調べる言葉の前後に並ぶ言葉も注意がいって、それらもついでに調べる」という副次的な効果が辞書引き学習にはある

◼︎ 脳科学の分野でも、指を使って書く行為は脳幹の一部を活性化させると言われている

◼︎ コピペなどの便利な機能が、人間の言語能力を貧困化させる

◼︎ かつては目的の言葉や文章を探すのに、辞書や本に目を通しながら時間をかけて調べていた、このときテーマに合わない別の言葉に出合ったり、特に必要のない文章をついでに読んだりということがあった、これは一見無駄に思えるがこの行為も実は読者の中に蓄積されて残っていく、人間の頭はいつか役立つかもしれないという言葉や知識があってこそ意味がある

◼︎ 手書きが脳を活性化させる

◼︎ 米国ではネット上にある個人情報の統合を行うアルゴリズム(物事を効率的に行う手順)の開発が進んでいて、近々個人情報が丸裸にされ、それを基に個人が常に他者から評価されつづける社会がくると警告している

◼︎ ネット上で個人情報が統合されると自分が既に忘れているような言動や属性が、自分以上に他者に把握されるということが起こる



【2024年10月   1/3冊目】

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