2023年12月に読んだ本
もはやここまで溜めてしまうともう訳が分からん。
1 永井みみ『ジョニ黒』★★★★☆
井戸川射子と同種の筆力を感じる。ストーリーというストーリーはない小説を書けるのは羨ましい。次作も楽しみ。
2 岩浪れんじ『コーポ・ア・コーポ⑥』★★★★★
6巻で完結らしい。最後のページにさらっと書いてあるこの漫画のモデルにもなっているという著者の話がえげつない。映画化までしてよかったね。面白い漫画でした。
3 小池正博編『はじめまして現代川柳』★★★★☆
短歌の「私」に疲れた。詩の充満する「意味」に疲れた。そんなときは川柳だ。川柳は私からも意味からも自由である。5・7・5という非常に少ない音数の軛が、逆に最も自由に接近するという面白さ。
4 『一冊で丸ごとわかるギリシア神話』★★★☆☆
今まで全く興味がなかったのだが、YouTube「ゲームさんぽ」で神話に興味が湧いてきたのでいろいろ読んでみることに。ギリシャ神話、面白いね。この本は一冊で基本知識をさらっと網羅してくれる感じ。
5 藤村シシン『古代ギリシャのリアル』★★★★☆
YouTube「ゲームさんぽ」でしゃべっているのが面白すぎたので買ってみた。本も面白いけど、この人はしゃべりの方が面白い。本当に楽しそうに、オタク丸出しで怒濤にしゃべりまくる。オウィディウスを古代の壁サーと呼ぶなど、古代ギリシャを現代日本で例えるワードチョイスが非常にキャッチー。
6 大白小蟹『うみべのストーブ 大白小蟹短編集』★★★☆☆
強がりのなかに隠した弱さをそっと指先にひっつけて掬いとるような物語。現代的なほっこり漫画の短編集。
7 川野芽生『Lilith』★★★★☆
高潔。爪の先まで抜かりない美しさ。完璧すぎて近づきがたい生徒会長が吹くフルートの音色みたいな歌集だと思った。
8 稲川方人『聖-歌章』★★☆☆☆
稲川方人の詩集のなかではどちらかと言うと難解な方になるか。少なくともはじめての稲川方人でおすすめできる詩集ではない。
9 高野秀行『イスラム飲酒紀行』★★★★★
何で今まで高野秀行を読んでこなかったんだ。私は人生を損していた。
この本では著者がイスラム圏で酒を求めて奔走するのだが、その滑稽さが面白い。私はこの本でイスタンブールでラクが飲めると知り、探したが街で見つけられず、結局空港の免税店で購入した。
10 メレ山メレ子『メメントモリ・ジャーニー』★★★★☆
自分の棺桶を作るという発想は正直寒いのだが、ガーナで超ド派手な棺桶を作る話は面白く読んだ。思いつきとしては凡庸だったとしても実際にやる人はほぼいないからね。こういう特別でない人の特別な生き方は誰かをエンパワメントできると思う。特別な生き方は、人を特別にするからだ。
11 高野秀行『辺境メシ ヤバそうだから食べてみた』★★★★★
これも面白い。全部食べてみたい。一番強烈なのは中国の人間の胎盤餃子か。一番食べてみたいのはチョウザメ、ピラルクあたりかな。シンプルに美味そう。ワニあたりも気になる。
「ヤム・プラードック・フー」という名の爆発ナマズ料理が大久保の「バーン・タム」で食べられると書いてあったので行ってみたが、「ヤム・プラードック・フー」は食べられなかった。けどめちゃめちゃ美味しいタイ料理の店だった。
12 高野秀行『移民の宴 日本に移り住んだ外国人の不思議な食生活』★★★★☆
鶴見の沖縄系ブラジル人が一番気になった。今度鶴見に行ってみたいと思う。
13 金原ひとみ編『私小説』★★☆☆☆
私小説のアンソロジーである。金原ひとみは流石だった。町屋良平も今まであまりいいと思ったことがなかったけどこれは割と好きだった。尾崎世界観がちょっと信じられないくらいつまらなくて、こんなに退屈でつまらなくて胸糞が悪いものよく書きあげられたなと思った。こんなにつまらないもの久しぶりに読んだ。
14 たかたけし『住みにごり⑤』★★★★★
5巻が一つのピークである。ぞっとする。やばすぎる。面白い。
15 嘉山正太『マジカル・ラテンアメリカツアー 妖精とワニと、移民にギャング』★★★★★
メキシコ人と結婚しメキシコに移住した撮影コーディネーターのエッセイ。ホンジュラスの更生したい元ギャングやアメリカ-メキシコ国境沿いで壁越しに20年ぶりに再会する親子、列車に乗ってメキシコからアメリカを目指す移民に食べ物を投げ渡すパトロナス(守護聖人)と呼ばれる人々など、感動的な話が多く、考えさせられる。なかなか面白い。
16 アネ・カトリーネ・ボーマン『余生と厭世』木村由利子訳★★★★★
ABCでたまたま見つけて買ってみたがとってもよかった。孤独と孤独が指先で触れ合うような物語が私は大好きなのだ。章立てごとにタイトルを付ける小説って日本ではあまり見ないが、このスタイル、イカしていると思うんだよな。
17 高島鈴『布団の中から蜂起せよ』★☆☆☆☆
気になってはいたのだが、買うまでにも時間がかかり、買ってから読み切るまでも時間がかかった。同い年で知り合いの知り合いのようである。
最初に良いところから。タイトル素晴らしい。めっちゃかっこいいと思う。序章もアジテーションとしてよいと思った。中身は正直ここまで評価されている理由は分からなかった。私と考え方はそこまで大きくは食い違ってないのだが、とにかく辛気臭い。ユーモアが足らなすぎる。文章として面白くなさすぎてしんどい。これじゃ精神を病むに決まっている。一番キツかったのがお世話になっているゼミの教授に私は主義としてお酌はしないと言ってお酌しなかったら怒られた話。これもユーモアが足らなすぎると思う。コミュニケーション能力が低すぎるというか。最悪の気分になった。私も基本お酌はしないがこんな最悪な事にはならないんだが。言っていることは間違っていなくともこういう風に場をぶち壊して勝手に病む人嫌なんだ。最後まで読んで、私はアクティビストにはなれないしならないという思いを新たにした。このような態度は日和見主義だと非難されるかもしれないが、私は杓子定規のように自分の主義主張をぶっ通して周りと衝突しまくることで世界が変えられるとは思わない。私たちは主義主張の異なる決して理解することのできない人たちと共存していかなければならないのである。
18 『みちのく いとしい仏たち』★★★★★
東京ステーションギャラリーでやっていた展示の図録。これはここで買わないともう買えないだろうと判断し購入。とてもいい展示だった。
今まで誰にもフューチャーされてこなかったであろう、しかし地元の人の信仰を支えてきた東北の民間仏は、拙くも愛らしい。何度見てもしみじみよい。買っておいてよかった。