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2022年7月に読んだ本
仕事を普通にするとそんなに本って読めない。
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1 川原繁人『フリースタイル言語学』★★★★☆
最近言語学の一般書にハマっている。これで何冊目かな。4冊目くらい? 西荻・今野書店で購入。
さらっと読みやすい。メイドカフェや日本語ラップ、プリキュアなど卑近な話題から言語学に触れられるのでとっつきやすい。
2 山本直樹『ビリーバーズ1・2』★★★★★
映画を観る前に原作を読みたいと思い、ちょっと高かったが吉祥寺のバサラブックスで購入。
私は最近の『分校の人たち』『田舎』『練習』などの子供が主人公のエロより、こういう社会不適合者の大人が性に溺れていくタイプの山本直樹の方が好きだな。映画もとてもよかった。教祖が山本直樹本人で爆笑。ちゃんと胡散臭い。原作者なのにね。
3 田村景子編『文豪たちの住宅事情』★★☆☆☆
京都の恵文社一乗寺店で購入。
建築系の本を読んだことがないので読んでみたいなと思っていたところ、ちょっと主旨違いそうだけど住宅だし面白そうだなと思って買った。が、そんなに面白くなかった。序文で今は文豪ブームであると書かれていて、ああたしかに文豪ブームか、と思ったが、別に私は文豪に興味があるわけじゃないんだよな。文豪の本で言ったら前読んだ岩波明『文豪はみんな、うつ』の方が面白かった。
4 平岡直子『Ladies and』★★★★★
歌人・平岡直子の川柳集。歌集『みじかい髪も長い髪も炎』がとてもよかったので西荻・今野書店で購入。
Ladies and どうして gentleman
タイトルにも取られているこの句。どうしてmanではなくgentleなmanなのかっていう話だとは思うのだが、だったらなぜgentlemenじゃなくて単数のgentlemanなんだろう。わからないんだけどこわい。何かこわい。
あとがきに川柳について「短歌から〈私〉を差し引いて私情だけを残した」もののようだと書かれていて、その表現が私にはとてもしっくりきた。
5 井戸川射子『遠景』★★★☆☆
第一詩集『する、されるユートピア』がすばらしかったので八重洲ブックセンターで購入。
正直第一詩集ほどじゃないと思ってしまった。単に私が子育てや子供を題材にした作品を好きじゃないだけかもしれないが。
帯に抜き出されている以下の一節、この詩は全体を通して好きだった。
口が互いに開き合い
迎えにきてくれる人を望んでいる
聡明な馬、正しい矢のように
生きたい場所がある気がする
6 中尾太一『ルート29、解放』★★★★★
中尾太一の新詩集。新宿・紀伊國屋で購入。
詩を書きたくなる詩はいい詩だと思う。この詩集はそういう詩集だ。この詩集を私たちに届けてくれてありがとうという気持ちになった。
わたしたちは
生きているのか死んでいるのかわからない日々の
なかばそこに滲んでいく夢として
たがいの思想の橋を
たがいの言葉で渡っていった
いまはもう
誰もが誰もの死と幸せを枕辺で考えるようになった時代
わたしも
生まれ持つ貧しさだけが地べたに願う
固有の世紀を
娘の娘
さらにその娘のころにあてがって
いつか
愛しいものとおなじ床に
並んでいられるのかな?
りんちりんと
詩を予告する言葉の鈴が
どこかで鳴っている
わたしはわたしのほんとうの声が聞かれていいものか
迷うから
いつしか両手で描くようになった直覚を
利き手の由来と表現に
交換させて
この扉のかたちをした本の妥協を
そこに鎖されたわたしのこころを
今日
誰かに開いてほしいと思う
7 島田龍編『左川ちか全集』★★★★☆
読んだ方が良いんだろうなと思い購入。新宿・紀伊國屋。まだ派手に積まれていると思う。
早逝の天才と聞くとすぐ「自殺かな」と思ってしまうが、彼女はガンで亡くなった。特に初期の作品を読んでいるとたしかに、もっとこの人の作品を読んでみたかったと思わされる。あと20歳くらいの頃、全身真っ黒の服を着ていたらしく非常に親近感が沸いた。まあ20歳くらいの、よく言えば感受性豊かな女は大体真っ黒なんだけど。
8 大森靖子『超歌手大森靖子の超一方的完全勝利』★★☆☆☆
発売から随分経っているが一応ファンなので購入。新宿・紀伊國屋。
先述の通り、私は子供や子育ての話が好きじゃないし、最近は楽曲はすべて聴いているもののライブには行ってないくらいなので長い間触手が伸びなかった。彼女は相変わらず、変わってないけど、この怒濤の脳内垂れ流しから学ぶこと、というか、なるほどと思うことがなくなってしまった。彼女にとって文章は作品というより逃げ場なんじゃないかな、だから文章を作品として書いている人間の作品にはない甘えのようなものがあるし、それはそれでいいのかもしれないけど、わざわざ本で買って読むものではないかなと私は思った。
9 初谷むい『わたしの嫌いな桃源郷』★★★☆☆
気になって今野書店で購入。
思った以上にかわいらしい感じの歌集だった。最果タヒから毒見を抜いて、ラブリーサマーちゃんを注入した感じ。