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野球に興味がない妻を沼に引きずり込んでみた

私は幼い頃から中日ドラゴンズのファンだ。愛知県出身ということもあるだろうし、巨人ファンだった父親を横目に、なぜか巨人を応援しようと考えたことは一度もない。気がつけば、ドラゴンズへの愛情が自然と芽生えていた。

時が経ち、私は結婚して家庭を持つことになった。しかし、妻は野球にはまったく興味がない。結婚当初、私自身も忙しさから野球を観る機会が減り、試合結果だけをチェックしては、心の中で密かに一喜一憂する日々を送っていた。そんな私が再び野球熱を取り戻したのは、若手選手たちの台頭だった。彼らのプレーに心を動かされ、どうしても現地で試合を観たいという欲求が高まってきたのだ。

ただ、せっかくなら妻にもその楽しさを共有してほしい。そこで、妻を少しずつドラゴンズファンにする計画(というほどのものではないけど、同じものに興味を持ってもらえたらな、と)を練り始めた。

初めての観戦

最初のステップとして、2022年8月7日の昇竜ユニフォーム配布日にチケットを手に入れ、妻を連れてナゴヤドームに行くことにした。昇竜デーのチケットは今でこそ入手困難だが、当時はまだ比較的簡単に手に入れることができた。試合は、若手のエース髙橋宏斗が先発し、岡林勇希の好守や、石垣雅海のホームランといった見どころが多く、私にとっては大満足だった。

だが、妻が楽しんでいるのかどうかは、正直よくわからなかった。ほぼ初めての野球観戦で、ルールも詳しく知らない妻には、試合の面白さが伝わったかどうかは微妙なところだった。

推し選手の誕生

次のステップとして、妻に「推しの選手」を作ってもらおうと考えた。妻が好きになりそうな選手を見つけるために、これまでの彼女の好みを思い出していた。漫画やドラマで好きなキャラクターの傾向から、狙いを定めたのが龍空だった。私自身も彼のファンで、守備の巧さや努力家のエピソードなどをさりげなくアピールした結果、妻はすっかり龍空に夢中になってしまった。

気がつけば、レプリカユニフォームや応援グッズが次々と増え、私たちは2023年シーズンを通して何度も球場に足を運ぶようになった。「推し活」の力を借りて、妻は完全にドラゴンズの世界に引き込まれていた。

新たな推しとキャンプ

そして2023年のオフシーズン、さらなる展開が訪れた。妻が突然、「推しの選手をもう一人増やしたい」と言い出したのだ。驚く私を前に、「誰かわかる?」と挑戦的な質問を投げかけてきた。私はすぐに答えが浮かんだ。「田中幹也だろ?」。まさにその通りだった。彼女の好みをだいたい把握している自負がある私には、簡単なクイズだった。

そんな妻をさらにファンにするために、私は2024年の春季キャンプに連れて行くことを計画した。キャンプ初参加の妻は当初、「そんなにガチじゃないし、別行動で観光がメインかな」と軽く構えていたが、出発が近づくにつれ、選手に差し入れを準備し始めた。龍空と田中幹也へのプレゼントを手に、やる気満々で出発した。

キャンプ初日、妻は龍空からサインをもらうことに成功し、ユニフォームに大事にサインを書いてもらった。翌日には田中幹也にもプレゼントを渡し、さらにサインをもらうことができた。驚くことに、二日連続で龍空にもサインをもらう機会があり、妻はすっかりご満悦だった。

変化する応援スタイル

キャンプの最後、妻が「齋藤って人がサイン書いてるよ」と言ったときには、思わず笑ってしまった。齋藤綱記はドラゴンズに欠かせない中継ぎ投手だが、妻にとってはまだ「齋藤って人」だったのだ。しかし、その後は彼の重要性も理解し、今ではしっかりと応援している。我が家では、彼の名前が出るたびにこのエピソードが話題に上るのだ。

こうして、無事にドラゴンズ沼にハマった妻。今では私がいなくても職場の人たちと現地観戦に出かけるようになり、さらに2軍の試合にも足を運ぶほどの熱心なファンになった。今では野球がない日の夜は暇だと感じるほどに、日常に野球が浸透してきている。

「ドラ女(どらじょ)」として成長を続ける妻を見るたびに、共に過ごす時間がますます楽しみになっている。夫婦で共有できる趣味が増えたことは、私にとって、大きな幸せだ。


こうして、野球に無関心だった妻が、今では立派な中日ドラゴンズのファンとなり、共に応援する日々を楽しんでいる。

唯一の問題は、チケット代が倍必要になることだ。

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