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いつでも シャッターチャンス

もう梅雨入りの便りが聞こえてくる季節になりました。

「鎌倉では、ヤマアジサイが咲き始めたってラジオで言ってたよ。」
「もう紫陽花の季節なんだー。」
「ついこの前、桜が咲いたねーって言ってたのにね。」

季節は、どんどん進みます。

こざる達は、わいわい おしゃべりしながら、
いつものように 夕飯の仕度をしています。

「鎌倉の紫陽花、みんなで一緒に 観に行ったねー。」
「うん。紫陽花が綺麗なところが たくさんあるよね。」

りこちゃんも、こざる達も、鎌倉が大好きで、
以前は、よく出かけていました。

「江ノ電に乗って、海を眺めて、
美味しいものを食べて、鎌倉は とっても楽しいんだ。」

紫陽花の頃にも、何度も行きました。

「桜と違って、紫陽花は咲いている期間が長いから、
行きやすいよね。」
「そうだね。混雑も少しは緩和されるからね。」

桜の時期は、鎌倉に限らず、どこも大混雑ですが、
鎌倉は、地理的に見て、特に混雑しやすい場所です。

「また りこちゃんと一緒に鎌倉に行きたいけれど、
あれだけ混んでいるとね。」
「うん。りこちゃんに負担がかかっちゃいけないよ。」
「りこちゃんは頑張り屋さんだから、嫌だと言わないけれど、
ぼく達の自己満足になっちゃいけないからね。」
こざる達は、うんうん頷きます。

「りこちゃんも、ぼく達も、鎌倉に一緒に何度も行ったから、
たくさん思い出があるから。」
「そうだね。鎌倉だけじゃなくて、
他のところにも、よく一緒に出かけたもんね。」
「りこちゃんも、ぼく達も、
出かけるのを億劫がらずに、ほいほい出かけたから。」
「あの時、一緒に行ってよかったなぁって思うことばかりだよ。」

そうですね。
その時は わからなくても、後で よかった、と思うことが多いです。

「あ!」
こざるちゃんが、何か思い出したようです。
そして、本を持ってきます。
「この本に、大切なことが書いてあったんだ。」
そう言って小川糸さんの『キラキラ共和国』という本をみんなに見せます。

こざるちゃんがページをめくって読みます。

「ふと見ると、バーバラ婦人の家の紫陽花が、もう色づき始めている。
ぼんやりしている暇はないのだ。
まぶたをしっかりと上げて見ていないと、
人生のシャッターチャンスを見逃してしまうかもしれない。」

「ああ、本当にそうだね。」
「だって、もう飛ぶように時が流れていって、
この前、お正月だったと思ったら、桜が咲いて、もう紫陽花なんだよ。」
「特別なイベントじゃなくても、こうして毎日の普通の日常に
たくさん シャッターチャンスがあるんだよ。」
こざる達は、うんうん頷きます。

夕飯の仕度が もうすぐできるようです。

「りこちゃん、呼んでくるねー。」
こざるちゃんが、 りこちゃんの部屋に向かいます。

「りこちゃーん、夕飯できたよー。
今日は、かつおのたたき があるよ! 一緒に食べよう!」

こざるカフェは、今日も ゆっくりゆっくり、
のんびり 穏やかに時間が流れていきます。

読んで下さって、どうもありがとうございます。
今年の梅雨入りは、早いのでしょうか?
よい毎日でありますように (^_^)

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