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【読書感想】美酒復権 一志治夫
読んだ本の感想・気になった単語等のメモ的なものを書きます。
困難な局面からスタートし、
代替わりした経営者の方がどうにかして立て直していくドラマ性もすごい。
ドラマ部分はメモしていないので、
ドラマという点に関して言えばネタバレではありません。
プロローグ
取り上げられている秋田の酒蔵は、
ゆきの美人、白瀑、福禄寿、新政、春霞の五蔵。
1975年を折り返しに日本酒需要は下降線。
2010年にはピーク時の1/3。
秋田県内の1人あたりの日本酒消費量自体は全国2位と多いが、
全体の総消費量は減少している。
秋田県の人口減少率は最大、
ピーク時は135万人いたが、2017年には100万人を切る。
五蔵の五人の跡取りの帰郷年代、
ゆきの美人は1986年、白瀑は2002年、福禄寿は2001年、
新政は2007年、春霞は1995年。
蔵元から、自ら杜氏も兼ねる蔵元杜氏へ。
5人が初めて会したのは2010年春。
NEXT5結成。
『人それぞれ好みがあるんでしょうけど。
白瀑の山本、新政、福禄寿の一白水成は秋田のお酒の中で飛びぬけて好き。
経営的な面も含めてよくぞ持ち直して下さいましたという感』
ゆきの美人 秋田醸造 小林忠彦 秋田市
酒蔵マンション。
13BY(平成13年、Brewing、Year)
ベテランの杜氏は三倍増醸清酒しかつくられなかった。
三倍増醸清酒は、
もろみへの添加物(醸造アルコール、糖類、アルコール、グルタミン酸)
により三倍になるお酒。
酵母:米の澱粉→(麹の酵素により)→糖
酵母が糖を食べてアルコールに変える。
6、7、9号は古典的で丈夫な酵母香りを出す酵母。
酵母は自らアルコールを出すものの15%を超えるアルコールに弱い。
最終的に12号酵母(浦霞酵母)と15号酵母(AK-1酵母)を選択。
麹蓋を使用。
カプロン酸エチル(リンゴやメロンのようなフルーティな香り)
“ちなみに酢酸イソアミルはバナナ系”
今は主に14号酵母(金沢酵母)と15号酵母(秋田酵母)を使用。
たまに新政発祥のきょうかい6号酵母も使用。
ドメーヌ化。地域の材料を使う化。
“速醸酛:酒母をつくるとき液体乳酸を投入。15日程度でできる。
生酛:山卸(=酛すり)作業を行い、乳酸菌が発生しやすい環境をつくる醸造方法。17世紀後半にできあがった作業方法。30日程度でできる。
山卸:乳酸菌の発生を促すため、米や米麹をすりつぶす作業。重労働。
山廃酛:山卸を廃止した醸造方法。水麹を用いる。山卸作業は無いが櫂入れは重労働。”
非ドメーヌ化は理解してもらいづらい、特に海外。
『お酒の香りの芳香臭について、成分で語れるようになったら楽しそう。
レベル1:大将、この酒おいしいね。
レベル2:大将、この酒フルーティーでうまいね。
レベル3:大将、この酒バナナ系でうめーね。
レベル4:大将、この酒 酢酸イソアミル効いててドメーヌ(うめーね)。』
山本 山本合名会社 山本友文 能代市
能代市の天洋商店とタッグ。
水は白瀑神社ブナの原生林からの湧き水を使用。
水は冬場は酒用に、夏場は酒米の水田用に。
使用するのは軟水、ミネラルが無く、発酵に時間がかかる。
時間をとって低温で発酵。
現在使う米は96%秋田県産、
美郷錦、美山錦、酒こまち、吟の精、改良信交。
使う酵母は秋田県産の2酵母、秋田酵母12号、セクシー山本酵母
『秋田駅しか寄る時間が無い場合は
駅構内でも買える貴重なうまい酒、山本(主観)』
一白水成 福禄寿酒造 渡邉康衛 五城目町
初めての純米吟醸酒は袋吊り。
“ 袋吊り(ふくろつり):
搾りの際にもろみを袋に詰めて吊るし、圧力を掛けずに滴る酒を集める。”
フルネット 中野繁が命名。飛露喜や賀茂金秀も名付けた人。
同氏来訪翌日に、一白水成とFAX。
仙台市のカネタケ青木酒店店主が、
一白水成を仙台日本酒サミットに出品し1位を獲得。
中硬水は雑味や苦みが出やすくバランスが取れない。
五城目酒米研究会を立ち上げる。
山田錦の特徴は線状心白、
線の心白に麹菌が入り込みバランスの取れた麹の米ができる。
秋田の美山錦は1.7万円/俵、兵庫吉川の山田錦は2.7万円/俵。
今後の課題といて、農家側として品質へのこだわりや付加価値をつけて価値相応の適正価格で売ること、酒蔵側も適正価格で買うことが必要。
『一白水成ってかっこいい名前。蔵元では無い方が名付けていたとは。
しかし、山本ですら一般的な名字であるにも関わらずかっこいいと思えるし、名前は味に追いつくのだと思います。ラベルがかっこいいだけかもしれないが。そして個人的にはかっこいいラベルの酒はうまい説を支持。
福禄寿酒造は建物的にも歴史があり見ごたえがありそう。』
新政 新政酒造 佐藤祐輔(八代目) 秋田市
使う米:酒こまち、秋の精、美山錦、山田錦、雄町、五百万石
使う酵母:9号、14号、15号、18号
雄町+六号=やまユ
亀の尾+六号+仕込み水の代わりに酒=陽乃鳥
“一号酵母は、兵庫 灘の櫻政宗の蔵から発見
二号は京都 伏見の月桂冠の蔵から、
三号は広島の酔心の蔵から
四号は蔵が不明
五号は賀茂鶴の蔵から
七号は長野の真澄の蔵から
九号は熊本の香露の蔵から
十号は茨城の副将軍の蔵においてだが、酵母は不明
1601号など、01とつくと泡無し酵母”
六号は新政の五代目。
六号酵母の特徴、摂氏10℃以下の超低温でも発酵可、
まろやかで発酵力が強いが酸が弱め。
六号酵母は生酛系酵母の仕込みから生まれた天然の酵母。
六号酵母以降の酵母は全て遺伝的に六号の突然変異。
生酛は桶の中で水と麹と米をすりつぶすため手間がかかり、
温度の管理やすり潰しの工程が難しく、負担がかかる。
半切り呼ばれる浅い桶に入れ、米を糊化、それを酒母タンクに入れる。
山廃は蒸米をいきなりユ酒母タンクに入れ櫂入れをよく行い米を粉砕する。
山卸と山卸廃止酛千葉の五人娘(寺田本家)は全量酵母無添加。
速醸は西洋、生酛は東洋のイメージ。
日本酒の文化的価値の向上、ローカリズムの徹底
『新政の佐藤さんは、おいしい酒ももちろんだが、
日本酒という文化やその文化の広め方すらもつくろうとしています。
百聞は一見に如かず。その通りなんでしょう。』
春霞 栗林酒造店 栗林直章
亀山精司、杜氏、九号酵母。
熊本酵母KA-4
NEXT5
農家さんに、
あなたのつくった米でこのお酒ができました
と言った時のテンションの上がり方はすごかった。
想像をはるかに超えていました。
酒米の自家生産、無農薬。木桶の自家生産。
蓋麹法。
『今までは米を売って終わりだったのが、
その後の物語もあると教えてもらえるなんて最高ですね。
農家のモチベーションを上げ、
品質と収入と収入を比例させることも、
日本酒づくりという括りに求められることの一つですね』
この本を読んだ結果
気になったこと:引き続き他の日本酒本。
今年やってみたいこと:能代の天洋商店に行く、福禄寿酒造に見学に行く。