中学生だし
わたしが中学生に上がる時、家庭環境があまり良くなくて、自分はどうしたらいいのだろう、何かを頑張っていたら認めてもらえることがあるかもしれない、と自分なりに何かを頑張らなければならないような気がしていて、それが何かはわからないまま、とにかく何か良さげなことを始めようと色々自分でやることを考えて、小遣いでラジオの基礎英語のテキストを購入した。
昭和の時代の人なら覚えのありそうな赤いダブルラジカセでFM放送の流行りの音楽をカセットテープに入れたり編集したりしていたのでラジオにはすんなり入っていけた。当時は英語は中学校に上がってからの授業だったので、開いたテキストの何もかもが新鮮で、期待と緊張に包まれながら毎日同じ時間にペンを片手に熱心に聞いていた。
単語、文節、文法、時に英語の音楽の紹介、歌えるようになったら楽しいだろうな、と音楽は一生懸命歌詞を覚えて練習した。
楽しめていたおかげで英語の成績は良く、家庭環境がますます悪くなっていた頃にもう人生に期待出来そうに無いし落ちたら就職しようと割と本気で思って滑り止め無しで受けた高校入試では、英語が学年トップの成績だったのよって後の担任がこっそり教えてくれたことにより自分の中で努力した結果が初めて認められたような気がした。数学はまるでダメだったけどね。今もダメだけどね。
家庭環境は持ち直さなかったので、少し憧れた遠い地域の英文科は諦めて地元に進学して、徐々に英語を頑張ることからは離れていった。
もう学んだことも薄れてしまった現在なのだが、最近ある程度接客のあるお仕事をしているので時折やっぱり少し話せたらなぁと思うことが増えた。もう脳味噌も退化しているし記憶力も低下しているおばちゃんなのであの頃みたいにはいかないとは思うのだけど、一度身につけたものを掘り起こしながらつついてみたくなりかれこれ40年ぶりくらい(え?)にテキストを購入した。
息子が今日から中学生なので、巻き込みつつ久しぶりの感触を確かめようかなぁ、と。自発的に始めたわたしと違い、息子は付き合いつつもそれほど乗り気ではなかったけれど、普段ドライな母が何かを勧めることって滅多に無いからか素直に聴いていた。楽しさは一度では見えなかったようだけど、よかったらまた付き合ってよ、って言ったら頷いてくれた。
毎日小さく何かを続けることって意外と難しいので、まあ続かない可能性もそれなりにあるのだけれど、息子の中学のタイミングで自分がその頃に頑張ったことを思い出してみるのもいいかなぁ、くらいの気持ちで、それでいいかな、って思いながら何か始める春を楽しんでみたいと思う。