君は僕の全てだ
愛らしい君が愛おしい
触れると溶けてしまいそうなほど
君は繊細でか弱くて
僕が守らなくては
君の全てになろう
無垢な君は大きな瞳で
穢れた僕を見つめてくる
心が痛くなったけれど
君は優しく触れてくれた
それだけで強くなれそうな気がした
君は僕のヒーローだった
合わない歩幅に慣れなくて
もたついたこともあったね
心配そうに見つめる瞳には
僕しか映っていない
君の全てが僕になった
知らない人が近づけば
よそよそしく隠れたね
誰かに触れられそうになれば
僕の方を見つめてきたね
君のヒーローは僕になった
恥ずかしがり屋な君は
僕が触れようとするとすぐに逃げる
抱きしめようとすればもがき
キスをしようとすれば暴れる
しつこくしてしまうのは好きの現れと
わかってくれてたらいいのだけど
僕からのアクションを嫌がる君は
うたた寝する僕の上そっと忍び込む
重たくて軽いその愛情に
心のやわいところまで満たされた
永遠に続けばいいと願い続けた
二人でそっと眠りについた
失敗を悔やんで泣いた夜
隣へやってきた君は
あたたかい毛布を貸してくれたね
一緒に寝ようって言ってくれたね
優しさが愛おしくて
君の胸を借りてまた泣いた
嫌な顔せず君は僕のそばにいてくれた
君は僕の全てになった
気付けばお互い歳をとったね
それでも変わらない可愛さが
僕を魅了する
周りをも魅了する
君にとって僕はどうかな?
冴えない大人になってないかな
少しは成長出来ているかな
歩幅はわかるようになったし
お腹の空く時間も
出掛けたい気分も
気まぐれな愛情表現も
全部お見通しになった
それくらい愛してる
君のことを、ずっとずっと
だからいなくならないで
叶わないお願いを神に祈り続けた
無常に蝕む病に
僕に為す術はなかった
僕はどこまでも無力だ
小さくなった背中
そのまま置いてかれそうで
優しく撫でる
細く繊細な手を握り
名前を何度も呼ぶ
僕に出来ることはなんでもした
神様これ以上彼女を苦しめないで
つらさなら僕に
代わりに与えてください
何度泣きながら叫んでも
揺るがない現実
ごめんね、と柔らかな髪の毛を
今一度そっと撫でた
まだしゃんと立てていたあの日から
何回この空に月を見ただろうか
君は日に日に力なく
視界の端で僕を捉えるだけだった
震える声で精一杯
僕の居場所を伝えた
愛していると伝えた
届いただろうか
愛する君に
どんな姿になっても君は愛らしい
大きな瞳と耳とスッとした鼻筋
あのときと変わらない君がいた
気持ちは何も変わってやしない
僕の全ては君なんだ
ずっといつまでも君なんだ
君の呼吸が乱れるたび
僕の心臓がざわついた
大丈夫、と気休めにもならない言葉しか
浮かばない自分に虫唾が走る
そっと優しく触れる
君は安堵したように目を閉じた
君の全てになれているかな
今だけでも眠れますように
ありがとうを言い尽くしても
足りないくらい
僕は数多の愛をもらった
学んで失敗して繰り返して
成長出来たのは君のおかげ
だからどうか君も
だからどうか君も
同じ気持ちでいてほしい
忘れられない君のこと
雑踏の中すれ違う君に似た後ろ姿
思わず目で追うけれど
君は君でどこまでも君だった
歩く歩幅も笑い方も全部違う
君の隣を歩くのは僕だ
誰でもない僕なんだ
いつもと同じペースで進もう
たまには寄り道をして
ソフトクリームを食べよう
お揃いのペンダント揺らして
青い空駆け抜けよう
君は僕の全てだ。